銀河のサンマ

何でもあり

秋明菊とトマトスープ

2019-11-05 | 銀河食堂

 

 

 

 

11月に入っているのに昼間が暑い。熱い。仕事がたてこみ時間に追われる。

熱くなりすぎたアスファルトが焦りボクを睨みつけているようだ。

歩き続けるうち何処の道だろう、こんな道あったっけ?

立止まりキョロキョロしてすると完全に迷いこんだようだ。

「銀河食堂たまに夜も営業中」の木札がかかっている。

「銀河食堂」現れた!?

古民家な食堂に見覚えあり。きっと品良い老婆の店主がいるはずだ。戸をガラリ。

「夜は、ちいと寒いですな、トマトスープのみなっせ」

え?夜だったっけ?ボクは店内何となく見渡し、少し体が冷めてる気がするのをおぼえた。

「鶏の出汁とシーチキンとやらをいれてみましたがね」

「・・・」

「シーチキン嫌いですかね、私シーチキン食べたことないですけ」と老婆店主は小さく笑った。

「・・・」

とりあえず一礼し、そっとトマトスープを口に運んだ。

「あっ、シーチキンが優しい味になってる。店主、心の芯が温まってくよーっ」

老婆店主は目尻の皺がぐっと深くなるほど目を細め頷き

「優ーしく丁寧に煮てみたんですよ」と微笑み続けて言った。

「あんた、アスファルトばかり見なんな」

「え…?」

「見わたしてごらん、隣をみてごらん。きっとあんたのそばには優しく丁寧に包んでくれる、たくさんたくさんの・・・」と老婆が言いかけ空になった器を手にとった。

どこから幻か、現実か。

一体ココは何処なのか。

暑さは然程なく夜でもなく明るい夕方だろうか。

僅かな風で優しく優しく揺れる、たくさんの白い秋明菊に囲まれボクは立っている。

僕はうっとりする。

飲んだであろうスープで温まった僕の心の芯は更に温まり思わず秋明菊に淡いキスをした。

白い秋明菊には僅かにトマト色がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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