今年の夏、何の用事だったかは
忘れちゃったんですが、市役所に
行ったんですよ。
で、カウンターでべたべた化粧した
きれいな(つもりの)お姉さん
から書類を渡されて、その場で日付
を書かされました。
父ちゃんは、ものすごく日付とか
曜日とかが苦手で、べたべたの
お姉さんも苦手なんですよ。
で、やたら緊張しちゃったんですけど、
しかもその書類は、「令和」っていう字を
自分で書かなきゃ駄目なやつだったんですね。
父ちゃんは、苦手なものいっぱいありますけど
漢字がこの世で一番苦手なんですよ。
「今日は、なんがつなんにちですか?」
って聞いて、「令和三年でしたよね?」
って、確認しながら字を書いてたら、
ちょっと小首をかしげたべたべたが、
自分の手のひらに指でなんか書きながら
「んー、もしかしたらニスイはいらないかもー」
って、不自然に遠慮しながら言うんですけど、
「ニスイ」なんて言葉は聞いたこともないんで
「俺もいらねーや」って思ったんですが、
よく考えたら父ちゃんが書いた
令和の「令」は、冷やし中華の「冷やし」
だったんですよ。
だったら「それ冷やし中華の冷やしですよ」
って教えてくれりゃ「いる」とか「いらねー」
とか思い煩わずに済んだぢゃないですか!
ってなことを大声で叫んだりはしませんよ、
父ちゃんは、クレーマーじゃないですからね。
漢字が書けなくて今日がいつだか知らない
クレーマーではあんまりなので、
父ちゃんは怒鳴りたいのをぐっとこらえて
紳士的にニスイを塗りつぶしました。
それで今年の漢字は、「冷」ですね。
それか「馬鹿市役所」です。