夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

新発田城本丸跡

2012-08-22 | diary
12:12新発田行一両なるワンマンカーに乗車す。30分もせずして着くなり。
例の如くそれなりに混み、車窓が風景も変わらず。
川を渡りて田圃の中を進めど鉄橋続けるを怪しむに漸く土手ありて阿賀野川との掲示あり。
広き河川敷なりやと驚きぬ。
瞳の円らなる女子高生の前の席に座りたるや再び驟雨となれり。
 窓流るしらぬ如くに朝顔の茎

新発田にて城跡を目指さんとするも雨止まず、なかなかに遠し。
されど綺麗に整えるも活気の欠片もなき駅前に居りても1時間40分の待ち時間は潰すこと価わず。
長々しきシャッター通りを行く。
城下町の常にして道ややこしく、かつトリッキーな標識によりぐるりと回りたらん、ようようにして城前に着きしも、豪雨となりぬ。
小さき折り畳み傘なれば肩はおろか太ももから下まで濡れ鼠となりて城にも入れず烏滸の沙汰極まれり。
案内板を見つければ脇に回るべしと漸くにして知りぬ。
やがて小雨となりて抹茶が如き堀と櫓の風情を愉しむ。



門の係員に尋ぬるに本丸は自衛隊が駐屯地なる由、さては朝敵賊軍への明治政府が仕打ちやらんと憶測すれど、パンフレットにては仔細明らかならず。
再建せし櫓より本丸跡を望むれば肉まんの皮の部分のみ城らしき態にすれど、肉が部分には自衛隊が輸送トラックの並びしは哀れと云うべくもおかしみも感じぬ。





漸く雨も小降りになり、あちこち散策すれば残り40分ほどとなりたる故、駅に戻らんと往きとは異なる道を辿りぬ。
思いの外、近道なりてかの商店街に出ずるは方向音痴なれば稀有のことなりしか。
早く着きたれば列車はまだ来ずやと思わんは身勝手にしてホームにてなすことなく待ちぬ。
村上までの列車もまた混み合い、(奇態なる呼び方なれど)2人掛けのロングシートに座す。
揺れの甚だしきに筆記しがたく、眠りぬ。

村上は町屋が名物なる由にて1時間余の待ち時間なれど、歩いてみん。
ものの20分ほどにて成程(間口狭く奥深き)京の町屋をば彷彿とさせし通りに出でし。





ぶらぶらと町並みを見物し、裏手は如何と散策すれば廃屋、陋屋、あちこちに見え、何やら芝居小屋の舞台裏をば覗き見し感あり。
旅の予定は漠然たるものにして、宿の予約もなきが故にこの町で泊まるも選択肢にはあれども、早々に捨てぬ。
駅に30分も前に戻りたるところ、豪雨のため羽越線は上下ともに遅れ、運休もありうべしとの案内あり。
やや不安になりたるも、改札口に集まれる人々の如く電話する相手のあるべくもあらず、ノープロブレムと呟きて乗車す。
されど、予定時間を10分過ぎたるも発車せず、安全確認中とのアナウンスにて傾きし陽射しの強きは皮肉なり。

1時間を経ても停車したるままなれば車掌に聞きしところ、仮令発車すれど、酒田まで辿りつかず途中の駅にて打ち切りもなきにしもあらずと云うに、そは流石に困ることなり。
電池の残り少なく、電波の受信状況の悪きSBのアイフォンと検索のままならざるドコモ・ガラケーを駆使し、村上・酒田間にて如何にすべきや思案す。
16:09発のところ、打ち切りとせし特急の乗客も乗せし後、17:16にようよう出発す。
かかる際のJRの案内の不親切さはおそらく乗務員が情報を持たざるがためと推測す。
トンネルを抜けるや直ちに日本海ぞ見ゆ。
天気悪きはふさわしき風景なれど、再び激しき雨降るはひやひやものなり。
広重は東海道53次にて雨に降られたる旅人を多く描けり。
旅の難儀を伝えたるや、雨の風情を謂わば窓越しに見せたるや。
集落は大凡浜と鉄路の間にあれど、その高さ幾許もなきに大津波あらば全滅は免れまじ。
村上の町屋街にて海抜8.3メートルとの標示も見し。
この地方にて津波が被害は記憶されしか、知らず。
稀の稀なる災厄は人々が記憶の暗き底に押し込まれるや。
粟島が島影の列車を追いかけぬる。
 島影や夕立が音の呼び覚ます

この付近には桑川、今川、越後寒川といった駅名多し。
笹川流れと言うらん、小さき川に小さき平地ありて険しき崖に隔てられぬ。
丹念に猫の額を拾うが如き集落の営みはいつまで可能ならん。
単に少子高齢化を云うにあらず、かかる辛抱強き生活への共感の薄れたらんを感ずるが故なり。
府屋なる駅は初めて町らしき、町にして多くの人降車せり。
されど道路の向こうはすぐ海岸なり。
あつみ温泉・羽前大山間にて集中豪雨のため暫く停車すとのアナウンスあり。
いよいよもって酒田に着かずして本日の旅程終了とならんや、果たして夕食と宿泊や如何。
吾人は後者より前者に執着ありて空腹は酒食双方なり。
この駅にて打ち止めとなるはさほど憂えず、ただどっちつかずにて車内に留まり続けるを厭うなり。
雨は止みぬれど、動かずは村上と同じにして安全の確保たる理屈は兎も角むずがりたくなるべし。
しばしば新幹線にてエアコンも切れし車中にて何時間も留め置かれたるニュースに接す。
かくの如き事態に比ぶればホームに降りて喫煙しうるのみにても幸いと云うべし。
列車動かざれば想動かず、想動かざれば書くべきことあらざりけん。
ただ愚痴が如きものを書き連ねるのみなり。



変化あるをもって旅と言い得べくんば今が状態は旅にあらじ。
眠るに如かずと思えど、眠気は天邪鬼の最たるものならん。
天候、自然の前に人は無力と云う外なし。
路線図を見るに酒田は遠し。
6時半を回りて陽が暮れて来ぬ。
何ら追加情報なく、打ち切りとなるまで阿呆の如く待つ外なしや。
駅舎に行くに駅員は帰り、窓口はシャッターを下ろしぬ。
ぶら下がりたる電話より人の声するに隣の駅の客なり。
しばし会話するに酒田駅を呼び出したるに応答なしと憤りぬ。
先程よりホームにて聞こえし、奇妙な呼び声の主は彼なり。
今夜は寝袋にて寝やらんなど種々話したき風なれど詮なきことなればほどほどに切り上げたり。


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