ぶらつくらずべりい

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詩「船乗りと娼婦」

2010-02-07 06:53:04 | 
僕が十八だった頃、船乗りをしていた。

長い出港から帰ったある日、同期と散々に酔い、裏通りにある古くて汚ない、女を売る店に入った。

僕の横に座った二回りは年上だろう女は、何度も何度も自らの年齢と容姿について謝った。

そんなことは気にしていないことを証明するために、女の股を無理矢理に舐めた。

ずっと。
ずっと。

すると女はまた、そこは汚いから汚れているからと言って謝った。

僕は訳の分からない怒りに、いや怒りのような悲しみに、胸が焼け焦げた。

焦げた胸から上がる煙は、唐突に頭の中に満ちた。

その途端に、有り金を全部机に投げつけて逃げ出した。

走りながら、僕は遠い母を思った。

そして、便器に内臓まで吐き出すとそのまま眠った。