銀河のサンマ

何でもあり

栗ごはん

2023-10-21 | 銀河食堂

 

 

肌に感じる陽射しが強い秋の朝、急に大粒の雨に見まわれ辺りの大気の熱が一気にさらわれた。

そんなボクはまったく備えをしていない。

降水確率を確認するくらいの余裕のある朝でありたいのが理想。

大粒の雨は肌に痛い。

空き店舗の軒に入り雨宿りをする。

西の方が明るいので直に止むだろう、とハンカチをとりだし濡れた肌を拭こうとした時

イテッ!!

左手の甲に何かが刺さる感触を覚え、少し驚き、片目をつぶった。

ー何!?何!?ー おそるおそる目を開けると

【急な秋の雨には銀河食堂の御利用を】と木札の文字に小料理屋風のお店。

ひさしぶりに銀河食堂あらわる!!

小料理屋風ならば、あの女将だろう。

呼吸を整え、スッと戸を開けた。

「なによ、びっしょりじゃない、雨降ってるの?」

ーえ…?ー 

ボクは言葉がでなかった。

女将は外の状況を知らないの?手書きの木札に「急な雨に…」と書いてたじゃないか。

少しの混乱が生じて止まってしまったボクに

「なに突っ立てるの?座りなさいよ、ほらぁ」

と女将が背中を押して、ボクは流れるように椅子に腰かける。

「あのね、栗がとても甘いのよ」

女将は話しながら奥に入り、向こうから盆を持ってやってくる。

盆にのっている一膳の茶碗からほんわり湯気がたっているのがみえたとき

「わぁ、美味しそう」とボクは少し大きな声をあげてしまった。

「ふふふ、美味しいわよ」

女将がスッと箸を置くと同時にボクはその箸を手にして

「いただきますっ!」と嬉しくて声を張った。

栗ご飯を口に運ぶ。

ー何という…う…美味すぎるー ボクは唇をギュッとつぐんだ。

女将はボクの顔をわかってか微笑む。

「ホクホクした栗と、ホワっとしたお米が美味いっ!」

「あらっ!すごいわ!栗も美味しいけど、お米は新米なのよ!!」

女将は一段高い声で驚いたように表情をし、ボクの箸は感動で止まらない。

「秋だね、秋の味覚って素晴らしいね」

「ふふふ、今年は当たり年だったのね、きっと」と軽くウインクをした。

あっという間に平らげたボクは「ごちそうさま」と手をあわせる。

女将は静かに頭をさげ、ボクは淹れてくれたお茶の湯呑みを手にしようとする。

ボクの茶碗をひきながら、女将は静かに言った。

「栗ご飯には織部が似合う」

「え…?」

ボクはゴクリと唾をのみ、手でとろうとした湯呑みが滑り、お茶の滴がとんだ。

「あっ!もぅ…っ」女将が小さく声をあげた。

肌に感じる陽射しが強い秋のなか、風がスーッと吹き心地よい。

イテッ!!

左手の甲に何かが刺さる感触を覚え、少し驚き、片目をつぶり再び目を開ける。

ボクはいつの間にか栗林に着いている。地面にイガグリがたくさん落ちている。

今日は職場の仲間と栗拾い。

ボーっとしているボクを、イガグリがチクりとしてくれたのだろう。

きっと今年は当たり年に違いない。

 

 

 

 

 

 

 

※ 9月29日の朝ごはん。

 栗とお芋は頂きもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

栗ごはん - 銀河のサンマ

栗ごはん - 銀河のサンマ

僕は林で栗の木をみつけたうぅ、涙があふれ目の前がぼんやり霞む涙を手でぬぐうと「銀河食堂1人前営業中」の文字またまた銀河食堂現る古民家な食堂に変わっている木の戸をガ...

goo blog

 

 

 

 

コメント

春のペペロンチーノ

2023-02-06 | 銀河食堂

 

 

