ひろひろの生活日記(LIFE Of HIROHIRO)

パソコン講習とソフト開発をしています。自作小説も掲載しています。ネット情報発信基地(上野博隆)Hirotaka Ueno

0314_悪魔の祈り(006)裕也の冒険-悪魔の世界-

2024年03月14日 19時34分55秒 | 裕也・冒険日記(自作小説)

0314_悪魔の祈り(006)裕也の冒険-悪魔の世界-

-はじまりへの問いかけ-

裕也は、魔法陣と掛け軸の説明を受けた。
裕也の曼陀羅みたいなものらしい。
なんとなく似ているが、悪魔の世界の言葉で書かれているので意味は分からない。
裕也は、魔法陣の真ん中に座り、
横の魔法陣に少女デルアドと女王アノクダルが座った。
裕也は、真ん中の『ナム ミュルロドォ イドルハァナムキョ』に向かって
『南無妙法蓮華経』を唱えだした。
この世界を創った主がいるはずだ。
(悪魔の主。出現し賜(たま)え)
一心(いっしん)に祈った。
30分、1時間、1時間半、2時間を祈ったところで返事がした。
(小僧、我に何の用だ)
裕也は、慌(あわ)てずに問い返す。
(悪魔の主ですか?)
(そうだ。私はデリル。悪魔の世界を納める神だ)
(悪魔の世界に表の世界の欲望が流れないと言っています。
 そのため、土地が枯れかかっています。
 何か原因があるのですか?)
(どこから話せばいいのか。
まず、悪魔の世界の成り立ちから説明しよう。
我々は、普通に人間の世界にはびこっていた。
ある時に、
十字架にかけられ昇天された方が出現したとき、
世界を平定(へいてい)したのだ。
世界を平定した者は神に召(め)されて世界の掟(おきて)を更新できる。
悪魔と人の世界を分けた。
地球の裏側の世界を創った。
悪魔は、人間の欲望のエネルギーを食う。
だから、欲望の流れを作った。
今、その流れが途絶(とだ)えようとしている)
裕也は、なんとなく悪魔の世界の生業(なりわい)が理解できた。
(それは、なぜですか?)
悪魔の主にその理由が分かっているのか、裕也には分からなかった。
(神や仏の信力が無くなってきているためだ)
(そう言えば、覚えがある)
イエス様の力が弱まったことを思い出した。
(一人の神の力だけに頼っていてはだめだということが分かった。
欲望を呼び込むには、
悪魔の世界の四か所に信力石(しんりきいし)を埋めないといけない)

(デルアド。広場にある石の所へ案内しなさい)
(はい。裕也。ついてきて)
少女デルアドは、嬉しそうに歩き出した。
裕也は、その後をついて行く。
部屋を出て、階段を降り城を出て、街の中央の広場に来た。
そこには、人の三倍はあろうかと言う石があった。
(それに、祈りを込めて欲しい)
裕也は、迷う。
(悪魔への信仰か?
悪事に加担(かたん)することになるのか。
そんなはずはない。
でも、デルアドやアノクダルは、いい人だ。
悪魔の世界も守りたい。
逆に、それが、人間界を守るっことになるはずだ。
決まった。
全ての者を愛し守る善の意思だ)
裕也は、祈りを込めた。
「南無妙法蓮華経。
ナムミョウホウレンゲキョウ。
…)

石が光だし世界が輝きだす。


つづく。

#裕也の冒険 #自作小説 #悪魔の祈り #裕也 #デルアド #アノクダル

 

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「裕也の冒険」ストーリー2024年3月。今後の話のお題。

2024年03月12日 11時42分15秒 | 裕也・冒険日記(自作小説)

「裕也の冒険」ストーリー2024年3月。001

1)悪魔の世界。
2)もの子のいたずら。
3)罪と罰。
4)コンピューターと人間の脳。
4-1)昔の儀式を使う者。
5)師を守るために。
6)天の子のいたずら。
7)天の子の契約
8)もの子のいたずら再び。
9)体ご本尊
10)安息。

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0313_悪魔の祈り(005)裕也の冒険-悪魔の世界-

2023年08月15日 19時25分10秒 | 裕也・冒険日記(自作小説)

