ハレ時々オンデマンドTV

オンデマンドTVの感想やら日々の見聞録

三冊屋

2008-11-19 01:50:30 | 
三冊屋 ブック1st.新宿店



ブック1st.新宿店を覗いたときに発見した「三冊屋」という書棚。
最初はアマゾン式の「この本を買った人は・・・」的な
まとめ買い促進か、と思ったが、よくみると
まるで正反対なところを狙っていて、面白い。

この正体はイシス編集学校という松岡正剛氏が校長をつとめる
インターネット上のコミュニティがプロデュースする
ブックフェアだそうな。
相変わらず、情報が遅いところがお恥ずかしいのだが、
既にあちこちで開催されているらしい。

コンセプトは「本は三冊で読む」という
単純にして明快、そして実に奥深いもの。
三冊の「編集」はイシス編集学校に属する
銀行員からアーティスト、タレントといった
「本通」が担当しており
それぞれゴムバンドでくくられた本には
選者のコメントが付いている。



アマゾン等に代表されるWeb勢と根本的に異なるのは
「売れている本」を自動的に組み合わせているのではなく
選者の眼力、編集力によって強烈な「思想」を持っている
ということだろう。

また匿名による「感想文」とはまったく次元の違う着眼は
改めて本の面白さを教えてくれる。
その意味でも「三冊」という絞り方は絶妙だ。

当然ながら選ばれる本は出版社も違えば発刊年も異なるし
メジャーからマイナーまで、文庫もあれば写真集も一緒になるという
組合せはまさに無限大であろう。

コピー&ペーストを現物でやっているようなものだし
結果、マイナーな書籍が日の目を見れば、ロングテールそのものだから
Web 2.0のアナログ版という言い方もできるかもしれない。

もちろん、関連性ある商品をまとめて見せて売る、というのは
流通業では常識だから、結果だけみていると特段新しいことはないとも言える。
それでもなお、「三冊屋」に新鮮さと面白さを感じるのは
背景に骨太な「思想」があり、それがきちんと「デザイン」されているからであろう。
本をくくった赤いゴムバンドとそれに付く小さなタグ
コメントを印刷したカードやそれらが並ぶ書棚の適度な不揃い感には
計算された存在感があって、見る者を飽きさせない。

最近、各方面で「コンシェルジュ」という言葉が流行っているようだ。
インターネットを通じてあらゆる情報が玉石混交であふれ出した反動で
プロフェッショナルな選択眼の価値が、改めて見直されているのだろう。

バーチャルなショッピングサイトが大きな脅威であることは間違いないが
プロフェッショナルな人間力をデザインすることによって
リアル店舗にも、まだまだ活路はあるのだと思う。

→「三冊屋」の詳細はこちら!

『武満徹 対談選』小沼純一編 ちくま学芸文庫
『海馬 脳は疲れない』糸井重里 池谷裕二 新潮文庫
『自分の頭と身体で考える』養老孟司 甲野善紀 PHP文庫

ブック1st 新宿店にて 三冊屋 大川雅生氏(編集術コーチ)編集


加藤訓子 パーカッションアーツ

2008-11-09 22:39:21 | 音楽
加藤訓子レクチャーコンサート 
パーカッションアーツ
inアートフォーラムあざみ野



久しぶりの加藤訓子。
今回はアートフォーラムあざみ野の企画で
昼12時からホールでログドラムを
一緒に叩くというワークショップとセットになった
レクチャー式のコンサート。
会場も正式なコンサーホールではなく
レクチャールーム(結構いい設備)で行われた。
自分はコンサートのみ観賞。


※ワークショップで使われたログドラムがホールに置かれていた・・・


そういう企画もののせいか
会場はお子様連れやお年寄りのご夫婦など
市民向けロビーコンサートといった雰囲気。

14時の開演と同時に加藤訓子はいつもどおり
客席後方からオモチャのホースを回しながら
ヒョ~~チャラララ・・・と
コズミックな音を響かせつつ入場。

ワークショップの流れを汲んで
ステージ下のログドラムを叩く
インスタレーションから演奏が始まった。

今日は「宇宙」というテーを明確に打ち出した構成。
「天動説」という言葉にもあるように
物理的な宇宙が本当はどうなっているかは別にして
人間の想像の中で宇宙や天体は
常に美しく、不思議な魅力をたたえて存在している。
そんな人間の想像の中に存在する「宇宙」のイメージを
表現してみたい、ということだった。

前半は『ルーツ・オブ・マリンバ』で
地球をさまよう人間の創造をたどる
時間軸的展開。

後半がジェフスキーの『To the Earth』から始まって
打楽器リズムのインスタレーションをはさみながら
ドナトーニ、クセナキスへと続く
空間的大展開の世界。



