ただ実際には、こんな医師はいないだろうと思うくらい誠実な医師のイメージを、コトー先生は、最初から確立させている脚本なので、吉岡くんは、「実際に動いてセリフにしてみると、恥ずかしくなってしまうようなこともある。」とオフィシャルページのインタビューで語っていた。確かにセリフだけ思い返すとそうなのだが、歯の浮いたように絶対聞こえないように語り、見せるのが、吉岡くんの演技力なのである。
看護婦の彩佳(柴咲コウ)「どうしてこの島にやってきたんですか?先生の腕がもったいない気がして。」に「ありがとう、彩佳さん、でもそれは逆だよ。僕には、この島がもったいない気がするんだよ。」なんて返すセリフが、クサク聞こえないように言えるのは、吉岡コトーだから。
吉岡くん自身は、コトー先生を熱血漢のように演じたくないといポリシーを語っていた。抑えた演技から、コトー先生の人間性がにじみ出る。彼の優しい声がまたいいんだなあ。共演者の筧利夫さんによると、「吉岡君は、セリフの音程の幅が広い方です。低いところから…普通なら“ミ” の音で出るところが“ソ”の音から始まったり。それが意表をついているので、心に刺さるんですね。基本的に役者は、同じセリフを言わせれば、だいたい同じような音程から始まってしまうので、予定調和になりがち。多分、吉岡君自身が意識して音程を変えているのではないんだと思うけど、人の心をつらぬく “超音波”を持つ人ですね」(番組オフィシャルページのインタビューより)
人を安心させる声、語りというのがあるものなんだと思わせる。吉岡コトー先生に「大丈夫ですよ」と声をかけられれば、患者は、どれだけほっとすることだろう。