○クルムフォルツ・ハープのためのソナタop.13&14:ハナ・ミュラロヴァー
クルムフォルツ(1742-90)はボヘミア生まれの作曲家で、ハープのための作品を多く書いていますが、ハープ奏者であった妻が駆け落ちしたのを悲観して、最期はセーヌ川に身を投げたそうです。この作品13と14は1788年にパリで出版されたものですが、有名なモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」が1778年の作品ですから、ほぼ同じ時期のハープが近代的な楽器として進歩していた頃のものなのでしょう。最初はその美しい音色に魅了されますが、どこまでいってもハープはピアノやヴァイオリンほどの表現力は持ち合わせていないので退屈してしまいました。
○日本のオーケストラ2003:ハイドン交響曲第1番その他
JTがお金を出して作ったアフィニス文化財団という財団法人の支援による日本のオーケストラの演奏を集めた4枚組みのCDです。CD自体が非売品で、図書館に寄贈されたもので、日本オーケストラ連盟っていうプロのオケの団体に加盟している23のオーケストラが全部演奏しています。オールジャパン・シンフォニーオーケストラっていうオールスターみたいなのも含めて24曲がほぼ作曲時期順に並んでいます。
日本のオーケストラの大部分は厳しい財政状況や理解されない環境におかれているんだから、悪口は書かないようにしよう、いいものだけを採り上げようと、私にしては殊勝な心がけで聴き始めたんですが、そんなにひどい演奏はありませんでした。ただこれはっていうのもちょっと少なかったかなぁ。おとなしいって言うか、教科書的って言うか。えぐいくらいの魅力がないと生きていけないって思うんですけどね。東京交響楽団のハイドンのシンフォニーの1番とか群馬交響楽団のベリオのシンフォニアとかはいい演奏だと思いましたが、まあ1楽章だけの抜粋っていうのが多いんですが。
それ以上に感じたのは、6曲採り上げられている(つまり3分の1)邦人作品のひどさですね。だいたいは私でも名前くらいは知ってるような有名な作曲家なんですが、およそくだらない。現代音楽には名曲は東京の星のように少ないですが、それにしても……上に挙げたベリオの作品を物差しにするとレヴェルの低さがよくわかります。ベリオのも結局はマーラーの音楽でもっているようなものですが、それでもこのCDに収められた湯浅や三善や大栗や間宮の作品よりはよっぽどちゃんと音楽的内実があります。だいたい「内触覚的宇宙Ⅴ」なんていうタイトルは作曲家の知的レヴェルの低さを示しているだけです。一柳慧の「架橋」だけはまずまずの曲かなと思いましたが。
○バッハ平均律クラヴィア曲集ほか:エドヴィン・フィッシャー
「20世紀の偉大なピアニスト」っていうシリーズの一つで、CD2枚組みに1枚が平均律の抜粋、もう1枚が半音階的幻想曲とフーガやピアノ協奏曲第1番が収めれています。解説には平均律は20世紀最大の録音とかいろいろ賛辞が連ねられていますが、全然そう思いませんでした。全曲集からブレンデルが選んだそうですが、バッハのパセティックな面が強く出たような選曲で、たぶんそれに彼の演奏の特色がよく出ていたんでしょう。良く言えばロマンティック、悪く言えば砂糖菓子のように甘ったるい演奏です。こんなのはバッハのほんの一面にすぎません。それをわざわざ悪い音質で聴くような骨董趣味は私にはありませんね。芸風の全然違う園田高弘が崇め奉っていた理由がさっぱりわかりません。ピアノ協奏曲は……もうやめておきます。
日本人のはおしなべて、テクニックを前面に出した曲が多いので、おもしろくないと思ってます。いい曲もあったんですが、あまり演奏されていません。
↑の数人は名前をきいただけで、聴きたくないなぁと思ってしまいます。湯浅さんのは、大河ドラマは良かったですよ。一度信用を落とすと客が離れていくのはどの世界も同じですが、現代音楽なんて、作家がどれほど「おもしろいんですよ」と言ってもチケットを進んで買ってくれる客は、超オタクでしょうな。
あたしは大学に入ったときから、ものすごく疑問を感じてまして・・・現代音楽とは別の方向に進もうと思ってました。自分のポリシーというか、音楽を何のためにやるのかということを考えまして・・・人に聴かれない、歌われない音楽をやって何の価値があるのかと思ってました。
そういうことで、あたしは学芸物とか、コンピュータミュージックとか、大衆音楽やってます。ここは日本であって、ヨーロッパではないわけですから、人に合わせていかないと食っていけませんわ
名前を挙げた邦人作曲家もちゃんと聴いたことはなかったんですが、聴いてみてまあそれでよかったのかなと思いました。私もタン・ドゥンの"Water Passion"を聴いて、すごくおもしろかったのを覚えています。名曲かどうかはともかく、どうせ作曲家が亡くなる前に消えちゃうような作品しか書けないなら、あれくらいの芸を見せてほしいものです。
記事で採り上げていただきありがとうございました。
タン ドゥンは先日「ペーパーコンチェルト」を聴きましたが。すごく良かったですよ。彼は今世界中から作曲の依頼を受けているそうです。
彼のは正統的な音楽ではなく、いろいろなジャンルが混じっているんです。ペーパーコンチェルトはロックっぽくてすごくのりがよくて、楽しかった。
ツヅキ~タン ドゥンのようにもう一度聴きたいと言わせる作曲家いますか?いないでしょうね。あたしは彼はすごい才能の持ち主だと思います。残っていく人だと思っています。
今一番好きな作曲家です
前に書いたロイド・ウェッバーもそうですが、クラシックの伝統にこだわらない作曲家の方がかえって真剣にクラシックに取り組んでいるように感じます。