0313_悪魔の祈り(005)裕也の冒険-悪魔の世界-

-悪魔の世界-
裕也は、また、次元を超えて別世界に引き込まれた。
空間は、曼荼羅で違和感なく繋(つな)がっていた。
(空気が少し重い)
少女は少し困っている様子だが、
裕也に、少女の救いへの欲求の気持ちがひしひしと伝わってくる。
「突然引き込んでごめんなさい。祈りの主(しゅ)しゅ さま」
「あなたは、僕に救いを求めているんだね」
「はい。祈りの主」
「僕は、『祈りの主』と言うほど大したものじゃないけど、
出来ることは出来るだけ協力する。
だから、順を追って話してくれますか?
まず、ここはどこですか?」
「あ ぁ あく いや。裕也の世界の裏の世界です」
「悪魔の世界よ」
女王アノクダルが少女デルアドがはっきり言わないので割って入った。
裕也は、はじめて辺りを見た。
真っ白いだけの部屋いた。
裕也の後ろには異世界の曼荼羅。
なんとなく裕也の世界のものと似て文字を綴(つづ)った『雨曼荼羅(あめまんだら)』であった。
当然、異世界の文字で書かれている。
目の前に手をしっかり握っている少女と雰囲気から気品が漂う女性がいた。
「はじめまして、私は愛武 裕也(あいぶ ゆうや)と言います。
南の地球の人間です」
「ごめんなさい。デルアド。裕也。裕也。デルアド。デルアド」
「分かったよ。デルアド。君の名前だね」
少女デルアドは、笑顔になった。
裕也の話す言葉は通じたし相手の言葉も理解できた。
(多分。妖精の守護だな)
裕也は、自身に妖精の力が働いていると思った。
「私は、アノクダルです」
気品ある女性は、そう名乗った。
だが、まだ、裕也を警戒している。
女王であることを隠(かく)していた。
「悪魔の世界と言うのは、ほんとですか?」
裕也は、魔族の王でもある。
悪魔がもつ意味に動揺はしないが、
それが、何か重大な意味をもつものだと思った。
「少女が『祈りの主』と言いましたが、
私の祈りがこの世界にも流れていたのですか?」
「そうそう。苔(こけ)が光るの。
祈りの力。
食べて生きてた」
少女デルアドは、意気込んで話したが思ようにいかない。
「悪魔の世界には、食べ物はないの?」
裕也は、少女の話から察(さっ)して優(やさ)しく尋(たず)ねる。
「私が説明するわ。
悪魔の世界は、
地球の欲望をエネルギー源として成り立っています。
エネルギーは、領主、大地、民へと流れます。
ここの植物は地球の欲望を吸収して育つていました。
だが、今、この世界は崩壊(ほうかい)しかけています。
何故かは分からないですが、地球の欲望がこの世界に流れてこないのです。
植物は枯(かれ)かかっています。
今や。裕也。あなたの祈りのエネルギーだけが頼りなのです。
そうそう、この世界は、裕也の世界の裏の世界です」
女王アノクダルは、ざっと説明した。
「私が呼ばれた大体の理由とこの世界が直面している危機は理解しました」
裕也は、冷静に答えた。そして、
「では、祈ってみましょうか」
裕也は、少女デルアドに誘(さそ)いかける。

つづく。次回(悪魔の祈り(006)ーはじまりへの問いかけー)

#裕也の冒険 #自作小説 #悪魔の祈り #裕也 #デルアド #アノクダル

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0312_悪魔の祈り(004)裕也の冒険-意識の魔方陣-

2023年03月13日 10時53分16秒 | 裕也・冒険日記(自作小説)

0312_悪魔の祈り(004)裕也の冒険-意識の魔方陣-

-意識の魔方陣-

女王アノクダルと少女デルアドは、書庫の部屋を出て階段を昇っていく。
1階に出た。
左の階段の塔に向かう。
この城には、3つの塔がある。
左の塔は、各階を移動するための階段がある塔である。
3つの塔は、別々のようであるが内部で繋がっている。
左の塔を上に上(のぼ)った。
5階の城の中心の階についた。
2人は、中央の階(かい)の門を潜(くぐ)った。
一つの扉が中央の塔に出現した。
他には何もない真っ白な階層(かいそう)である。
「ここが、召喚(しょうかん)のへやですか?」
少女デルアドは、ワクワクしている。
「そうです」
女王アノクダルは、厳(おごそ)かに答えた。
2人は、そっと扉を開けた。
中も真っ白いだけの部屋である。
正面の奥に、掛け軸をかける長方形の扉のついた棚(たな)がある。
2人は、その正面に歩み寄った。
女王アノクダルは、ちょうど正面で座って祈る位置に指で床をなぞる。
すると床に緑の線が現れた。
少女デルアドは、興味深げに見ていた。
「次元固定の魔方陣よ。
別の世界に迷い込むといけないから、
この部屋の次元に体の存在を固定する座席(ざせき)の魔方陣」
「ふぅーん」
少女デルアドは、意味は深く分からなかったが感心した。
女王アノクダルは、魔方陣の中心に『デレゲェル カイグィ』と書いた。
『悪魔の世界』的な意味であるらしい。
「よし、固定できたわ」
意識の魔方陣を描いた紙を棚にかけた。
「ここに座り、意識を集中して意識の魔方陣の中央の文字『ナム ミュルロドォ イドルハァナムキョ』を唱えるのよ。
そして、祈りの主に意識を合わせていくの」
少女デルアドは、その座席の魔方陣の真ん中のちょこんと座った。
女王アノクダルは、そのよこに小さく座席の魔方陣を描いて座った。
そして、少女デルアドが座っている魔方陣とつなぐ。
女王アノクダルに少女デルアドの意識が流れ込む。
「もう、集中しているのね。
純粋な意識」
少女デルアドは、意識を広げていく。
この魔方陣は、全宇宙と意識を通わせる力を持っている。
中央の下の南北西東の方位が輝きだす。
南北西東、全宇宙が反応している。
(祈りの主。祈りの主の意識)
少女デルアドは、懸命(けんめい)に意識を合わせた。
南閻浮提(なんえんぶだい)の文字が輝(かがや)く。
(あの苔(こけ)のしみているエネルギーの持ち主)
少女デルアドの意識は、深く深く沈んでいく。
『深入無際(じんにゅうむさい)』。こころに声が響く。
少女は、広い人々が祈る部屋の空間に座っていた。