立春にはいり、どんよりし始め明日からは雨が続くらしい。

寒いので、しっかり半ちゃんを羽織っているボクはクシャミをする。

節分から風邪をひいたり治ったりを繰り返している。

けれど気分転換に、珍しくボクが料理をしようと台所へ立っている。

春が待ち遠しいので菜の花と筍でペペロンチーノをつくるのだ。

ペペロンチーノはママンの味を思いだしてつくるので、頭は十分、昔の記憶を辿っている。

さてニンニクをみじん切りにする。

隣町で作られたジャンボニンニクを使用している。

なかなかの手際じゃないか、とボクは嬉しくなり少し寒さを忘れていた。

母のペペロンチーノは菜の花もなにも入ってなかった。

ただ、ペペロンチーノというのがあるらしくて習ってきたよ、と夕食にでてきて初めて口にしたの覚えている。

何だか具もなくて不思議だね、これが流行っているんだ…と家族がいつしか無言になって食べ終わったことを覚えている。

あの頃はナポリタンがメインスパゲティというもので、

その後にミートスパゲティというソースの缶が美味しいらしい、と聞いて買い始めた頃くらいである。

それからそれからボクは社会人になりペペロンチーノをお店で食べた。

その時は母のつくった事なんて覚えてもいなかった。

だがお店で食べて、ペペロンチーノって具材がない!と心の叫びが小さく漏れたのは覚えている。

きっと貧乏性なのだろう、ペペロンチーノと具材の入ったパスタを値段的に比べてしまう。

だからそれからも余りボクはペペロンチーノを口にすることはなかったと思う。

ボクが母にペペロンチーノをつくってもらったというのを思い出したのは、つい数日前にことである。

さてボクは具ありのペペロンチーノをつくる。

筍の水煮、菜の花、ボクの食べたい春を一足早めに食べるんだ。

熱いオリーブオイルにニンニクと唐辛子を入れ香りつけ

パスタと一緒に湯がいた菜の花をザッと入れサッと炒めてスルンと皿に盛る。

最後に黒コショウ…ちょっと多めにね、ママンの味は黒コショウが少なめだった。

当時は辛いのが苦手な家族だったから、唐辛子も黒コショウも少なくて十分だったのだ。

急げ、香ばしくそそる春のペペロンチーノを食べるんだ。

よっし、食べるぞっ!

一礼し「いっただっき…あ゛ーーーーー!!!」

「どれぐらいぶり?いただきます?では、私もいただきます♡」

ニッコリ笑う久しぶりの登場、銀河食堂の小料理風女将が目の前に。

「どうしたんですか、突然に。どうやって現れたのですか…」少しボクは腰がひけた。

「美味しそうな香りする方へ行ってみたら、ここだったの。何か?」

「……」

「さ、出来たてを食べないと♡お皿が春いっぱいね」と女将がニッコリ微笑みフォークを握った。

ふぅー。そう、いつもそうだ。こうなんだ。この女将はいつも無邪気な突然な人なんだ。

もう1本、フォークをとりながらボクは自分にこう言い聞かせ、改めてふたりで、いただきます、をした。

一口いれボクはそのまま女将をそっとうかがった。

「美味しいわ、すごいじゃない、つくるのね。えらいわ」と女将が微笑んで春のパスタを食べる。

良かった、とボクは何だか安心して二口目をゆっくり味わった。

菜の花の苦味が好き。筍の歯ごたえが絶妙に良い、そして黒コショウの量を除けばママンの味。

ボクは少し恥ずかしく呟いた。

「ママンの味にしたくって…」

「ママンの味?」と女将は不思議な顔をした瞬間

「ハ、ハ、ハ、ハッックショーーーーンっ!!」女将が突然クシャミした。

ボクはビックリした。

少しドキドキして「女将も風邪?」と尋ねる。

すると、鼻を手で覆った女将はとんでもない!という表情で首を横へふり

「何これ辛いわよー!コショウ多くない!?これ、これ…ハっクショーン!!」

2度目のクシャミした女将が顔を歪めて春のパスタをみつめ、みるみる涙目になってゆく。

ボクは慌てて後ろにあったテッシュをとろうと女将に背を向けた。

すると小さく籠った声で「もう、なによ…ママンの味じゃないじゃない…一足早めの春を…」

「え?」

ボクはテッシュを持って振り返ると女将はそこに居なかった。

女将?ボクは部屋を見渡したが女将がいたという気配すらない。

フォークも1つしかテーブルにない。

そのフォークでボクは少し冷めかかったペペロンチーノを食べる。

ボクはいつから黒コショウ多めでも平気になったんだろう。

皿の奥へ目をやるとコップに一輪の満開の菜の花が入っている。

その日のニュースで今川の菜の花が満開という映像が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

※ 夕食

 

 

 

※ 昨日、朝。

 3匹、炬燵の前の私べったり争奪戦のため私は足を入れられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント

蕗のツナ煮

2022-04-10 | 銀河食堂

 

 

