ぶらつくらずべりい

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短歌人3月号「左岸の家に」近藤かすみ、短歌人賞受賞第一作

2012-03-02 05:51:44 | 短歌人誌より
さやうなら左岸の家に帰るひと三月うまれの風と見送る

左岸というからには右岸に家があるのだろう。この川が隔てるものは時間だろう。

幼き日ならびうつりし写真には帽子の彼とお下げのわたし

「さやうなら」と告げた時、三月うまれの風が吹いた。だからせめて一緒に見送ったのだ。

阪森郁代「ボーラといふ北風」シェスタ

2012-03-02 05:51:19 | クンストカンマー(美術収集室)短歌
立ちつくす誰(た)が人影も見えなくてでも草いきれだけは満ちてる

立ちつくしているのは私。誰の人影も見えない。ただ草いきれだけは満ちている。この「いきれ」がいい。つまり、草ではなく匂いや熱気なのだ。人影もまた人が見えないのではない。気配なのだ。人の気配はなく草の気配だけが満ちている。物言わぬ草の。