そこにいる人は、みんな一点に集中している。
一番前に、祈りの主らしき人が見える。
静かに祈っている。
正面にも少女のものと同じような魔方陣らしきものがかかっていた。
少女デルアドも意識を集中した。
(祈りの主を悪魔の世界に連れて帰らなくては)
少女デルアドの意識は、頂点に達した。
デルアドは、祈りの主を正面から見ていた。
(少女の顔!)
ご本尊から顔と手が飛び出ようとしている。
裕也は、驚(おどろ)いた。
でも、少女に敵意(てきい)はないが救いの欲求が強く裕也を襲(おそ)った。
裕也は、思わず抵抗した。
少女は、裕也の合掌(がっしょう)する手をつかんだ。
そして、引きずり込もうとした。
裕也は、少女の手がその幼さに似(に)つかわしくないごつごつした働く手だったので、
驚き体の力を入れ、そして力が抜けていく。
裕也は、安らかに静かにご本尊に吸い込まれていった。

つづく。次回(悪魔の祈り(005)ー悪魔の世界ー)

#裕也の冒険 #自作小説 #悪魔の祈り #裕也 #デルアド #アノクダル

 

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0311_悪魔の祈り(003)裕也の冒険-南国の老女②-

2022年11月16日 15時28分04秒 | 裕也・冒険日記(自作小説)

0311_悪魔の祈り(003)裕也の冒険-南国の老女②-

-南国の老女②-

部屋の中には、天井まで届く本棚が所狭(ところせま)しと並んでいる。
梯子(はしご)が所々(ところどころ)かかっている。
古びた木と紙の香り。
『もほう』と香(かお)ってくる。
少女デルアドは、最初に目に入った本を眺(なが)めた。
「もっと普通に字が分かると思ってたのに。
 分からない。
 どうしよう?」
少女デルアドは、方々(ほうぼう)の本棚を見て回る。
悪魔の世界に学校があるわけではない。
地位や能力で応じた知識がそなわる。
一通り本棚を見た。
「何か奥の大きな本棚の後ろに空間がる」
少女デルアドは、後ろを覗いて見る。
奥に小さな本棚があった。
(なぜか読める気がする)
読めると言うよりその本棚は意識を発していた。
その中の一冊が『最初に読む本』と言う題に思えた。
小さな本である。
取り出し開いてみる。
「ピョン」
その中から手のひらぐらいの小さな妖精が現れた。

「はじめまして、
 私は、書庫の案内人です」
背中に透明(とうめい)な羽が生えた膝上丈(ひざうえたけ)のワンピースを着た女の子が答える。
「妖精さん。
 どうしたら良いか分からない。
 字が読めないの」
「お安い御用」
妖精は、手に持った魔法の棒を一振りして、
少女の米神(こめかみ)に当てた。
頭に凄(すご)い文字形と読みの知識と意味の知識が流れ込む。
(字が読める)
少女デルアドは、次のページを捲(めく)った。
そこには、本の棚の案内が書かれていた。
(たぶん、召喚するには、魔法の絵を描くのね。
 あ!魔法陣)
本棚の四角い絵と中に文字が書いてある。
魔法陣の文字を探した。
中央の棚を形どった長方形の中に魔法陣と言う文字を見つけた。
別のページには、魔法陣の題で内訳が詳しく書いてある。
1段目から2段目は、防御(結界、広域、盾、闇)、
3段目から4段目は、攻撃(破壊、広域、槍、光)、
5段目から6段目は、召喚(魔物、神、人、異世界)、
7段目から8段目は、結識(けっしき)(神、鬼、悪魔、人、異世界、宇宙の主)
とある。
少女デルアドは、中央の本棚の所に行くことにした。
中央の本棚につく、その本棚の場所は少し明るく見えた。
(どの本が良いか分からない)
各段に見出しがついている。
少女デルアドは、とりあえず、下の段の結識(けっしき)と書いた段の本を読んでみることにした。
召喚と同じように魔物や神の名前がある。
ざっと題名を読んでいった。
一つだけ金のカバーで覆(おお)われた違う本がある。
『宇宙の主(あるじ)』と書いてある。
その本を開いて読むことにした。
中に祈りの主(しゅ)とある。
(これだぁ)
少女デルアドは、夢中で読み進める。
三界の王であることを望み、全宇宙の幸福を祈りし者が1000年に一度現れる。
祈りの主は、南の異界にいて幸福を祈り、望(のぞ)みを叶える。
祈りの主と意識を通じるには、
意識の魔法陣を描いて、
それに向かい祈るべきである。
無意識に成れたなら、それは彼の意識の中に居る。
と書いてあった。
その後に意識の魔法陣の絵と説明が書いてあるページを見つけた。
場所は、召喚の部屋に飾ることと書いてある。
(難しそう。
 そうだ、さっきの叔母(おばあ)さんに聞こう)
そう思い、振(ふ)り返ると奇麗(きれい)な女性が後ろに立っていた。
「すいません」
少女デルアドは、不意に謝った。
「いいのよ。お嬢ちゃん。
 珍しいもの見てるわね」
「召喚したい人がいるの?」
「私は、クィン アノクダル。ここの女王よ」
「勝手に入ってすみません。
 お婆さんに鍵をもらって」
「あれ、私よ。
 命の苔をありがとう」
「え!
 いえいえ。とんでもないです。
 本当に?
 お婆さんですか?」
「そうよ。おかげで、元気が出たわ」
御婆さんが若返ったと言うより、元の姿を現しただけかもしれない。
「この魔法陣を描けますか?」
「意識の魔法陣ね。
 どれどれ」
女王は、手を合わせ、そして腕を開いた。
開いた手の間には、紙が現われ、
それを床に置き、
そして、女王アノクダルは、人指(ひとさ)し指を噛んだ。
指から血が滲(にじ)んだ。
本のぺーじを見ながら指を紙に当て描き始める。
「中央に、南の宇宙の不可思議な法。蓮の華を咲かす心の軌跡」
(ナ スゥ ミル フィユ レッキ ニュオ)
「上の段から、五人の世尊」
(悪魔の世界の5人の世に尊ばれた賢者でいいのかしら)
「次の段に、海陸天の神」
(この地を司る神の名前ね)
「その次の段に、十色の鬼」
(青、桃、黒、柿、白、緑、黄、赤、茶、紫でいいのよね)
「その次の段に、九(ここのつ)の龍の名」
「光と闇の神」
(言い伝えの名前ね)
「四隅に四つの柱の主」
(これは、名前が書いてある)
「中央の下に南北西東の方位を書く」
「左下に祈りの作用として、
 『身に神仏魔人ありと悟りて善と一致するなり』
 としたため、
 心を込めて『我心本妙』と記すこと」
「これで書けた」
もう一度、良く魔法陣を見た。
「完成」

