銀河のサンマ

何でもあり

ネコ傘

2023-04-07 | ものかたり(ネコさま)

 

きのうボクたちは、そこまで歩く。

肌寒い花ちらしの雨の午前。

あぁ、これが観たかったんだ、この人。

この人と一緒にボクたちは桜を眺める。

ひらりひらりと散る花びらを目で追いかけている。

どれどれ、ボクも柵から桜ちらしを眺めよう。

この人は大きな溜息をつく。

その溜息はどんな意味を吐いているのだろう。

どれどれ、ボクは花びらを体に透かせてみせようか。

透かせた花びらをどんな思いでみてるだろう。

この人は余程でない限り雨ふりに出歩かない。

たまの出番しかないボクたちにこの人の気持ちはわからない。

故にどんな溜息か、どんな思いかなんて知らなくてもよい。

ただこの人が雨のなか、じっくり景色を眺めていることが珍しい。

雨を避けながら傘の柄を握りしめるわけでなく、小走りで顔を顰めてもいない。

雨ではみない表情でボクたちネコ傘のなかから桜を透かせ散りゆく姿を眺めている。

ボクたちは雨が好きなので、この人と同じ散りゆく桜を眺める。

勿論、ボクたちは桜ちらしの雨も大好きである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜ちらしの雨のなか

 

 

 

 

 

 

 

 

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しばらくネムる

2021-11-15 | ものかたり(ネコさま)

 

 

 

 

ボクはしばらくネムる。

どれくらいかわからない。

この子しだい?

ボクはしばらくネムる。

この子がボクをつくり疲れたみたい。

きっかけは他の細密作業に追われて、この子の集中力が途切れ、少し手をとめた。

気分転換をはかろうと隣にネムる猫を10分ほどクロッキーして満足したのが始まりだった。

あ!と小声で叫び、立ちあがり引き出しをガサガサして黒ペンを探しあてた。

鉛筆でできあがったボクにその黒ペンでなぞって、あろうことにカッターを取りだして切り抜きはじめた。

こないだ指を切ったばかりらしく、カッターを握る度にビクビクしている。

このカッターも5年ぶりに使うため刃が錆ついていた。

刃を換え切りすすめ、この子の頭の中ではボクには既に色がついているようで色画用紙まで用意してならべている。

糊、カッターマット、色画用紙、クレヨン…どこまでも散らかってゆく。

ボクはのんびり眠っているようだが右に行ったり左に行ったり裏にひっくり返ったりかなり忙しい。

2日経った昨日の夕方からバッタリこの子が寝こんだ。

体力がないこの子の過集中による過労だ。

他の者が静かに囁いていたが、この子は骨休みに手を動かすと骨休みでは終わらなくなる様だ。

簡易に物をつくるどころか気になって気になって再度、過集中に入るらしい。

現在の過集中は1度に4〜5時間。かなり短くなったようだ。

この子の猫が昼夜鳴くので手を止め、物を口に入れるが食という欲さえわからなくなっている。

昼夜以外のコップ1杯の休憩さえ忘れ、衰弱しやすい体でなければいんだけどさっ…と医者も困っているそう。

今朝のこの子は最悪だ。

目はプックリ腫れてボーッとして朝食もやっとこさ口にしている。

あーいかん。とボクをぼーっとみては閉じ開く。

体はかなりしんどそうだ。

本来の細密作業もできそうにない。

ねぇ、ボクはしばらくネムるよ。

キミも少しやすんで、せめて普通に起きられる体に戻りな。

また本来の作業が終えたら、ボクをみて。

そのままボクをノートに挟んでしばらく忘れるんだ。

イヤイヤと子供みたいに首を振らないの。これが完成かもしれないよ。

ボクは骨休みにつくられた猫だから、気楽に気長にネムる。

さ、ノートを閉じてみて。

そうやってキミが横に置いて寝るとキミは再びノートを開くでしょ?