会場のアットホームな雰囲気とはまったく別に
今日の演奏のキレのよさ、メリハリの効いた
迫力ある音響とスピードは
ここ数回聴いた中でも最高の完璧さだったと思う。

体にピッタリしたTシャツにスポーティなパンツという
音楽家というよりはアスリートといった方が似合う
コスチュームだったせいもあるけれど
演奏している姿勢の端正な美しさ
ムダのない、流れるようなフォルムは
本当に体操選手の演技を見ているような爽快感を感じさせる。

テーマそのものが「宇宙」という深遠なものを含みながら
以前のような「巫女的な」怪しさやエロティシズムのようなものは
影を潜め、その芯にある人間の明快な創造性や
宇宙や時間に対する純粋な夢や希望を
思いっきりストレートに表現していたように思う。

特に最後の『ルボン(Rebonds [a.b])』クセナキス(1987/89)は
今回初めて聴いた演奏だが
単純なバスドラムの単打から始まって、
祭り太鼓のような複雑なリズムの饗宴に突入、
エネルギーを一気に爆発させる強烈な響きに展開する様は
人間の持つ原始の力の表現であり、ビッグバンそのものでもあろう。

たたき出される音の強烈さは
あの細いからだのどこから、と思わせるほどパワフルだが
最初から最後まで緊張を保ちつつ
体の全てを使って正確無比なリズムと間を叩き分ける技術は
たとえプロとはいえ、さすが世界屈指の才能。
精神と肉体そして宇宙(表現)が完璧に一体となった
もの凄い演奏であった。

絵に描いてしまうと
まるでマンガでしかないのが残念だけれど
オープニングから最後の一音まで
見事に計算された世界観は圧倒的。
改めて、加藤訓子の凄さを実感したコンサートであった。


アメリカ在住のはずの彼女が
半年前に横浜に引越してきたそうな。
なんだかすぐ近くにいるというのも
非常に嬉しい、、、
というミーハーな心理をくすぐる
オマケもあった(^ ^ )のでした。


加藤訓子 パーカッションアーツ アートフォーラムあざみ野にて
2008年11月9日(日)14時~

<演奏曲目>
~プラネット(さまよう人)より「天動説」
 木星―Sound Installation

加藤訓子/ルーツ・オブ・マ・リンバ(2006~)
     1.Roots of MA・RIMBA Ⅰ
     2.てぃんさぐぬ花(沖縄民謡)
     3.Roots of MA・RIMBA Ⅱ-Asia
     4.イパネマの娘(アントニオ・カルロス・ジョビン)
     5.Roots of MA・RIMBA Ⅲ-Africa
     6.ショナ・ドリーム・ダンス(マーク・ダガン)
     7.Roots of MA・RIMBA Ⅳ-Georgian song
     8.Coup d’alle

フレデリック・ジェフスキ/大地への賛歌(1985)
     地球―To the Earth

金星・水星―Sound Installation

フランコ・ドマトーニ/オマー(1985)
     太陽―Omar DUE PEZZI PER VIRAFONO

月・火星・土星―Sound Installation

ヤニス・クセナキス/ルボン(1987/1989)
     タイタンーRebonds[a.b]

アンコール ドボルザーク/家路


Perfume 武道館ライブ

2008-11-08 20:56:24 | 音楽
Perfume 武道館ライブ



1日遅れの報告。。。

昨夜はPerfumeの記念すべき武道館ライブの
2日目(最終日)に行く。

さすがに大きなハコだけに
背景には一面の大画面を備え、中央に大階段、
正面に花道が延びて
先端には円形の回転ステージという
大掛かりなもの。

オープニングは
宇宙船に三人が乗り込み
飛び出していくというCGから
カウントダウンに移って
大画面に目線を釘付けにしながら
回転ステージのせり上がりから
いつの間にか3人が登場、
「コンピューターシティ」がいきなり始まり
意表をつかれる。

畳2帖あれば十分というPerfumeの
3人だけでこんな大きなスペースが
もつのだろうか、という心配をよそに
大画面のCGやらレーザー光線てんこ盛りの
迫力ある演出で、最初から全開モード。
後半に行くに従って振り付けのキレも
テンションがUPし、
いつもの3人だけで、飽きさせずに
楽しませてくれた。

演奏曲は『GAME』からの選曲が中心で
ブレイク以前の曲は
定番の「ジェニーはご機嫌ななめ」くらいだった。
(今回はさすがに掛け声も「下北方式」でぴったり!)

