
靴の中に籠るアスファルトの輻射熱って熱い。暑い。
ついつい眉間に皺がはいる。
路面の熱い揺らめきなのか、僕の足元がクラっとする。
「おいおいお前さん・・・」
目が覚めると僕は小さな椅子を並べた上で寝ていた。
「ひっくりコケんじゃねぇぞっ」
見覚えのある空間、聞き覚えのある声、久しぶりの古いココ。
なんと「銀河食堂」現るっ!!
「眉間に皺よせて、なに突っ立ってたんだ?」
「あ・・僕は・・・」(一体何したかったんだろう)
「ほら、食べない」
少し粗雑な口調で店主はテーブルにカレーを置き言う。
「ひじきカレーだ」というと続けて説明を始めた。
「ひじきはな、ヨウ素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、
ビタミンA、B1、B2あとミネラル類、そいで何チャラ類がまんべんなく入ってるんだ」
店主はひじきに詳しいようで、流暢な何チャラまでの説明に僕は感心する。
僕はスプーンを手にもち、いただきます、と頭を軽くさげる。
「うっ!美味しいっ!」
「美味いかっ」店主の顔はパーッと輝き、ウンウンと大きく頷く。
「何だろか、少し南国風?干し葡萄の様な味・・・」と考える隙に店主は言った。
「気づいたかい。隠し味に梅ジャムを入れたんだ」店主は嬉しそうだ。
なるほどーっ。僕も嬉しく口に運ぶカレーがすすむ。
店主は思いだした様に慌てて「暑中お見舞い申し上げて営業中」の木札をかけた。
「店主らしい味。元気がでてきたよっ」と僕は御馳走様とスプーンをキラリとさせた。
「そうやって笑ってろ。お前さん笑ってろ。お前の隣には、いつも誰か居ると思え」
「え…?」
店主は下を向きニコッと微笑む。
「ん? 店主の下唇ってさぁ・・・」僕はやや斜め下から覘きこむ。
「おっと、さ、帰ってくれ。早々に店じまいだ」
店主は皿とスプーンを手にとり僕を扉の外へ出した。
ービシャンっー 僕の背中で荒々しく扉が閉まり、驚いて目を瞑った。
びっくりしたぁ、瞑った目をそっと開け扉の方を振り向く。
そこに青い海が広がっている。
「海だぁ!」思わず叫ぶ。その声が海風に乗ってゆく。
僕の隣には黄色い向日葵が笑ってる。


2020.08.09朝食風景