短歌人5月号「会員2」岩崎堯子 2012-05-29 06:17:37 | 短歌人誌より 海に行かむと誘へば峻拒する男(を)の子 はや聖域をもつのかきみは 「きみは」に驚きと惑いと感動がある。海に誘うと喜んでいた男の子もやがて、子を付けることに躊躇するくらい成長する。もしかしたらこの子にとって海が聖域になったのかも知れない。
阪森郁代「ボーラといふ北風」過去世 2012-05-29 06:14:45 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 皮蛋(ピータン)の暗緑色のゆらゆらに紛れて死者の名が持ちあがる ピータンの表面の暗緑色のゆらゆらを見詰める。そのゆらゆらに紛れて持ち上がる死者の名。皮蛋だから持ち上がったのではないだろう。このゆらゆらのようにぼんやりとさせるものなら何からでも思うのだ。
短歌人5月号「会員2」海野雪 2012-05-28 06:10:39 | 短歌人誌より ある一夜私に触れて過ぎ去りし風のかたみの桜花びら ある一夜に込められた思いを感じさせる。私に触れて過ぎ去ったのは風だけではないだろう。かたみもまた桜花びらだけではない。桜の歌は女流が抜群にいい。この一首もまた私の中でその中に加わった。桜の美しさのピークで散る様が重なるからだろうか。 ちなみに桜の咲く歌は女に多く、散る歌は男に多いというのを聞いて納得したことがある。
阪森郁代「ボーラといふ北風」過去世 2012-05-27 08:35:48 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 夕べには夕べの速さの瀬の音す月射せば月を砕く瀬の音 瀬の音の速さにも変化があり、一時も同じ音はない。そして、音の力を発見する。月を砕く力。それは瀬の音によって、作者の頭の中に浮かぶ静寂の月を壊したのではないか。
短歌人5月号「会員2」太田賢士朗 2012-05-27 08:27:04 | 短歌人誌より 石けんのかそかなくぼみそしてまた名前を忘れし女の記憶 石けんのかそかなくぼみという具体が連れて来る名前を忘れし女の記憶。その具体は女の印象を語る。石けんのような清潔感や匂い、けれどかそかなくぼみがある。くぼみとは使われた跡。どこか哀しい。 ちなみにある歌会で「そしてまた」や「あの」や「たった一つ」はあの有名な一首を導くので使いづらいという発言があり強く共感したことを思い出した。