とは一切考えない国会議員の連中。
議員定数は削減すべきではない(大阪日日新聞・一刀両断)
2013/04/16
居住・移転の自由(憲法22条)が保障された社会では、各選挙区の人口は自然に変動するため、常に議員定数不均衡(一票の較差)の調整が必要になる。
そして、定数の是正が議論される度に、全体としての選挙制度の在り方(例えば小選挙区制度の是非)が議論されることも、事柄の性質上、自然である。
しかし、その際に、必ず、「政治家自身も痛みを分かち合う」と称して、議員定数(全体)の削減も論じられることに私は、いささか違和感を覚える。
削減論の根拠としてしばしば引用されるものに、アメリカとの比較がある。いわく、日本の約3倍の人口を有する彼国では上院議員100人、下院議員435人であるから、単純に比較して、わが国の参議院議員は約35人名、衆議院議員は約170人で適正である。
しかし、この主張は、その前提に大きな誤解がある。つまり、アメリカは、わが国のような単一国家とは異なり、50の「州」という名の国家の連合体すなわち連邦国家である。だから、アメリカでは、日本であれば国が担当している行政サービス(とそれらの根拠になる法律と予算の策定も)は、基本的に各州政府(つまり知事と議会)の仕事である。つまり、私たちが「アメリカ」呼んでいる連邦政府は、外交、戦争、通貨管理、州際通商、連邦犯罪等、限られた仕事を担当している。
しかも、アメリカの連邦議員は、わが国とは異なり、公費で二桁の秘書を与えられており、それぞれ、チームとして高い政策能力を有している。
翻って、わが国では、原則として、「地方に特有な行政課題」の他は、全て国(つまり国会)の管轄である。加えて、わが国では、強固な官僚制度が確立している。
わが国の官僚組織は極めて優秀であるために、国民は、全国一律に高水準の行政サービスを受けることができる。しかし同時に、縦割り行政の伝統の下に、「省益」を国益に優先する悪弊も顕著である。
それだけに、わが国における国会議員には、行政官僚組織にだまされないだけの力量が求められている。
そのような観点から見て、私には、実感として、議員たちもその秘書たちも、全体として人手不足の印象がある。だから、真に有効な政治を実現するために、議員と公設秘書はむしろ増員されるべきだと思われる。
(慶大教授・弁護士)
ちなみに、各国の「議員報酬」を見てみよう。
【高すぎる?】国会議員の給料(歳費)を各国で比較
ま、為替レートの問題があるから一概比較はできないが、日本の国会議員が主要国の中では「最も高い」といえそうだ。
ということは、今、与野党で盛んに「定数削減」(ま、共産党は反対らしいが)合戦みたいなことをやってるけど、要するに、定数が削減されると、国会議員になる人物の「実質報酬」はその分「増える」。
ところが、「人口10万人当たりの国会議員数」を見ると、日本は主要国の中では「かなり低い」ことが分かる。
各国の人口10万人あたりの国会議員数(人)
しかも、今のところ日本では、道州制は取られていないわけだから、国会議員が地方行政の部分もカバーしなければならないわけで、さすれば、さらに定数削減なんてことになると、永遠に一票の格差問題など解消するはずがない。
本気で一票の格差問題を是正したいのであれば、議員数を、例えば衆議院であれば、現行の480を、かつての500に「戻し」(小選挙区300、比例200)、一方で議員報酬を3~4割カットすればいいだけの話ではないか。なぜ報酬カットなのか?というと、対GDP比200%超の借金を作った張本人が国会議員だからだ。
民間会社であれば、問答無用に一律賃金カットとなるのに、国会議員はそうはならず、逆に議員定数削減で誤魔化そうとするばかりか、「実質報酬アップ」まで企むというのは「言語道断」ではないか。
もっとも、公明党が言っている「何とか連用制」とか、共産党が主張している「完全比例代表制」などやらなくていい。こんなものをやると、投票率の低落傾向に歯止めがかからず、特に若い連中はほとんど選挙へは行かなくなるだろう。さらに、「旧たちあがれ」の一部が言っている中選挙区制の復活も必要なし。