急な気温の上昇で染井の吉野さんが散ってゆく。

なんで急に暑くなっちゃうんだよぉ…。

3月中旬の気温の狂いに燕が飛来し、桜が散るとともに躑躅咲いて、歩けば藤の花が7分ほど開花しているところもある。

3月は「去る」と言われるが秒速で過ぎたような3月だった。

そしてボクの目の前で染井の吉野さんが、たくさん散ってゆく。

大きな風がふぁーっと吹くとボクの前で演出してくれるが如く桜吹雪が舞う。

目を丸くして顎をあげ、思わず、わー!と叫けぶ。

こんな桜吹雪を体験したことがないのだ。

ー 桜、さくら、サクラ、sakura… ー 

桜の花びらがボクの頭の何かの記憶に触れ何かを甦らそうとしている。

ハラハラ桜吹雪が落ち着き始める頃、目の前に文字がみえてくる。

ー思わずびっくりしたね、今からは八重も楽しみに営業中ー 

木札が…!!銀河食堂…現る!?

「おぉ、おぉ、来なすったかい。まぁ座んない。」店主がとびきりの笑顔で案内してくれる。

ボクが来たわけじゃないのに…と呟き案内されるまま椅子に腰掛ける。

古い銀河食堂の店主だ。

「蕗がよ、とれてな。ツナっちいうもので炊いたのさ。揚げも入ってるけんどよ」

ツナと蕗の煮物なの?

「おぉ、アンタ煮物さ、そげに食べきらんやろうと思ってな。ツナで…グッシシシっ」

店主は新メニューを突然思いつき嬉しかったところにボクが現れたという。

へぇ、美味しそう。食べちゃうよ!?とボクは店主の顔をうかがい箸を手にとった。

「美味しかろう!!?」ボクが味の感想を発する前に店主が、もうきいてくる。

うん!ツナが強く主張せず、良い具合!!

うんうんと大きく笑顔で頷く店主は機嫌がとても良く感じ、ボクのあった限りでは最高の笑顔に思える。

その最高の笑顔は、さっき桜吹雪の中から思い出が蘇りそうだったボクの何かに触れた。

その笑顔、その笑顔だよ…桜、さくら、サクラ、sakura…そして咄嗟にでたボクの口から

ーおじいさん…ー

「ん?」驚いた様子の店主の前を風が流れ、再び染井の吉野さんの桜吹雪が舞う、いや乱舞する。

桜吹雪にボクの包まれ飲み込まれてゆく。見事に心地よく飲まれる。

「切な…」店主の小さく小さく呟くより小さい声が聞こえたが桜吹雪に包まれ消されてゆく。

飲み込まれてゆくがボクは店内へいることさえ分からない。

やがて、さぁーっと風が止み桜吹雪は消えてゆく。消えたあたりには桜はない。

…ボク…何してたんだっけ?…

そうそうボクは先日、ミモザ色のイヤリングをした子とお話をしたんだ(ふふっ)

あの子にまた会えるかな?

染井の吉野さんが葉桜になる頃、何かが甦りそうで切なくなるが今年は、なりそうにない♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント (2)

おにぎりと春のお茶

2022-03-27 | 銀河食堂

 

おはよう。

え…?休みじゃなかったっけ?と僕は慌てて起きる。

な、な、なに!?

「銀河食堂.あ.ら.わ.る、が貴方の心の口癖じゃなかったかしら?」ふふふ、と笑ったのは小料理屋風の女将。

なぜ?僕の寝起きに現れるんだ?僕は少し顰めた顔をした。

「あら、やだ、貴方がここに寝てるから起こしたんじゃない」と女将はプゥと頬を膨らませた。

え?んン!?見ると僕はパジャマ姿で銀河食堂の3つ並べた椅子に寝てたの!?

トンチンカンな夢でもみてるような、そっか、春は頭が緩むって言うから、昨日、真っ直ぐ帰れなかったのかなぁ…僕。それにしてもパジャマは着てるじゃないか。もしや夢遊病でも起こしたのかな?

「ねぇ、ボーッとしてないで、おにぎり食べない?」

お皿にたくさん乗せられたおにぎりに、僕のお腹がグーっ👍と返事する。

「良かったぁ、これね菜の花の塩漬けと鮭なのよ」女将はニコッと微笑んで僕をみる。

ありがとうございます、と大きな口をあけパクリ。

美味しい!懐かしい味がする!この硬いおにぎりも何だか懐かしいし!

