ヤマヒデの沖縄便りⅣ 歩き続けて 歩き続ける 再び

「基地の島」沖縄を歩き続け34年、気ままに綴ります。自然観察大好き。琉球諸島を戦場に据える「島嶼防衛」は愚の骨頂。
 

在沖米軍関係者の90名余りの新型コロナウイルスの感染者の拡大と米日政府の対応(20200714)

2020年07月14日 | 米軍のコロナ対策
 在沖米軍関係者(兵隊・軍属・家族)の新型コロナウイルスの感染者の拡大が止まらない。何故こんなことがまかり通るのだろう。現象的には3つである。①国外からの異動シーズンであり、罹患者が入ってきた。②7月4日の独立記念日前後のパーティ・イベントで拡散した。③米軍の対策が不徹底だった。
 さらに普通に考えたらありえぬことだが、異動に伴う入国者を14日間隔離する施設を基地の外の北谷町美浜にあるダブルツリーbyヒルトン沖縄北谷リゾートを借り上げているのだ(7月Ⅰ日から8月31日)。
 そしてこうした事態にもかかわらず、沖縄県も11日まで米軍がウンと言わぬからと、人数すら公表しなかった。これを突き破る契機になったのが沖縄県議会による全会一致の抗議決議だった(7月10日)。むろん沖縄2紙の頑張りも大きかった。
 そして本来ならば、沖縄県の後ろ盾になるべき日本政府が全く動かないことも明らかになった。防衛省も、外務省も政府も積極的に動く気配がない。管官房長官に至っては、こんなだ。米軍が隔離施設を基地の外に作ったことを問われて、「14日間の移動制限をより厳格に実施するためとの説明をうけています。これらの施設を利用している在日米軍関係者は施設からの外出を禁止されており、隔離されていると説明を受けています。施設内でも移動が制限されており、従業員や住民との接触しないようにしています。各自治体に政府からも説明するとともに米国からも説明を受けています」(7月10日の官房長官記者会見)。端から基地内に隔離すべきだと認識しておらず、米軍の代弁者に過ぎないのだ。

 こうなる背景ー根拠はどこにあるのだろうか。その前におさらいを少々。在日米軍は他国の軍隊だ。それを日本の中に受け入れているのだ。国際関係だということだ。日本が独立国家ならば、日米関係は対等であり、日本の領土にいる以上、日本法が適用されるべきものだ。それを承知し遵守したうえで、国外の諸組織は活動することが許されるのだ。
 米軍が日本に駐留している法的根拠は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」であり、10条からなっている。この第6条を受けて「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(1960年6月23日公布)があり、28条からなっている。この地位協定が米軍、米軍活動の自由(やりたい放題)を容認しているのだ。
 それではこの協定はどんなかを概説しておこう。
第1条:用語の定義ー「合衆国軍隊の構成員」「軍属」「家族」
第2条:基地の提供と返還ー「 合衆国は、日米安保条約第6条の規定に基づき、日本国内の基地の使用を許される。」
 いきなり「合衆国は」が主語になっています。安保条約の第6条で米国は日本の中で基地の使用が許されているのだから、当然の如く合衆国が主語になるという倒錯。借主(米国政府・米軍)が貸主(日本国政府)に対して主語になる振る舞いが許されているのだ。
第3条:基地内の合衆国の管理権:「合衆国は、基地内において、それらの設定、運営、警護および管理のため必要な全ての措置をとることができる。」ー米軍が排他的管理権をもっている。
第4条:基地の返還時の現状回復・補償:「合衆国は、この協定の終了の際またはその前に日本国に基地を返還するに当たって当該基地をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、またはその回復の代わりに日本国に補償する義務を負わない」
 以下の条文、略。
 こうしたとりきめだから、日米地位協定は、「米日地位協定」であり、米軍に数々の特権を与えている。植民地的な地位協定と言わざるをえないのだ。
 
 このように米国・在日米軍のやりたい放題を日本政府は認めているのだ。それでは本件に関する規定をみてみよう。
 第9条軍隊構成員等の出入国に「1 この条の規定に従うことを条件として、合衆国は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族である者を日本国に入れることができる。
2 合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される。合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令から除外される。ただし、日本国の領域における永久的な居所、または住所を要求する権利を取得するものとみなされない。
3 合衆国軍隊の構成員は、日本国への入国または日本国からの出国に当たって、次の文書を携帯しなければならない。(身分証明書の携帯)
 以下略。」
 この項について外務省の裏マニュアル「日米地位協定の考え方 増補版」にこうある。「本項は、安保条約・地位協定の趣旨からして当然の規定であるが、法的には、これらの者の入国を一般的には認めないとする趣旨の国内立法が本項により排除される点に意味があると考えられる。」と日本政府は彼等の出入のフリーパスを認めている。日本に滞在し、軍人などとして働いていてもフリーパスなのだ。要は透明人間だということだ。あちらからは見えても、こちらからは軍隊(集団)がいる以外の個人は見えないのだ。犯罪は個人がやらかすし、感染症は個人が罹るのだ。
 だからウイルスのチェックも米国頼みとなってしまう。それにしても、日本政府は、きちんと「情報提供して下さい」とも言えないのは、どうしてなのだろうか。まして米軍・家族は基地外に住居を構えている人達も多い。それだけ、日本人との接触の機会は多くなる。また、米日共同演習も増えている。自衛官の健康を守るためにも必要なことだろうに。おかしなはなしではないか。
 まして入国者の滞在先を北谷町のホテルを貸し切って等、言語道断だ。在沖米軍は彼等を責任もって管理しているのか。2週間もホテルに軟禁などできるわけがない。ホテルに米軍の医療スタッフは配置されていないという。米軍は他人の迷惑顧みずやっていいのか。断じて否だ。
◎参考資料:「外務省機密文書 日米地位協定の考え方 増補版」琉球新報社編 高文研刊 2004年


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