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イマを見つめて
提言します

湯川遥菜さんを弁護する

2015年02月05日 02時00分00秒 | 社会・経済
ISILによって日本人人質二名の生命が奪われたが、世間の反応が大きく違って感じる。後藤健二さんについては同情的な発言が多いのに対して、湯川遥菜さんには批判的な発言が多く感じられる。中には「危ない目に遭っていながら何度もシリアへ行って馬鹿じゃないの?」と嘲りすらある。
原因は後藤さんと湯川さんの出会いのきっかけ報道にありそうだ。
湯川遥菜さんのブログによると、2014年4月、民間軍事会社をしていた湯川さんがシリアに渡航して反政府派武装組織「自由シリア軍」に拘束されたとき、後藤さんは現地司令部の幹部の通訳を頼まれ、湯川さんと初めて会った。湯川さんの解放後、後藤さんはイラクなどで一緒に行動していた。その後、再びシリアに旅立った湯川さんを、後藤さんは「とめられなかった」と悔やんでいた。(後藤健二さん、「イスラム国」拘束から解放交渉までの経緯【まとめ】より http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/31/goto-kenji-how-has-he-treated_n_6586996.html)
自由シリア軍に拘束されたことがあるのに、なんでその後ものこのことシリアへ行くの?ということだろう。
だが、この意見を言う人の多数は、シリア情勢をあまり理解していない方が多いようだ。自由シリア軍とISIL(いわゆるイスラム国)を似たようなものと混同している。自由シリア軍が「反政府派武装組織」なんておどろおどろしい肩書で称されるからテロリストと混同しても仕方ないかもしれないが。
現在のシリア政府はアサド政権という(もう全土を掌握してないが)。ところが欧米は、この政権を好ましく見ていない。かつてのイラクのフセイン政権を敵視していたのと同様だ。そこでアサド政権に反抗する勢力に援助している。それが自由シリア軍やクルド人部隊だ。アメリカは最新式の武器を無償供与したり軍事訓練を指導したりしている。自由シリア軍にとってアメリカは大切なスポンサーでありアメリカの同盟国である日本も友好的国家なのだ。まちがっても日本人を拘束して殺したりすることはない。ではなぜ湯川遥菜さんが捕まったかといえば、紛争地域に似つかわしくない人物がうろついていたから。自称日本人といっているがアラビア語はともかく英語すら満足に話せない。スパイかもしれないと自由シリア軍はむしろ困っていた。そこで既知の日本人である後藤さんに真相を聞き出すように頼んだ。そういういきさつだから、自由シリア軍に拘束されてからも湯川遥菜さんは生命の危険など一度も感じたことはなかったはずだ。むしろ後藤さんの「通訳」によって自由シリア軍兵士と意志疎通できてからは友好的関係が築かれたのだろう。前述のように自由シリア軍にとって大切なスポンサーであるアメリカの同盟国である日本人なのだから。いっぽう民間軍事会社をしていた湯川遥菜さんにとって自由シリア軍は紛争地域でバリバリに戦闘しているプロだ。こんな大切なコネはなかっただろう。後藤さんの後悔と責任感は、湯川さんに自由シリア軍を「紹介」してしまったことによるものだろう。以上のことから湯川遥菜さんにとって「一度あぶない目に遭いながらも、またのこのことシリアへ行って捕まった……」という批判は当てはまらないように思う。ただしISILの恐ろしさを十分に認識していなかった不勉強さは残念と思うが……。