「おにぎりは硬めに決まってるじゃないのー。持って走れないと意味ないんだからー」女将は少し不満げに返す。

そうそう、持って走れる感じ、好きだよ、僕。たまらなく僕は笑顔で即答した。

「うふふ、嬉し♡じゃぁ、じゃぁ、桜が咲き始めたから、持って花見でもしなさい」

え?起きたばかりだよ!まだそんなに目が覚めたわけじゃないし…

「ふふふ、はい、銀河食堂特上の煎茶よ♡ふふふ。作法なんていらないから、一服いかが?」

僕の前に小さな碗に入ったお茶をコクッとのむと柔らかい甘味はスッと後をひかず口から消えた。何と女将に伝えて良いかわからない。そっと女将をみると

「目が覚めた?さ、おにぎり持って桜を愛でてよ。また待ってるから」と静かに女将が言いポロっと一粒の涙を落とした。

どうしたの?僕は慌てて立ちあがると僕の前にノイズが走り揺れる。コレも何度か味わったことある。夢のようで現実。現実かもしれない夢。

気づくと本当の現実かもしれない夢かわからない現実。僕は近くの丘に向かおうとしている。

丘の上にはたくさんの桜が咲き始めている。

パジャマでなく普段着で、手には葉蘭に包まれたおにぎりを持っている。

さて、何分咲きだろう。

 

 

 

 

 

※朝食風景

・鮭と菜の花のおにぎり

・味噌汁

・貝の煮物

 

八女限定煎茶。

茶碗:鳥獣戯画

 

 

 

 

コメント (4)

サクライナリ

2022-02-25 | 銀河食堂

 

 

スノームーンの1日前、夜の空気は澄み、月は神秘的な雰囲気を醸しだしていた。

スノームーンの日、雪が1日中ふったので夜の満月は当然みえることはなかった。

寒さが続いた、転職したボクの今の職場は事務的な仕事もあるが大概現場仕事である。

数人のチームで水が通っている山を登り、マンホールの点検をしたりする。

今時期のマンホールの中は風が遮られ外気より暖かく感じてしまう。

冬の外作業は厳しいなぁ、と転職に後悔しているわけではないが感じることが多い。

ようやく作業が終わり、山から降りると昼になっていてチームは解散し、それぞれの昼を過ごす。

何食べようかなぁ、と歩きながら考える。

ココらへんは然程、食べ物屋さんがないので、自分のメニューがパターン化されていく。

はぁー…何しよっかなぁ…と寒空の中、考えながら目を左上へやると足が止まってしまった。

ーココに春あり!営業中ーと書いた木札に古民家風の建物がっ!

「銀河食堂」現る!!

静かにカラリと戸を開けると品良い老婆店主が手招きをしてる。

「こんにちは」と一礼するボク。

「久しぶりですなぁ、さぁさぁ座りなっせ」と品良く店主も御辞儀をしニコッと微笑んだ。

店の中は暖房器具らしき物が見あたらないのに、フワリと暖かい。

ボクが椅子に腰掛けると、スッとテーブルに一品おき店主はニコッとして言った。

「サクライナリです、食べてみなっせ」

ー桜の塩漬けだろうか?ーボクはお腹を空かせていたのでゴクリと唾をのみこんで

「いただきますっ」と今度は勢いよく再び一礼した。

ふふふ、と品良い老婆店主が笑う。

「揚げの甘さが好きー!ボク好み♡ほんのり桜の味が口の中に残っていいっ!」ボクは大絶賛し直ぐに2つめを口に入れる。

「普段のいなりに、ちょっぽし桜をのせるのも良かでしょう」と店主は良かったぁ、という表情をし続けて言った。

ボクは3つめを頬張りながらウンウンと大きくうなづく。

「今日は休日ですし、よく晴れて桜の便りも届きましたなぁ」と店主が優しく笑って言う。

「え?今日は休日じゃないよ、今、昼休みなんだよ?どれだけ山が寒かったか…」ボクは少し不満気になってみせた。

ふふふ、ふふふふふ…品良い老婆が空になった皿をひきながら、悪戯表情を浮かべた。

そんな表情するんだ!とボクは驚きと新鮮さをおぼえた。

それはとんでもない驚きだったのか、目の前がパーッと眩しくなっていった。

うわぁーーーーっ!!それは眩しい太陽だった。

雲ひとつない澄みきった青空が広がっている。

ふと我に帰る。

昼休みだ!ココは職場からずいぶん遠い場所じゃないかっ!!

慌てて腕をまくり時刻を確認する。

えっとえっと…あれ?文字盤の横の小さな日付の文字が23となっている。

つまりは2月23日で祝日だ、つまりのつまり休日ということになる。

えーと…どういうこと?ボクは左上に目をやると頭上には、めいいっぱのカワツザクラ咲いてる。

春がやってきたんだぁ!手を伸ばしつま先立ちをして桜に近づいてみる。

ボクの口の中は、ほんのり桜の香りが残っている。

 

 

 

 

 

※23日朝食風景

 

 

 

コメント