それでは、召喚の部屋に行きましょう。
女王アノクダルは、本と意識の魔法陣を描いた紙をもって、
少女デルアドを連れて書庫をでた。

つづく。次回(悪魔の祈り)


#裕也の冒険 #自作小説 #悪魔の祈り #裕也 #デルアド #南国の老女

 

 

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0310_悪魔の祈り(002)裕也の冒険-南国の老女①-

2022年10月15日 20時05分10秒 | 裕也・冒険日記(自作小説)

0310_悪魔の祈り(002)裕也の冒険-南国の老女①-


-南国の老女①-

少女デルアドは、翌朝早くから苔(こけ)を集めた。
手さげの籠(かご)に山盛りに摘(つ)んだ。
そして、小高い丘の領主の古城へ向かう。
今日は、お婆(おばば)のところには寄(よ)らない。
町を突っ切り、はじめて少女は城を訪(たず)ねた。
石積みの老壁。堀(ほり)に木の橋が架(か)かっている。
壁や橋は、ところどころ欠けている。
少女は、周りを良く見渡した。
城に入るにはこの橋を渡るしかない。 
衛兵(えいへい)らしき者は誰もいない。
(この国は、朽(く)ち果てようとしている)
自分の意思か?誰かが囁(ささや)く。
そう人々に思わせるような城の姿である。
もともと、城を訪(おとず)れるものはいない。
領主の持つ意義(いぎ)はエネルギーの流れにある。
土地のエネルギーは、自(おの)ずと領主に流れ支配される。そして、民へ。
歴史の上で、長い間この国を攻めてくる者もいない。
民を守るための兵士が居るわけではないのである。

少女デルアドは、橋を恐る恐るわたる。
「ギィイ。ギィイ」
足の下の木の板が軋(きし)む。
門の前までたどり着いた。
木で出来ている大きな両開きの門が聳(そび)えている。
声を出して呼んでみようかと思ったが、押しとどめた。
「お邪魔します」と聞こえないような小声で言うと扉を押してみた。
「ギィィィィ」(おぉぉ開く!)
少し中に動いた。
(もう少し押してみよう)
少女デルアドは、自分の体が城に入れるくらい扉を押し開けた。
「ギィィィィィ」
ズズゥーーーン。
中には、目の前に塔が三つ聳(そび)え立っている。
くるっと頭が回った気がした。
その手前には、土台の石創りの屋敷。
中央うにぽっかり空いた入口がある。
その前に老婆が一人、背中を丸めてたたずんでいる。
古びたボロボロの布(ぬの)を纏(まと)った衣服。
少し疲れて黒い影に沈んでいるように見えた。

少女デルアドは、恐る恐る喉(のど)の奥から声を絞り出した。
「す。す。すみません。お婆(ばあ)さんは、ここの領主ですか?」
「えへへへ。へ。
 ごほぉん。
 そんな大層な者に見えるかい。
 単なるこの城に使える召使だよ」
老婆は、心の底から力を振り絞り堂々と言い放つ。

「領主様にお取次ぎ願います。
 命の苔を献上(けんじょう)しに参りました」
少女デルアドは、恭(うやうや)しく言った。
本当は、祈りのエネルギーを宿(やど)した苔である。
少女は、適度に献上するのに見合う呼び名をつけた。

