夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

今日聴いた音楽~山田耕筰ピアノ作品集

2005-08-19 | music

 山田耕筰(1886-1965)と言えば、北原白秋作詩による「からたちの花」、「この道」、「ペチカ」、「待ちぼうけ」や「赤とんぼ」(三木露風)、「兎のダンス」(野口雨情)などで知られていますが、まあ由紀さおりあたりが歌ってる昔懐かしい日本の歌をいっぱい作った昔の人って感じでしょう。ところが、このピアノ曲集の解説書を見るとベルリン留学の帰りにモスクワに行ってスクリャービン(1872-1915)に心酔したり、若きショスタコーヴィッチ(1906-1975)と一緒に写真に写っていたりしたってことがわかります。1886年(明治19年)生まれと言うと、フルトヴェングラー、エドウィン・フィッシャーってところで、82年生まれのストラヴィンスキーや85年生まれのベルクより年下ってことを知ると、だいぶ感じが違って見えますね。日本では石川啄木、谷崎潤一郎、萩原朔太郎が同い年で、ちょっと強引に山田耕筰にひきつけて言うと若い頃はモダニズムに傾斜しながら日本的な情緒に回帰しちゃった人が多いのかもw。

 それでこの曲集なんですが、技巧的なところが少ないので、ピアニストにとってはあんまりおもしろくないんじゃないかなって思います。歌謡的な発想がやはり強くて、かと言ってシューベルトみたいにその楽想を延々と展開するわけでもないし、ドビュッシーほど計算し尽くした一つの音にも意味があるってほど緻密でもないようです。2枚組みのCDの最後の「ピアノのための“からたちの花”」がいちばん取っつきやすいのかも知れませんが、歌で聴いた方がいいっていう人と独立したピアノ曲としては飽き足りないっていう人に分かれそうな気がします。いつもながら身もふたもない言い方ですみません。それから、「哀詩――“荒城の月”を主題とする変奏曲」はもちろん瀧廉太郎の曲をテーマにしたものですが、変奏曲を作るにはそれにふさわしい性格というか、資質があるように私は思いますが、彼にはあまりなかったのかなって感じです。

 この調子で書いていくと悪口ばっかりになるので、気に入った曲を挙げましょう。舞踏詩「青い焔」(1916年)はオーケストラ曲の編曲だそうですが、互いの手首を縄で結んだ男女が生血で塗り上げられたような赤い柱の上で燃える青い焔に照らされて踊るという、彼自身が書いた見世物小屋的な官能性とモダニズム的な象徴性がこめられた台本によるものです。「7つのポエム“彼と彼女”」(1914年)はこれに先立つドイツ留学直後のものですが、ともに後の「スクリャービンに捧ぐる曲」(1917年)以上にスクリャービンのもつ神秘性とピアニズムとしての独自性を共有したものだと思われます。


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16 コメント

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隠れ情報! (yuhoto)
2005-08-24 19:21:20
夢のもつれ-san



こんばんは!

お久し振りで~す!



この記事を興味深く読みました。

ところで、山田耕筰が留学先で作曲した「赤とんぼ」は、欧州の作曲家のある曲の一部分をコピーしたことで有名です。

私が若い頃にそのことを知り、実際にオリジナル曲を聴いたこともあります。それが何と言う曲だったか忘れてしまいましたが、当時は知る人ぞ知る隠れ情報でした。



有名な作曲家の地位を汚すことを避けた日本人特有の“ま~ま~主義”により、殆ど表に出ることはありませんが残念なことです。

もしも、この曲がスキャンダルに発展していたら、地位を失われるどころか、小学生の心のケアまで必要になっていたでしょうね!
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貴重な情報をありがとうございます (夢のもつれ)
2005-08-24 23:40:38
確かにそういうことはありそうですね。山田耕筰ではないかもしれませんが、ヨーロッパの曲を聴いていて、日本の唱歌に似てるなって思ったことはあります。ただそういうのってすぐに忘れちゃうんですよねw。

昔、深夜ラジオで歌謡曲やポップスどうしでそっくりさん(≒パクリ)探しをやっていておもしろっかたのを憶えています。

歌曲はどこまでいってもメロディが命ですからそっくりさんではまあダメでしょうね。私はブラームスの第1シンフォニーの第4楽章だって、ベートーヴェンのパクリにしか聞えないので、高く評価できない偏狭な人間です。

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そのCD (はじめまして)
2005-11-28 18:59:31
>若きショスタコーヴィッチ(1906-1975)と一緒に写真に写っていたりしたってことがわかります



音大で山田のピアノ作品を研究しようと思っている者です。そのCD(もしかしたら私もすでに聴いたことのあるものかもしれませんが)

の情報を教えていただけませんでしょうか。

よろしくお願いいたします。
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お尋ねのCDは。。 (夢のもつれ)
2005-11-28 19:20:05
「山田耕筰ピアノ作品全集」

Pf:ニキーティナ・イリナ

DENON、1995年発売

です。

私は、図書館で借りました。



ご研究の成功をお祈り申し上げます。

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スクリャービンのことですが (しろ)
2005-12-13 21:53:26
あたしにはこの人の作品はよくはできているが、もう少しの踏み込みが足らないような気がするんです。ベートーベンのような鬼気迫るようなところとか、ショパンみたいに男の中に女を感じさせるようないやらしいところがないんですけど、もつれさんはどう感じますか?
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しろさんらしいですね^^ (夢のもつれ)
2005-12-13 23:46:57
スクリャービンっておもしろい人だって思いますし、わざわざ伝記まで読んだことがあるんですが、作品そのものとして感心(又は感動)したことはないですね。ホロヴィッツやアシュケナージの演奏で聴いてみましたけど、ピアノ曲もピンときませんでした。

いちばんおもしろかったのは、Nemtinって人が補筆・完成(実際は創作?)した”Preparation for the Final Mystery"ってまあ変な作品でした。



ショパンはいやらしいですか。私には単に女々しい(失礼w)だけで、コルトーの演奏でしか聴きませんが。。





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やっぱりそうですか・・・ (しろ)
2005-12-14 00:02:23
スクリャービンとゆーのはとらえどころがない人なんですね。よくピアノの先生が素晴らしいといっているので、そうなのかなぁ?
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続き (しろ)
2005-12-14 00:04:16
思ってたんですけれど・・・



ショパンは女々しい曲もありますが、男っぽい曲もあると思います。ピアノソナタ、コンチェルトなどは革命の曲だと思っています。ものすごく男っぽいけれど、その中に女性的な面をもっているとゆーか。



そういう意味でいやらしいんですね。男の中に女の面をもっているのって、ちょっといやらしいと思いませんか?
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パクリ (しろ)
2005-12-14 00:06:57
アカトンボのぱくりはシューマンの交響曲からでしょう?あたしも聴いたことあります。こいつがぱくったんですよね?あまりに似すぎているから。
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何度もありがとうございます^^ (夢のもつれ)
2005-12-14 09:48:54
しろさんのおっしゃる男の中に女がって感じがわかってきました。私自身ここんとこずっと女性一人称で物語や詩を書いていながら言うのもなんですが、気色悪いから敬遠してたような気がします。



ただコンチェルトやソナタは、それらに必要な構成力がいかにも弱くて、彼の作品の中でも高い地位を占めるものと思えないですね。オーケストレーションも決して上手じゃないシューマンほどの味もないし。。



赤とんぼはシューマンですか。ポップスとかでも似てる、パクってるってすぐわかる人っていますね。勘がいいんでしょうか。私なんかあれ?って思ってもすぐ忘れちゃいますね。。

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