NHKオンデマンド始まる
NHKが1日からオンデマンド配信サービスを開始した。
コンテンツは「見逃し番組」と「特選ライブラリー」の2つに大きく分けられる。
「見逃し番組」はNHKの5つのチャンネル(総合、教育、BSハイビジョン、BS1、BS2)から「人気のある」10番組程度を1週間前まで遡って見られるもの。
「特選ライブラリー」は過去に放送された番組を視聴するもので、古くは1963年の『新日本紀行』、1964年の『ひょっこりひょうたん島』まであって、非常に懐かしい。
基本的にはすべて有料で、1本200円~300円で1日~3日間視聴が可能。1本ずつ購入するものや何本かまとめて購入するものなど、番組によって色々設定されているようだ。
パソコンとひかりTVで視聴きるようになっており、パソコンの場合はNHKオンラインのHPから会員登録をして購入する。決済はカードとYahoo!ウォレットが使える。
パソコンでの視聴はADSLか光接続が必要で、通信速度も2段階選べるようになっている。PCにはウインドウズメディアプレーヤーのver.10以上が指定されている。
自宅のPCで大容量(1.5MB/s)で視聴してみたが、マンションで夜帯(回線が混む)だったせいか、動画が途切れ途切れになった。画質もそれなりで、一般のオンデマンドサービスと変わらない。
PC版の場合、「見逃し番組」では1,470円で見放題のサービスがあり、この場合のみニュースも1週間前の分まで見ることができる。
一方、テレビで見るひかりTVの方は、契約者であればそのまま継続して視聴することができ、トップ画面に新たにボタンが設置され、選びやすくなっている。
番組数が格段に増えたことは喜ぶべきことだが、殆んどの番組が有料化されてしまい、PC版と同様に1番組300円程度で1~3日視聴という制限が付いてしまったのが大変残念だ。
NHKのライブラリーには約50万本の番組ストックがあるらしいが、今回配信されることになったのは125番組1,344本と、これだけでも相当見ごたえはある。
多分、40代以上の方であれば、『新日本紀行』『シルクロード』『里見八犬伝』『プロジェクトX』『ステージ101』『てんぷく笑劇場』など、昔馴染んだ番組は数多くあるだろう。『みんなのうた』や『きょうの料理』なんていう、小さい番組まで入っている。個人的には『NHK特派員報告』が見たかったのだが、残念ながら入っていないようだ。
放送や通信の仕組みが変わっている現在でNHKの役割も変わっているのだろうが、ラインナップされたドキュメンタリーや芸術系の番組を見ると、一つ一つの番組がどうと言うより、「昭和」あるいは「戦後」という時代を感じてしまう。「昭和」への邂逅はトレンドではあるが、それは単なるノスタルジーだけではない。生活そのものは確かに貧相ではあるが、それでも湧き上がるエネルギーや希望、楽天的な未来像は、「一体何だったんだろう」というくらい、われわれの心を揺さぶるのである。
放送は民報も含めて、時代を映し、残し続けている。一方は「公営」という立場で受信料を取り、他方はコマーシャルに依存して番組を流している。そのどちらにも利点があるとともに欠点があり、優劣が付けられるものでないことは、明白である。
報道(放送)の根本は真実を追究することにあるのだろうが、そのためにはひとつの「現象」をできるだけ多方面から、多角的に見るしか方法はないであろう。NHKのドキュメントは圧巻だが、それも一つの記録でしかない。
もちろん、番組自体もそうだが、ある意味でコマーシャルは番組以上に時代を反映している。特にエコノミック・アニマルと言われて「高度経済成長」を錦の御旗としていたわが国ではコマーシャルを抜きにしては放送や文化は語れないであろう。これは今も同じであるが。
NHKのオンデマンド配信は「放送」と「通信」を考える上でも大きな事件だと思うが、それ以上に「昭和」や「戦後」の日本を再発見する上で非常に大きな意味を持つのではないかと思う。
できれば同じ時代の民報の番組を、「コマーシャル入り」で見てみたいものだ。
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