「その贈り物には、何か目的があるのかのう?」
老婆は、人が訪ねてきたのが嬉しいのか、何か嬉しそうである。

「私を書庫に入てください。
 どうしても読まないといけない本があります」
そう聞くと老婆は、さっと少女の手から籠を取り上げた。
じっと見て、匂いを嗅(か)いだ。
(毒ではなさそうだ)
「その苔は、私がもらっとこかの。
 ほら、書庫の鍵じゃ。
 ほれほれ」
老婆は、何をしに来たのか見透かしていたのか、平然としている。
そして、苔を摘まみ口に運んだ。
少し老婆の顔に光が差した。
(これは、良い)
そして、老婆は石創りの屋敷の奥にある下へ降りる階段を指さした。

「お婆様(おばあさま)。ありがとう」
そう言うと、辺りを見渡してから、下へ降りる階段に向かった。
少女デルアドは、書庫にさえ入れれば満足なのである。
(なにかと文句(もんく)を言われない)
領主に知られない方が得策かもしれないと思った。

「最下位の部屋だよ」
老婆は、言い捨てる。

少女は、歩き出した。

暫くして、老婆もそっと少女の後ろについて行く。

少女は、気付く様子もなく、ゆっくり用心して階段を降りていく。

階段は、下に行くほど暗くなる。
だが、不思議と壁の蝋燭(ろうそく)の灯(あか)りが順に燃え周(まわ)りを照らす。

最後まで降り切った。
そこには、鬼の扉があった。
(書庫の扉!)
それは、鉄で出来ている扉である。
頂点に角のある黒い鬼の頭があしらわれている。
そこから黒い吐息が左右に二つずつ吐き出ている。
枠の下側に燃える太陽と金環の太陽。
華の弦が伸びている。

二つに分かれた扉は、右左の脳を表している。
(神経の模倣(もほう)?)
(知識?)
左の扉には、数字と言葉の塔が描かれている。論理の塔。
右の扉には、音楽と図形が街を形どっている。創造の都市。

扉は繋がって、宇宙を構築する。
それが、脳の中にある。

右の扉には鍵穴があった。

少女デルアドは、恐る恐る老婆からもらった鍵を刺す。
「ギュギュギュギュ」
回してみる。
「ゴォォォン。ガシャン」
扉が動く。

つづく。次回(悪魔の祈り(003)-南国の老女②-)

#裕也の冒険 #自作小説 #悪魔の祈り #裕也 #デルアド #南国の老女

※旧話は、随時、アルファポリスに掲載しています。
 イラストは、少しか修正できませんでした。機会があれば色を塗ります。

 

 

 

 

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0309_悪魔の祈り(001)裕也の冒険-悪魔の少女-

2022年05月06日 22時43分21秒 | 裕也・冒険日記(自作小説)

0309_悪魔の祈り(001)裕也の冒険-悪魔の少女-


-悪魔の少女-

この土地の太陽は黒い金環(きんかん)である。
ここは、地球の裏側の世界。

夜は、闇に包まれる。
本来の夜を照らす月に力がなく暗黒の世界である。
昼は、辛(かろ)うじて明るい。
独(ひと)りの少女が、食べ物を探して山の崖(がけ)をうろついる。
この山には、森は無い。
街に果物(くだもの)の木があるが、
植物は全て死滅(しめつ)しかかっている。

不思議なエネルギーが伝わってくる。
「誰かが祈っている」
少女にもこのエネルギーのことが少し分かってきた。
何者かがエネルギーを出して、この次元の宇宙に伝えているのである。
何のため祈っているかは分からない。

過(か)ってここの植物は地球の欲望を吸収して育つていた。
いつからか欲望の吸収が上手(うま)くいかなくなった。

この世界の果実(かじつ)は枯れだしている。
「きっと、月が力を失(うしな)った所為(せい)だわ」
岩肌に光っているものがある。
苔(こけ)である。
不可思議な祈りを吸収しているらしい。
「今、命を繋(つな)いでいる食べ物は、この苔だけ」
少女は岩に生えている苔を削(けず)った。
少女の名は『デルアド』。
この世界は、悪魔の住む世界。
少女は、悪魔の子である。
悪魔に子供が出来るのは珍(めずら)しいことである。

少女デルアドは、苔を積み終わってふと思う。
(このエネルギーの主(あるじ)とあえる方法はあるのだろうか?
 この主ならこの世界を何とか出来るのではないか)
少女デルアドは、そう考えるようになった。
そして、とうとう意を決した。
「そうだ。お婆(ばば)に聞いてみよ」
その足で街のお婆の家に向かった。
少女の村と違い街の大通りに住んでいる。
街一番の物知りである。
少女は、しばしば、話を聞きに行く。

しばらく歩き家の前に着く。
入口は、布が吊(つ)り下げられて仕切(しき)ってある。
「お婆。入るよ」
少女は、布を押し上げ中に入る。
お婆は、嬉しそうに少女デルアドを迎(むか)えた。
「お婆(ばば)。苔(こけ)だよ」