そうだ誰かが囁いてた、キミの記憶の海にミューイがいるそうだね。

キミの記憶の海へボクを深く沈めてもらって記憶の隅でボクをしばらく忘れてもらおう。

どれくらいかかるかな。

キミの記憶のミューイ早くきて。

ボクはしばらくネムるから。

 

 

 

 

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看板猫

2021-04-01 | ものかたり(ネコさま)

 

 

 

 

 

あまい いちご ひとパック 480えん。

きょうの オスススメ ですよぉ。

かんばんむすめ ゆうがたまで がんばってます。

カリカリたべて はたらいて カリカリたべて はたらいて

ごほうびに チュールオンチュールオン もらえます。

たまに ケをふきふき よごれをとってくれます。

あたしは たなに ならびんでるけど タダです。

タダですよって いわれてますが だれも いらないっていいます。

むかし ほんとうの おかあさんから きいたことがあります。

タダより たかいものはないのよ って。

なので おみせのなかで いちばんたかいから ここに ずっといます。

みんな びっくりするほど たかくて てがでないと おもいます。

きょうだい みんな おとこのこ。

あたしだけ おんなのこだから いちばんたかいのだと おもいます。

きょうも しゃしんさつえい あくしゅかい あたしの ファンが ひっきりなし

おみせより いそがしいです。

だから にんきのない あまい いちご ひとパック 480えん。

だれか かってあげてください。

 

 

 

 

 

 

おにいちゃんたち の いちぶ。

 

 

 

 

 

 

 

メロメロ ファン いちごう。

きょうで さよならって。

でも あいに かえってくる って。

 

 

 

 

 

 

 

 

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3匹の猫

2020-04-01 | ものかたり(ネコさま)

 

 

 

何する?ボクあっちに行ってみようかな。

日向ぼっこ気持ち良いね。

美味しいもの今日は見つかりそう。

ほら昔お母さんが言ってた「言い伝え」の意味なんだろう。

さあ?カラスエンドウが弾けるころにはわかるかも。

カラスエンドウが弾けるころ何してるだろう。

ボクはシロクロ模様だから噂にきく大きい牛になるかも。

そりゃすごい。

でっかくなれても草ばかり食べられるかなぁ。

ワタシ三毛だから噂に聞く縁起良い招き猫かも。

素敵な場所で御飯食べられるね。

昼行燈だけど大丈夫かなぁ。

アタシは男を侍らせる女になって子だくさん。

うわぁ皆で楽しく遊ぶんだぁ。

ネズミとトカゲたくさん食べさせてあげられるかなぁ。

何の話してたんだっけ。

そうそう、昔お母さんが言ってた「言い伝え」の意味なんだろう。

猫も木から落ちる。

猫の耳に栗金団。

立てばシャム座ればペルシャ歩く姿はリビアヤマネコ。

さあ、カラスエンドウが弾けるころわかるって話じゃない?

そっか、そっか。

そだった、そだった。

あったかいね。

あったかい。

美味しいもの見つかりそうだぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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神社守

2019-09-29 | ものかたり(ネコさま)

 

 

随分と神主なく

巫女は居ったことない

存在知る者ほぼ無く

小さな小さな祠ひとつ

樹の鳥居は古くも立派だが

林に覆われるように在り

放られ朽ちた神社

誰も寄らず

誰も参拝おらず

不気味に素通りされ

人神主不在なれど神主は私

神社守の猫として居る

鳥居の真下のど真ん中

誰も入れませぬ

人間嫌い懐きませぬ

田夫野老な同類もお断り

神を態々おろして

私を飼っておいて

放ったのは誰かな

見捨てたのはどなた

神社を

私を

神社で捨てられ

ここで何とか育ち

放られた神社に感謝し

静かな静かな林

空になった神社の

鳥居の真下のど真ん中

私を守ってくれる場所

誰も入れませぬ

私はずっと神社守

 

 

 

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