僕はこの絵の前からしばらく動けなくなった。なぜなら、少年だった自分がいたからだ。絵の中の少年はとても狭い通路のような場所に膝を抱き座っている。目がとても淋しい。多分、ずっと一人だ。一人が好きだというより一人なのだ。その場所では少年を傷付ける者は存在しない。少年は好きなだけ創造する。鼻が他のゾウよりも短いゾウ、星なのにうぐいす色の星、ライオンなのにトラに憧れているライオン、優しい手の父、自分だけを愛してくれる母、いつも空高くにいて守ってくれる鳥。その他にも、その日の気分でたくさんの優しい生き物がいた。その日は他の日よりも長く座っていた。すると鳥が少年の元に真っ先に降りてきた。その瞬間を描いた絵だ。僕は背中から頭にかけて細かく震えた。そしていつしか、あの時の自分の孤独が孤独ではなかったように思えた。
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