「また、お前かい。そうかぃ。うぅぅ」
歳のせいか悪態をつきかけるが、すんでのところで飲み込んだ。
(いかんいかん)
「うん。
 ありがとう。
 そうそう。
 この苔は、力が出るね」

「たぶん。祈(いの)りのエネルギーを吸ってるから」
少女デルアドは、答えたが、すぐ口ごもる。
お婆は、何かを察(さっ)した。
「デルアド。
 何か聞きたいことがあるんだろ」
少女デルアドは、正直に尋(たず)ねてみることにした。
「どうしたらこのエネルギーの主(あるじ)とあえるの?
 何か方法はあるの?」
「苔にエネルギーを与えてる主(ぬし)かい?」
「そう」

「そのエネルギーの主(ぬし)は、仏様だね。
 仏の血を飲めば魔力が増すと言うよ。
 そやつを食らいたいのかい?」
「うぅぅ」
「あははは。
 冗談だよ。
 それはさておき。
 呼び出すには、召喚(しょうかん)の儀式を行えばいいのさ。
 異世界の者だって、
 なんだって呼び出せるそうだよ」
「それは、どんな儀式(ぎしき)ですか?」
「私は知らないね。
 ただ、お城の本棚に召喚(しょうかん)の儀式を記(しる)した本があると言う」
「ほんとうに?」
「わたしゃ。昔、城につとめてたさ。
 書斎(しょさい)には、入ったことはないが。
 お城の書斎は地下にあるそうだよ。
 私が教えれるのは、ここまでだ」

この街を見下ろす丘に領主の古城がある。

少女は、手に3杯(はい)苔をとり皿にのせた。
それをお婆に渡して出て行った。
「ありがとうよ」
お婆は、何か嬉(うれ)しそうである。

つづく。次回(悪魔の祈り(002)-悪魔の少女-)

#裕也の冒険 #自作小説 #悪魔の祈り #裕也 #デルアド

※何かあれば、お知らせください。つぃでもOKです。

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0308_西の地球と神様の約束(006)裕也の冒険-ひろ子の約束-

2022年05月04日 20時57分02秒 | 裕也・冒険日記(自作小説)

0308_西の地球と神様の約束(006)裕也の冒険-ひろ子の約束-


--ひろ子の約束--

西の地球は、先祖の星である。
過去の文明がそのまま残っている。
そして、人が神仏の約束を守り実行する場所である。
複雑に世界の文化が入り混じる場所である。
裕也は、近代のコンピュータを神仏の世界に持ち込んだ。(閻魔帳システム)。
しかし、西の地球の民は、そう言うことには疎(うと)い。
普通の人にもコンピュータを取り入れたかった。
それは、未来の南の地球のためである。
何故なら、西は先祖であるが、未来に生まれ来る命でもあるからである。
いろいろな書物に約束が説かれている。
裕也は、ありったけ思いつく古代文明の命と文化を呼び出す。
裕也は、口ずさむ。
「今、古代の神々や仏が約束せしことを実現せん」
続ける。
「宇宙に眠れるもの、今、目覚めん。
 古(いにしえ)に約束せし者。
 蘇(よみがえ)らん」
裕也の力は、時空、時間と空間を超えていた。
両手を虚空(こくう)にかざし力を込める。
生命や文化(建物や都市や川、山)が光の球となり現れだす。
そして、姿になる。
動物たちも生まれ来る。

信仰の福徳は、先祖7代、子7代に渡る。
「親子七代の義(ぎ)」

裕也は、西の地球に世界中を創造したのである。
「一応、古(いにしえ)の徹約(てつやく)は守られた」
裕也の口から言葉がついて出た。
神仏に告げたのかもしれない。
今度は、ひろ子が役目を果たす番である。
「口結び子ちゃん。頭をだして」
「はい」
ひろ子は、ためらわずに頭を前に出した。
「知識を入れるからね」
裕也はひろ子ちゃんの両のこめかみに人差し指を当てた。
知識を呼び出して指からひろ子ちゃんの脳に流し込む。
(知識は、宇宙にある)人知れず声がする。
裕也は、コンピュータの必要な知識を流し込んだ。
ひろ子ちゃんは、数分、目をしばつかせた。
力が尽(つ)きる感覚がした。
裕也は、指をひろ子のこめかみから離して声をかける。
「大丈夫?」
「はい」
ひろ子は、案外へいきで返事した。
そして、次に水子を呼ぶ。
「コンピュータの出来る水子ちゃん。おいで」
「はー-ぃ」
声がして数人の水子が姿を現す。
水子は、南の地球の世界中の国にコンピュータをばらまいてから、
コンピュータのシステムの開発の勉強をしていた。
作業をする場がお寺のボロ屋では、バツが悪いと思った。
いろんな本もパソコンも電気設備のある作業する場所も必要だと思った。
「家は、俺の実家と同じで良いよね」
裕也は実家の設備をコピーする。
本当は、神様でも南の地球の知識や物を利用してコピーするには、制約と代価が必要である。
制約は、営利が主な目的ではないこと。代価は、福運である。
営利とは、簡単に例示すると物をコピーして売るとかです。
コンピュータ、一(ひと)つをとっても製造番号が振(ふ)られている。
神様がコピーすると欠番が出るそうである。
本当にそうなっているかは、裕也も知らない。
メーカーに福運(ふくうん)がつくのは、必然(ひつぜん)である。