観客は予想通り年齢層が高めで
ある意味非常にアットホームというか
熱く盛り上がっていながらそれなりに上品という
ちょっと不思議な「大人なアイドル」の世界。

トークもどちらかというと控えめではあったが
夢に見た武道館の実現、という喜びが
3人の心に溢れているのが素直に伝わって
古くからのファンでなくても
「よかった、よかった」とついウルウルしてしまうような
親近感溢れるものだった。

何の曲だったか忘れてしまったが
途中で銀テープがはじけたのだけれど
よく見るとその銀テープに
3人の手書き文字のメッセージがプリントされていて
アイドル慣れしていないオジサンたちは
それだけでもメロメロ。



あの武道館が2階のてっぺんまで
まるで人がこぼれ落ちそうになるまで
いっぱいになるなんて
1年前は誰も想像すら
できなかったことかも知れないが
彼女たちにしてみれば
8年かかってたどり着いた場所という
特別の思いがあることは違いない。

見ているほうも
なんだか愛娘が大人になっていくのを
嬉しく思いながらちょっと寂しさを感じるという
複雑な気持ちがあるようで
これもまた、不思議な世界だ。

昨日はめずらしく中田ヤスタカ氏が客席に姿を見せ
大層盛り上がったものだが
すっかり時代の寵児になった感の中田氏が
これからPerfumeをどこに連れて行ってくれるのか
コアなファンならずとも
ますます目が離せなくなるのだろう。

とりあえず
来年5月9日・10日
代々木体育館での再会を約束して
アーチャン、カシユカ、ノッチは
ステージの奥に消えたのであった。


Perfume 武道館ライブ 2008年11月6日・7日


マイクル クライトン 『ジュラシック・パーク』

2008-11-06 23:30:41 | 
マイクル クライトン 『ジュラシック・パーク』



マイクル クライトンが亡くなった。
ガンだったそうだ。
66歳というのはあまりにも若く、残念である。

マイクル クライトンの小説は
最先端のテクノロジーやビジネス、社会現象を
スリリングなストーリーに仕立てて
分かりやすく教えてくれる
一級のエンタテインメントだった。

特に自分が印象深いのは
『ジュラシック・パーク』と
その続編である『ロスト・ワールド』。

DNAの謎が解明され、
クローン技術が現実になってきたことを背景に
「複雑系」、「カオス理論」といった
流行の理論を巧みに取り入れ
まるでドキュメンタリーのような
迫力のある「フィクション」になっている。

当時は本当に「複雑系」に関する解説書が溢れていて
「1/fゆらぎ」という言葉も(もちろんその前からあったのだが)
このあたりから普通に言われ始めたのだと思う。

複雑系に関する本はいくつか読んでみたけれど
結局のところ「複雑すぎて良く分からない」という
オチのようなオチでないような印象があった。

その中でこのクライトンの『ジュラシック・パーク』は
恐竜を復元してテーマパークを作るという
できたら本当に面白そう、
あるいは本当にできるかもしれないという設定で
話のそこここに複雑系やカオスの考え方を散りばめて
ストーリーを展開している。

それほど多くの本を読んだわけではないが
今でもこの『ジュラシック・パーク』と『ロスト・ワールド』が
複雑系に関しては最もわかりやすい入門書なのではないか
と思っている。

蛇足だけれど「複雑系」に関して言えば
寺田寅彦の随筆が、まさに
複雑系的視点の宝庫なのではないかと思う。
いくつか本を読みながら
小学校の国語の教科書に
「茶碗の湯」の話が載っていたのを急に思い出し
あ、あれだ!と思って本屋に走った記憶がある。
これまた、星新一とカブるところではあるが
寺田寅彦の随筆には、随分「現代的な」着眼があって
実に面白い。



クライトンに話を戻そう。

最近作は『恐怖の存在』という地球温暖化を題材にした作品で
まだ読んでいないのだけれど、論評からすると
彼らしい手法で温暖化をネタにして暴走するマスコミの
情報操作を懐疑的に描いているという。

読んだわけでもないのにこういうのも何だが、
自分が地球温暖化と言われてもちょっと乗り切れないのは
クライトンだってそう言ってるジャン(読んでないけど)
ということがあるように思う。

やっぱり、読まなきゃ。

巷の凡人が俗説に右往左往しているうちに
クライトンはどんどん先を走り
そして、亡くなってしまった。

もう少し、色々と教えてほしかったなあ
と、本気で思ってしまうのである。

「ジュラシック・パーク」のマイケル・クライトン氏が死去(読売新聞) - goo ニュース



マイクル クライトン 『ジュラシック・パーク』上・下 ハヤカワ文庫