ほんわか亭日記

ダンスとエッセイが好きな主婦のおしゃべり横町です♪

「祭り半纏」

2011-07-30 | エッセイ
2011年7月30日(土)


夕方のシロちゃん、チワワちゃんの散歩のときに、遠くに黒い雲が広がっていた。
新潟、福島は大変な豪雨だけれど、群馬にキャンプに行ったえっちゃんたちは
どうだったろう?
頭上の雲は白く、青空も見える。
今日は、町内のお祭り。きっと大丈夫だよね。
浴衣を着た女の子たちやお父さん、お母さんたち何組ともすれ違ったよ。
お祭り、楽しみだよね、いってらっしゃ~い。
おや?祭り半纏を着た人が自転車に乗って行った。
きっと役員さんね。
ウィステは、数年前、自治会役員をして、お祭りの当番をやったことを
思い出したよ。

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「祭り半纏」

 四月に自治会の役員を引き受けたときには、我が自治会が今年の祭りの幹事とは知らなかった。
幹事は地区の十の自治会が交代で務めており、その十年に一度巡ってくる大役の年なのだそうだ。
祭りは、今年で二十四回目を迎えるが、私は、子供たちが小さかった頃はともかく、もう長いこと
この地元の祭りを覗きにも行かずに、縁遠くなっていた。そういえば、八年ほど前に、婦人部の
盆踊りに駆り出され、浴衣の上に祭り半纏を着て櫓の上で盆踊りをしたことはあったと思い出す
程度だ。ところが、今年は、うちの自治会長が祭りの実行委員長となり、私も実行委員会の総務の
一員として否応なく準備段階から関わることになった。
 七月に入ると、暑いさなか寄付金集めに商店街をまわりもしたが、祭りの裏方になってみると、
祭りのためにかけまわる苦労は案外楽しい。「父の介助・母の介護そしてお稽古事」を軸にまわる
私の日常生活に、
『目標に向かって、みんなで協力して、ドドッと勢いで突っ走る』
といった部活のノリの熱気といったものが雪崩れ込んできたのだから……。忙しい、忙しいと
準備に追われながらも次第にわくわくとしてくる。私だって元はといえば神田の生まれ、実は祭り
好きの血が騒いでいるのだと認めざるをえない。
 七月末の祭りの日まで二週間となり、自治会長や総務の女性たちと祭りの抽選会の景品を買いに
行った折り、私は気になっていたことを会長に聞いてみた。
「お祭りの半纏はどうするんですか」
 私は、受け付けを仰せつかっている。お客様をお迎えする時には、せっかくだから、お祭りらしい
格好をしたい。それには、浴衣よりも楽で、下が黒いTシャツでも様になる祭り半纏が良いと思う。
ところが、祭りの準備が進んでも、半纏の話が出てこないのが訝しかったのだ。それもそのはず、
会長はじめ、総務の二人の女性も、半纏があることすら知らなかった。私は着たことがあるのにと
納得がいかず、なおさら、
〈祭りといえば、役員は祭り半纏よ〉
 と拘りたくなった。
 そんな思いの底には、私が育った東京郊外の祭りの風景がある。神社の祭りでは、舞台の上に
陣取った近所の大工のお兄ちゃんたちが、祭り半纏を着て普段とは別人といった神妙な面持ちで
祭り囃子の太鼓をたたいていた。大工の親父さんが町会の役員で、その半纏の背中の「祭」の字が、
お祭りの人混みの中でも頼もしく見えたものだ。そんな懐かしさに繋がる祭り半纏を、
〈この際だ、私も是非、着てみたい〉と意気込んでいたのに、いつ忘れさられたのだろう。
 心にかかっていたから目敏くなっていたのか、三日後、私は、偶然に半纏を見つけた。場所は、
読書会をしていた隣の自治会の集会所だ。和室の押し入れの中にあった『クリーニング済み・五十枚』
とシールの貼られた半透明の衣装ケースに入っていた。白地に紺の鎖文様の入った祭り半纏は、だが、
仔細に見ると紺の衿に隣の自治会の名前が白く染めぬいてある。それならと、私は帰りしなにうちの
自治会の集会所へ寄った。案の定、押し入れの下段に置かれた衣装ケースには、同じ柄のうちの
自治会の半纏があった。数えてみると、四十八枚。背中の大きな赤い「祭」の文字に、してやったり
との感が湧いた。
 かくて、今年の祭りには、我が自治会からの役員二十名は祭り半纏を着た。会長は勇んで着て
くれたが、そんな格好をするのと、躊躇いながら着る女性もいた。私はといえば、祭りの定番という
格好をすると、いつもの私よりちょっと粋な姉御に変身した気分となり、ご祝儀を持って来て下さった
お客様をいそいそと本部テントの中へとご案内していた。風が涼しくなる頃、実行委員長挨拶の時間
となる。櫓の上に登るうちの自治会長は、祭り半纏姿で様になっているのに、生憎、祭に押し寄せた
人たちは、夜店のほうにばかり集まっていた。ならばと、私達役員数名が櫓の最前列に陣取った。
こちらも半纏姿では、いかにもサクラ然としていたろうが、私達にしてみれば、お祭を盛り上げる
ためにはなりふり構う暇はないというところだ。会長は、
「ここが、私達の子供達の故郷です。故郷の祭りを盛り上げましょう」
と、挨拶し、私は、
〈今年はうちの子供達は来なかったけれど、ここがあの子たちの故郷。私がここに住んでいることが、
故郷を守っていることなんだわ〉
 と、思いつつ拍手したのだった。
やがて、神輿テントの前が賑やかになった。子供神輿の始まりだ。おそろいの青い祭り半纏姿の
子供たちが担ぐ神輿が、カメラをかまえる親たちに囲まれながらそろそろと進んで来る。その光景に、
巣立っていったうちの子供達にもこんな時代があったとの懐かしさが重なり、
『時の経つのは本当に速いものだ』
と、かすかな寂しさが心に浮かぶ。ともあれ私は、受け付け席の前を通り過ぎる神輿に、
「わっしょい」
と、声を張り上げ景気をつけた。

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去年は、ポチとお祭りに行ったっけなあ。会場では、抱っこしていたのだけれど、
今年は、ワンコ二匹じゃ、無理ねえ・・・。
だけど、自治会員に配られたお祭り券250円分、もったいないなあ、誰かに使って
もらえないかなあ・・・と、考え、考え、家に戻りました。

コメント
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