「ひろ子さん。これで働けるね」
「水子ちゃんも宜(よろ)しくね。
 ひろひろシステムで働いてね」
それは、裕也の会社の名前である。
「はい」
水子は、元気の良い活発そうな子が来た。
「よろしく。水子ちゃん」
ひろ子も丁寧に挨拶した。
「はいな」
水子が返事する。

裕也は、少しひろ子の作業を見届け南の地球の部屋に戻った。

口結び子のひろ子は、裕也が帰ってからも
一生懸命に頑張った。
噂(うわさ)を聞いて同じ念仏の子もはたまた、南無妙法蓮華経の子もキリスト教の子、その他の宗教の興味のある子が集まって来た。

『パソコン教室とシステム開発』
『選挙のサイト』
『お店のサイトの作成』
『行政の業務のサイトの作成』
仕事は山積みである。
南の地球の未来でもあるのである。
システム化を進めなければならない。
W.COM(ワールド・エレクトロニクス・カンパニー)からも数名協力しに来てもらった。

パソコンを習いに多くの子の申し込みがあった。
講師は、水子が務めた。
水子は、西の地球の大学の講師にも呼ばれた。

人が多くなり隣(となり)の空き地にマンションを建てた。
作業するためにビルも建てた。
西では、福運があれば、案外と簡単である。
それは、裕也がした。
裕也の住んでる街のマンションやビルを真似(まね)たのである。

そうして西の地球の出来事は一段落した。
今もシステム化は続けられている。
西の地球(西国浄土)も未来の役目を果たし出した。

西の地球と神様の約束(完)

つづく。次回(悪魔の祈り(001))

#裕也の冒険 #自作小説 #西の地球と神様の約束 #裕也

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0307_西の地球と神様の約束(005)裕也の冒険-祝宴-

2022年03月13日 20時10分00秒 | 裕也・冒険日記(自作小説)

0307_西の地球と神様の約束(005)裕也の冒険-祝宴-


--祝宴--
次の料理は、まだ来ない。
ひろ子は、鯛の塩焼きに手を伸ばした。
目の玉が白く光っている。
恐る恐る手を伸ばす。
「お取りしましょうか?」
百が声をかける。
「あ!自分で取ってみます」
ひろ子は取り箸(ばし)を手に持った。
不器用にぎこちない。
遠慮したのか鯛の塩焼きの背びれをつつく。
竜の背の様に海の波を切っていたのだろう。
悠然(ゆうぜん)としている。
背びれをとって皿に乗せる。
(それは、食べれないよ)筆者の声。

自分の席に戻りしゃぶりついた。
(身がない)
しゃぶる。
皆は、その様子を黙って見守っていた。
「鯛の胸の辺りを取って良いんですよ」
裕也は、思わず声をかけた。
「やっぱり、取りましょう」
百は、押し付けてはいけないと思ったが、
お皿を取り鯛の胸の部分を取ってあげた。

そして、殻壺(がらつぼ)を持ってくる。
「ガシガシ。バリバリ」
ひろ子は、背びれを嚙み潰(つぶ)して食べた。
「ふぅぅ。美味しい」
そして、皿に乗せてくれた鯛の胸の身を食べる。
笑顔がこぼれる。
「やっぱり、身の方が美味しでしょ」
裕也は、遠慮しないように声をかけた。

「うん」返事はしたが、ほっぺを膨らましていた。

阿弥陀様は、料理の影を箸で掬(すく)っている。
そして、口に運ぶ。
上品位に飲み込んだ。
皿の料理は、枯れて萎(しぼ)んだ。

裕也も不思議そう。
見ちゃいけないと思ったけど、横目で様子を見ていた。
(何でも供養ですね)
裕也は、それを心の内に終(しま)った。

次の料理が来た。
「鯛の甘酒(あまざけ)みそ漬(つ)け焼きです。
 どうぞ召し上がりなさいませ」
薄い青の波の模様の少し窪(くぼ)んだ四角い陶磁器(とうじき)の器(うつわ)に盛られている。
(器がきれい)
味噌と甘酒の香りがする。

「鯛尽(たいづ)くしなのでしょうか?」
(やっぱり、お祝い事には鯛ですかね)
裕也は、人が幸せになることが嬉しかった。
一人の人の幸せは、皆に波及(はきゅう)する。
一人の不幸は、逆も真である。

「味噌と甘酒ですね。
 混ぜてある木の芽のみじん切りもアクセントになっていますね」
裕也は、百に話しかける。
「きゃぁ。凄い。美味しい」
「ベキべき」
ひろ子は横に添(そ)えてある半月切りのかぶに桜の花の塩漬けをあえたものを食べている。


次の料理が出て来た。
「茶碗蒸しです。
 鯛の白だしを使っています」
海老と鶏肉と蒲鉾(かまぼこ)と銀杏(ぎんなん)と三つ葉が覗(のぞ)いている。
「美味しそう」
ひろ子は、宝物を大切に取り出すように食べている。
「卵と一緒に食べるんだよ」
裕也は、要(い)らない世話を焼いた。
「卵も美味しい。
 いままで、味がしなかったから、
 何も食べれなかった」
そして、泣き出した。


