グレーテルの森
これは、みなさんが知っている「ヘンゼルとグレーテル」のお話のずっと前のことです。
そう、あのお菓子の家の楽しいお話と、
魔女のおばあさんに食べられそうになるこわいお話のずっと前。
まだ本当のお母さんが元気な頃のことでした。
ある日、グレーテルは森の中に一人で入っていきました。
ヘンゼルはお父さんと町まで買い物に行ってたんですね。
森はおそろしいところだから行っちゃダメだって、お父さんに言われ、
森は小さな子どもを捕まえてしまうのって、お母さんにも言われていたんですけど、
リスを追いかけ、かっこうの鳴き声に誘われて、
少しずつ奥に入って行きました。
森の中にいるといろんな声が聞こえます。
空に突き刺さったような高い枝をそよ風が揺らし、
宝石箱から飛び出したような鳥が木々を渡り、
陽だまりでは虫たちが甘い香りの花と戯れて、
何かをグレーテルに語りかけてきます。
ずっと過去のこと、ずっと未来のこと。
夢で見たこと、これからの夢のこと。
わからないけれど、覚えていたい。
忘れてしまったのに、いつまでも残っている。
体にしみ込んでくる森のにおいにうっとりしていると、
ピシッと木が裂けるような音がして、
びくっとしたら、後ろから誰かに見つめられているような気がしました。
森の奥深くから、グレーテルの中を覗き込むように。
自分には見えないところまで。
あわてて来た道を引き返します。
大急ぎで走って、ころんでしまいそうになって。
森の出口にはお母さんがいて、
ダメじゃないのと言いながら、やさしく抱きしめてくれました。
夢中で走ったので、靴が片方なくなっていました。
お母さんがすっかり暗くなるまで探してくれましたが、
どうしても見つかりませんでした。
ヘンゼルは、ぼくらがもうちょっと大きくなったらいっしょに探しに行こうって、
おやすみなさいの後に言いました。
何げなく読んでたときには気づかなかった~
ずっと過去のこと…のところのフレーズがとてもいいです。
でも、子どもを捨てちゃうとか食べちゃうような母親や魔女も母性的なものの一側面だと思います。今もそういう事件は多いわけですけど、精神的な飢餓が背景にあるなーんて「こころ屋」みたいなことは言いませんw。
ずっと過去のこと……をおほめいただきありがとうございます。ここはアリアみたいな感じです。ほかは詩らしくないですが、散文詩のようなものを前から書いてみたかったので。
アリア、てご存知と思いますがつまり空気のことで、オペラの中でそこだけストーリーが止まって違う空気になるんだよ、てイタリア人の音楽家に教えてもらいました。
そういや英語ではairだし、ドイツ語ではLuft、、じゃなくてArieだけどw。
森って不思議で、この森の中で感じる気持ちよくわかります~♪
そして心温まりました。
今は岩盤浴なんでしょうけど、今日みたいな雨の日に森に行くととても落ち着く香りがします。