0312_悪魔の祈り(004)裕也の冒険-意識の魔方陣-
-意識の魔方陣-
女王アノクダルと少女デルアドは、書庫の部屋を出て階段を昇っていく。
1階に出た。
左の階段の塔に向かう。
この城には、3つの塔がある。
左の塔は、各階を移動するための階段がある塔である。
3つの塔は、別々のようであるが内部で繋がっている。
左の塔を上に上(のぼ)った。
5階の城の中心の階についた。
2人は、中央の階(かい)の門を潜(くぐ)った。
一つの扉が中央の塔に出現した。
他には何もない真っ白な階層(かいそう)である。
「ここが、召喚(しょうかん)のへやですか?」
少女デルアドは、ワクワクしている。
「そうです」
女王アノクダルは、厳(おごそ)かに答えた。
2人は、そっと扉を開けた。
中も真っ白いだけの部屋である。
正面の奥に、掛け軸をかける長方形の扉のついた棚(たな)がある。
2人は、その正面に歩み寄った。
女王アノクダルは、ちょうど正面で座って祈る位置に指で床をなぞる。
すると床に緑の線が現れた。
少女デルアドは、興味深げに見ていた。
「次元固定の魔方陣よ。
別の世界に迷い込むといけないから、
この部屋の次元に体の存在を固定する座席(ざせき)の魔方陣」
「ふぅーん」
少女デルアドは、意味は深く分からなかったが感心した。
女王アノクダルは、魔方陣の中心に『デレゲェル カイグィ』と書いた。
『悪魔の世界』的な意味であるらしい。
「よし、固定できたわ」
意識の魔方陣を描いた紙を棚にかけた。
「ここに座り、意識を集中して意識の魔方陣の中央の文字『ナム ミュルロドォ イドルハァナムキョ』を唱えるのよ。
そして、祈りの主に意識を合わせていくの」
少女デルアドは、その座席の魔方陣の真ん中のちょこんと座った。
女王アノクダルは、そのよこに小さく座席の魔方陣を描いて座った。
そして、少女デルアドが座っている魔方陣とつなぐ。
女王アノクダルに少女デルアドの意識が流れ込む。
「もう、集中しているのね。
純粋な意識」
少女デルアドは、意識を広げていく。
この魔方陣は、全宇宙と意識を通わせる力を持っている。
中央の下の南北西東の方位が輝きだす。
南北西東、全宇宙が反応している。
(祈りの主。祈りの主の意識)
少女デルアドは、懸命(けんめい)に意識を合わせた。
南閻浮提(なんえんぶだい)の文字が輝(かがや)く。
(あの苔(こけ)のしみているエネルギーの持ち主)
少女デルアドの意識は、深く深く沈んでいく。
『深入無際(じんにゅうむさい)』。こころに声が響く。
少女は、広い人々が祈る部屋の空間に座っていた。
そこにいる人は、みんな一点に集中している。
一番前に、祈りの主らしき人が見える。
静かに祈っている。
正面にも少女のものと同じような魔方陣らしきものがかかっていた。
少女デルアドも意識を集中した。
(祈りの主を悪魔の世界に連れて帰らなくては)
少女デルアドの意識は、頂点に達した。
デルアドは、祈りの主を正面から見ていた。
(少女の顔!)
ご本尊から顔と手が飛び出ようとしている。
裕也は、驚(おどろ)いた。
でも、少女に敵意(てきい)はないが救いの欲求が強く裕也を襲(おそ)った。
裕也は、思わず抵抗した。
少女は、裕也の合掌(がっしょう)する手をつかんだ。
そして、引きずり込もうとした。
裕也は、少女の手がその幼さに似(に)つかわしくないごつごつした働く手だったので、
驚き体の力を入れ、そして力が抜けていく。
裕也は、安らかに静かにご本尊に吸い込まれていった。
つづく。次回(悪魔の祈り(005)ー悪魔の世界ー)
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