『花束みたいな恋をした』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:4/17
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆
【以下の要素が好きなら楽しめるかも】
ラブストーリー
奇跡的な出会い
趣味が全部合うカップル
マンネリ化
すれ違う2人
【あらすじ】
東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから
偶然に出会った山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)。
好きな音楽や映画がウソみたいにいっしょで、
あっという間に恋に落ちた麦と絹は、
大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。
近所にお気に入りのパン屋を見つけて、
拾った猫に2人で名前をつけて、
渋谷パルコが閉店しても、
スマスマが最終回を迎えても、
日々の現状維持を目標に2人は就職活動を続けるが……。
まばゆいほどの煌めきと、
胸を締め付ける切なさに包まれた〈恋する月日のすべて〉を、
唯一無二の言葉で紡ぐ忘れられない5年間。
これはきっと、"私たち"の物語。
【感想】
とあるカップルの出会いから別れまでを描いた、
何の変哲もないラブストーリーなんだけど、、、
ここまで面白いとは。。。
もうね、脚本が素晴らしすぎる。
スーッと頭の中に入ってくる流れるようなストーリー展開。
物語の設定が斬新だとか、ド
ラマチックやロマンチックに振り切っているとか、
そういうのじゃないんだよ。
むしろ、淡々と進む日常の物語で、
テーマとしては「環境が変わることで、関係性も変わる」というもの。
そんな当たり前のことを描いているだけなんだけど、
その当たり前を、共感と憧れを絶妙なバランスで配分しているから、
いい人間ドラマになる。
今回、2人の出会いはほとんど奇跡のようなもので。
サブカルの趣味が全部合うという、
何かのオタクである人ならば理想とするようなカップリング。
そんな神がかったカップリングなのに、
わざとらしくなく描き切っているのがすごいなと。
これは、菅田将暉と有村架純の演技ももちろんあるんだけど、
ベースとなる関係値の土台が自然に見えるように作られているからだと思う。
その土台があるからこそ、
ちょっとした日頃のあるある(「イヤホンって絡まりますよね」とか)も、
2人の距離を縮める要素に成り得ている。
それらが密集することで、
なんてことない日常が深いドラマになっていくっていうのが、
脚本を書かれた坂元裕二さんの技術力なんじゃないかなーって感じる。
また、ひとつの事象を2人それぞれの視点で語るシーンがあるのも面白いところ。
その捉え方の差がね、最初は全然ないのに、
だんだん違うことを言ってくるっていう変化も、
2人の関係性の終わりを意識させてソワソワする。
しかも、いいセリフが多いのよ、この映画。
「社会性と協調性は才能の敵」
「一度別れを意識しちゃうと、かさぶたみたいに剥がしたくなってくる」
「はじまりは、終わりのはじまり」
みたいに、「うわー、メッチャわかるわー」っていうのが随所に散りばめられているのも見どころ。
終わり方も『東京ラブストーリー』のラストっぽいのが、
あのドラマを観た人なら懐かしくも感じるだろうなー。
今日の観客、めずらしく若い人多かったけど、
今の若い人から見た菅田将暉や有村架純って、
昔僕が見てた織田裕二や鈴木保奈美なんだなって思うと感慨深い。
あと、現実世界にあるものをたくさん入れ込んでいるのも、この映画の魅力。
押井守やさわやかのハンバーグ、『ストレンジャー・シングス』、
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』、『パズドラ』など、
登場人物たちも現実世界の人々と同じようにそれらに触れ、
ハマッてるというのがリアルさを感じられる部分。
麦が忙しさのあまり、
好きで読んでた漫画も途中で止まり、
昔読んだ本の内容も忘れ、
「もうパズドラしかする気が起きない」って言ってるのも現代っぽくてよかった。
そういう時事性って、“今"を生きている観客からはリアリティを感じるし、
後になって観ても時代性を感じてノスタルジーに浸れるからいいよね。
いろいろ書いたけど、
“何の変哲もないラブストーリー"を
"共感と憧れのバランスが絶妙な深い人間ドラマ"
へと昇華させているこの映画、
普通に面白いのでオススメ。
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