「お嬢さん。泣くのは後回しだよ。
 料理は、まだ続くよ」
百は、泣き止(や)まそうとして強く言ってしまった。
それが、逆に功をそうした。
ひろ子の涙は、止まった。
「次は、鯛の潮汁(うしおじる)よ」
百は、今度は、おもっきり優しく言った。
「わぁぁ。お吸い物だ。
 澄んでる。
 川の水より澄んでる」
ひろ子にとって驚きと喜びの連続である。

「最後に煮ものです」
人参、大根、ゴボウ、蓮根(レンコン)、蒟蒻(こんにゃく)さやえんどうが煮てある。
人参の赤が食欲を誘う。
裕也は、人参が好きであった。
「もうお腹が一杯です」
ひろ子が音をあげる。

「しばらく、食べれないかもしれませんよ。
 頑張って食べなさい」
百が言う。

ひろ子は、一生懸命に食べた。

最後に果物(くだもの)が出た。
「本当に最後よ。
 果物よ」

柿が皮をむいて綺麗(きれい)に種を取って、4つ切りにされて出てきた。
楊枝(ようじ)がついている。

阿弥陀様もお食事が終わったようである。

食事も終わり、裕也は、ひろ子の横に座った。
「ひろ子ちゃんにお願いしたいことがあります。
 私のために、西の地球にシステムの会社をつくってくれませんか?」

どこからともなく、水子も現れた。

つづく。 次回(西の地球と神様の約束(006)ーひろ子の約束-)


#裕也の冒険 #自作小説 #西の地球と神様の約束 #裕也 #阿弥陀如来の帰依 #祝宴

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0306_西の地球と神様の約束(004)裕也の冒険-阿弥陀如来の帰依-

2022年01月17日 18時09分26秒 | 裕也・冒険日記(自作小説)

0306_西の地球と神様の約束(004)裕也の冒険-阿弥陀如来の帰依-


--阿弥陀如来(あみだにょうらい)の帰依--

古びた平屋(ひらや)のお堂に食事がテーブルに用意されていた。
一人の女性が給仕(きゅうじ)をしている。
女の子は、恐る恐る尋ねる。
「どちら様ですか?」
「鬼子母神の百(もも)です。
 阿弥陀様のお祝いに駆けつけました」
そう言うと百は、女の子に一礼して、
阿弥陀様たちの方を向いた。
「法華経への帰依。おめでとうございます。
 これで、過去は確定されました。
 これは心ばかしのお祝いです。
 どうぞ、お座りに成りませ」
細長い座卓(ざたく)が3列用意されていた。
そして、座布団が置かれていた。
阿弥陀様、女の子、裕也の席が漏(も)れることなく設(もう)けられている。
各テーブルの真ん中に大皿があり、立派な尾頭(おかしら)付きの鯛の塩焼きが乗っていた。
(お祝いに相応(ふさわ)しい。うれしい)
女の子は嬉しくなった。
(こんなの食べたことがない)

一同は席に着いた。
緑の座布団がフカフカである。
裕也も、女の子の味覚が戻ったことを切実に願った。

百さんは、忙しく料理を運んでいた。
暫くして、運び終わったようである。
テーブルの真中の鯛の塩焼きは言うまでもない。

他の料理は、おりおり話します。
「これは、お祝い料理です。
 どうぞゆっくりお食べください。
 あ!その前に裕也さんのお仕事が一つあります。
 この宴を催(もよお)す起因(きいん)を作った女の子に、
 褒美(ほうび)として記念に名前をつけてください」
裕也は、少し迷った。
女の子の味覚が本当に戻ったか確かめたかった。
迷ったが裕也は、やっぱり確かめずにはいられなかった。
「お嬢さん。鯛を食べてみて」
テーブルの真ん中の鯛をさした。
阿弥陀様は、気を使い鯛の腹の辺(あた)りの肉をつまみ皿にとった。
そして、女の子に渡した。

「恐れ多いです」

だが、嬉しそうである。
女の子は、不器用に箸(はし)をつかい食べようとする。
落としそうになり、慌てて口を運ぶ。
「もぐ。もぐ。
 わぁー----ぁ。
 美味しいです。
 美味しい味がしまう。
 少し塩(しお)い」

少女は口を結んだ。
その瞬間、裕也に女の子の名前が浮かんだ。
「彼女の名前は、
 口結び子。
 真実に口を結ぶ子。
 もう、口を汚さないようにしてね。

 もう一度、言います。
 彼女の名は、
 口結び子。ひろ子。
 とします」

阿弥陀様は、信徒が誹謗した罪を被っていたのかもしれない。
しかし、今帰依した時に阿弥陀様を信じてたものすべて帰依したのである。
功徳で誹謗(ひぼう)の罪は、許されたのである。

つづく。 次回(西の地球と神様の約束(005)-祝宴-)

 
#裕也の冒険 #自作小説 #西の地球と神様の約束 #裕也 #阿弥陀如来の帰依

 

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