議員定数は削減すべきではない(大阪日日新聞・一刀両断)
2013/04/16
居住・移転の自由(憲法22条)が保障された社会では、各選挙区の人口は自然に変動するため、常に議員定数不均衡(一票の較差)の調整が必要になる。
そして、定数の是正が議論される度に、全体としての選挙制度の在り方(例えば小選挙区制度の是非)が議論されることも、事柄の性質上、自然である。
しかし、その際に、必ず、「政治家自身も痛みを分かち合う」と称して、議員定数(全体)の削減も論じられることに私は、いささか違和感を覚える。
削減論の根拠としてしばしば引用されるものに、アメリカとの比較がある。いわく、日本の約3倍の人口を有する彼国では上院議員100人、下院議員435人であるから、単純に比較して、わが国の参議院議員は約35人名、衆議院議員は約170人で適正である。
しかし、この主張は、その前提に大きな誤解がある。つまり、アメリカは、わが国のような単一国家とは異なり、50の「州」という名の国家の連合体すなわち連邦国家である。だから、アメリカでは、日本であれば国が担当している行政サービス(とそれらの根拠になる法律と予算の策定も)は、基本的に各州政府(つまり知事と議会)の仕事である。つまり、私たちが「アメリカ」呼んでいる連邦政府は、外交、戦争、通貨管理、州際通商、連邦犯罪等、限られた仕事を担当している。
しかも、アメリカの連邦議員は、わが国とは異なり、公費で二桁の秘書を与えられており、それぞれ、チームとして高い政策能力を有している。
翻って、わが国では、原則として、「地方に特有な行政課題」の他は、全て国(つまり国会)の管轄である。加えて、わが国では、強固な官僚制度が確立している。
わが国の官僚組織は極めて優秀であるために、国民は、全国一律に高水準の行政サービスを受けることができる。しかし同時に、縦割り行政の伝統の下に、「省益」を国益に優先する悪弊も顕著である。
それだけに、わが国における国会議員には、行政官僚組織にだまされないだけの力量が求められている。
そのような観点から見て、私には、実感として、議員たちもその秘書たちも、全体として人手不足の印象がある。だから、真に有効な政治を実現するために、議員と公設秘書はむしろ増員されるべきだと思われる。
(慶大教授・弁護士)
ちなみに、各国の「議員報酬」を見てみよう。
【高すぎる?】国会議員の給料(歳費)を各国で比較
ま、為替レートの問題があるから一概比較はできないが、日本の国会議員が主要国の中では「最も高い」といえそうだ。
ということは、今、与野党で盛んに「定数削減」(ま、共産党は反対らしいが)合戦みたいなことをやってるけど、要するに、定数が削減されると、国会議員になる人物の「実質報酬」はその分「増える」。
ところが、「人口10万人当たりの国会議員数」を見ると、日本は主要国の中では「かなり低い」ことが分かる。
各国の人口10万人あたりの国会議員数(人)
しかも、今のところ日本では、道州制は取られていないわけだから、国会議員が地方行政の部分もカバーしなければならないわけで、さすれば、さらに定数削減なんてことになると、永遠に一票の格差問題など解消するはずがない。
本気で一票の格差問題を是正したいのであれば、議員数を、例えば衆議院であれば、現行の480を、かつての500に「戻し」(小選挙区300、比例200)、一方で議員報酬を3~4割カットすればいいだけの話ではないか。なぜ報酬カットなのか?というと、対GDP比200%超の借金を作った張本人が国会議員だからだ。
民間会社であれば、問答無用に一律賃金カットとなるのに、国会議員はそうはならず、逆に議員定数削減で誤魔化そうとするばかりか、「実質報酬アップ」まで企むというのは「言語道断」ではないか。
もっとも、公明党が言っている「何とか連用制」とか、共産党が主張している「完全比例代表制」などやらなくていい。こんなものをやると、投票率の低落傾向に歯止めがかからず、特に若い連中はほとんど選挙へは行かなくなるだろう。さらに、「旧たちあがれ」の一部が言っている中選挙区制の復活も必要なし。