ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

真弓「こはきもの」斎藤典子

2011-03-01 05:53:43 | クンストカンマー(美術収集室)短歌
けふの雨うけとめかねて音もなくくづれゆきたる広場の端あり

実際に崩れていく広場はない。ただそう見えた景色はある。私は窓の内側にいると思う。窓の端を雨が流れる。その向こうに広場がある。だから崩れていくように見えた。音もないのはそのせいだろう。

短歌人3月号

2011-03-01 05:53:15 | 平成23年短歌人誌より
かさぶたをきれいに剥がす少年のような手つきで僕を触って

逆さまに置いたコップのようにまた背中を向けて口を閉ざした

落ちてくる君の涙を外国のコインのようにじっと眺める

何回も底に張り付くコースターみたいな僕と君の関係

どうしても風に揺られる菜の花のことしか思い出せない別れ

最初からあとがきを読むような恋 菜の花はただ静かに揺れる