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阿弥陀堂だより

2003-06-15 00:00:00 | インポート
前から見たいと思っていた「阿弥陀堂だより」が、ビデオ屋さんに並んでいたのでさっそく借りてきた。この作品は、しみじみよい。日本映画の底力を見る思いだ。

有能な医者・美智子(樋口可南子)は、パニック障害になったのを機に、売れない作家・孝夫(寺尾聰)とともに、彼の実家の信州に移り住んだ。
2人は、阿弥陀堂であの世に旅立った村人の霊を守ることをつとめとしているお梅ばあさん、難病におかされながらもけなげに生きる小百合、ガンと宣告されながらもいさぎよく死を迎えようとする孝夫の恩師らと知り合交流していく。

とりたてて大きくストーリーに派手な振幅があるわけでない、でもささやかに生き死んでいく普通の人々のありように接して、美智子が、心の病を克服していく様子が、丁寧に描かれる。日本の田舎の美しさの中に溶け込んでいく中年夫婦の2人の姿が、ひとつの素朴なファンタジーとなって見るものに暖かな気持ちを呼び起こす。

樋口可南子さんは、カッチイあこがれの女優さん。「卍」「ベッドタイムアイズ」「女殺油地獄」など、ハードな作品でも演じきれる女優さんが、糸井さんのオクサンになってからは、あんまり出てこられなくなったのが残念だったのだが、この作品で久々にカムバック。心の病気のため不安げな様子。夫にいたわられ、少しずつ安心していくところとか実に自然で上手い。自分で釣った岩魚で飲んで酔っ払ってしまったりキュートな場面も。後半小百合の手術をするときは、きりっとした女医に切り替わって、かっこいい。なんたってキレイだよう。

お梅ばあさんを演じた91歳の現役女優、谷林谷栄は、もう圧巻、もう存在するだけで奇跡のようなことだから。上手い下手とかを通り過ぎてる。日本映画の至宝のような存在だ。全編を通したら結構の長丁場だったのに、演じきってくださってありがとうという感じ。アカデミー助演女優賞も当然!

でも、彼女らを支えたのは、やっぱり孝夫役の寺尾聰さんではないでしょうか。メイキングを見ると谷林さんは「あきらちゃんがいたから」と言われていたし頼られていた様子。優しく妻を支える夫は、無言の演技でピカイチ。最後に作家としての決意を述べるところは頼もしかった。(主夫に徹していたみたいだったんで)

「たそがれ静兵衛」より更に地味な作品だけど、ヒューマンな質の高い日本映画。大人を満足させてくれる1本だ。


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