春愁と怒りと希望東北忌
(しゅんしゅうといかりときぼうとうほくき)
東日本大震災から4年。
遅々として進まぬ復旧・復興、
被災地の皆様の思いさぞかしと思い、詠みました。
写真は、クロメヤナギです。
「東北忌」というのは季語でないと思うのですが。
子よ妻よ春風に訊く電話かな
(こよつまよはるかぜにきくでんわかな)
岩手県大槌町に大震災のあと設置された
「風の電話ボックス」を詠みました。
3月1日~10のつぶやき句を34句にまとめました。
春の夕あれは出船か入り船か 遠日野に微か残り陽春の夕
もう会へぬ人の背中や春の夕 春夕や来ない人だと知りてなほ
土の春子らの声なき里となり 黒々と日野山麓や土の春
春土と認知入りたる農婆かな 来し方を思ひ臥せ居る古雛かな
古雛や過去より寄せる童唄 古雛の時代の流れのやつれかな
梅東風やからからからと祈願絵馬 梅東風や恋の成就の祈願絵馬
梅東風や百度参りのをみなの背 梅東風て天神様の多忙かな
潮焼けの浜のをみなや若布干す 若布干す夫の大漁船を待ち
若布干す浜の男に惚れてより 啓蟄や働き虫の老農夫
啓蟄や出過ぎて打たる杭のあり 啓蟄や出ては打たれて強くなり
愛犬と戯る少女青き踏む 園児らの弾む歩調や青き踏む
老木の秘めし力や地虫出づ 白鳥引く身の上つひに語らずに
生きるとは限りなき旅白鳥引く 故郷はこの星とぞや白鳥引く
国境のなき平和かな白鳥引く 信楽の狸と並び苗木売
ハンチング粋に被りて苗木売 信楽の狸と似たり苗木売
春情や滴の歌ふ雨の歌 春情や白磁の白に挿す一枝
春愁や言ひにくきこと言はぬまま 春愁や己が身の上知らぬ野良