今年死亡事故が発生してしまった一宮、さらに10年前に死亡事故が発生した立川。他にも、熊本や伊東といった、周長に比して、直線が長いとされる競輪場で死亡事故(心臓麻痺事例を除く)がKPK制度導入以降発生していることが分かった。
ま、私自身、この「直線が長い競輪場」というやつは、あまり好きじゃない。車券もこうした競輪場(ま、一宮は例外だったが)だととにかく相性が悪かった。
ま、そんなことはさておき、直線の長い競輪場と言われるところでは、意外と大量落車も発生しているようだ。イメージ的には、周長が短く、また直線が短いところほど大量落車が発生しているのではないかと思われがちだが、意外とそうでもなさそう。
今とは違ってバンクコンディションが劣悪で、加えて緩和曲線も、等速だと走りやすいとされるクロソイド曲線が主流の頃は、周長が短いところほど落車事故が頻発した模様。したがって、豊橋や高松が、当初は333だったのに400に延ばしたという話まである。ま、西宮も300から333に延ばしたな。
しかし今、緩和曲線の主流はマッコーネル。一部にレムニスケート(クロソイドと設計はよく似ているが曲線の描き方が異なる)が導入されているところもあるが、落車と密接に関連がありそうな緩和曲線についていえば、日本の自転車競技場は世界一走りやすいといえよう。
となると、本来筋からいえば、毎週3回も4回も大量落車が発生するのは正直、不思議でならないのである。ま、レース数は圧倒的に少ないとはいえ、設計の難しさからクロソイド緩和曲線のところが多く、また周長も短いところが少なくなく(つまりカントがきつい)、加えて低温多湿という、日本の気候条件と異なることから、滑りやすい板バンクとなっている欧州で開催されるワールドカップなどのレースを見ると、落車レースでさえほとんど発生していない。またロッテルダムだけしか6日間レースは見ていないが、会場のアホイは200バンク(最大カント49度)なのに、ここでもまた、落車が発生したレースというのはめったに見たことがない。
もっとも、167m走路らしいヘント(ゲント)の6日間レースで2年前、死亡事故が発生しているし、大量落車に巻き込まれたことにより、海老根恵太がその後の成績を大きく落とす要因となった2年前のアジア大会のドーハにしたって、周長は確か短かったはず。ま、周長が短い場で落車が発生するということは、重大な事故に繋がりかねないのは確か。しかしながら、発生頻度は低いとみるのが妥当ではないか。
さて、直線の長い競輪場で過去に死亡事故件が発生しているケースがある話というだが、むろん、一概に逆のところが安心というわけではない。だが思うに、直線の長い競輪場というと、仕掛けるポイントが極めて危険なところにあたりやすいのである。
それは、最大カントにあたる2センター付近。つまり、トップスピードに一番乗りやすいところからの仕掛けとなる。これが直線の短いところだと、3角付近から出ればいいということになるし、333や250バンクだと、残りあと1周近辺ではトップギアに入れているケースも少なくない。
つまり、急激にスピードが変化するものだから、大量落車が発生する場合には、それに対応できない選手が必ず出てくることにも起因しているように感じる。
また、競馬と一緒くたに考えているのではないかという気もする。
競馬の競走の基本は直線。したがって欧州の競馬場を見ると、曲線部が非常に少ないことが分かる。しかしながら競輪を含めたトラックレースというのは、いかにしてコーナーを攻略するかにかかっている。そもそも、自転車競技場の大部分は曲線。
それを無理やり直線部を長くしようとすると、それなりにムリな設計となってしまうし、ひいては選手にもムリを強いることになる。
確かに、競輪がギャンブルであるがゆえに、最後の直線が長いところほど、興奮度合いが高まるのは確か。競輪ファンがケイリンをつまらないと思う理由は、一番興奮する直線に入る以前に勝負があらかた決まってしまうことだろうが、トラックレースの本質というのは、競馬のような、最後の直線を向くとアドレナリンが高まるといったものでは必ずしもない。
となると、直線が長い競輪場は面白いとは、必ずしも言いがたいし、また、安全策として考えられるのは、みなし直線を短くすることなのか。