カナダ トルドー首相の後継選ぶ与党・自由党の党首選挙 開票へ NHK 2025年3月9日 18時50分
9年余りにわたってカナダを率いてきたトルドー首相の後継を選ぶ与党・自由党の党首選挙は9日、開票が行われます。選挙では、関税措置などでカナダに圧力をかけるアメリカのトランプ政権にどう向き合うかが大きな争点となっています。
カナダで2015年から政権を率いてきたトルドー首相は、インフレへの対応などをめぐって支持率が低迷する中、1月はじめ、首相と、与党・自由党の党首を辞任する意向を表明しました。
トルドー氏の後継を選ぶ自由党の党首選挙には
▽カーニー元カナダ銀行総裁や
▽トルドー氏に反発して辞任したフリーランド前副首相兼財務相など4人が立候補しています。
カナダに対しては、アメリカのトランプ大統領が「51番目の州になるべきだ」と繰り返し発言しているほか、薬物の流入などを理由にメキシコとともに25%の関税を課すとするなど、強硬的な姿勢をとり続け、カナダ国民の間には「反トランプ・反アメリカ」の感情が広がっています。
党首選挙でも各候補者は報復関税などの対抗措置や、アメリカへの依存を減らすための新たな市場の開拓などを掲げて支持を訴え、アメリカのトランプ政権にどう向き合うかが大きな争点となっています。
事前に登録した党員によるオンラインの投票は9日の午後、日本時間の10日午前4時に締め切られたあと即日、開票され、新たに選ばれた党首はトルドー氏が正式に辞任したあと、次の首相に就任します。
トランプ政権の圧力がカナダ政治に大きく影響
トルドー首相は去年11月、トランプ氏がカナダへの関税措置を明らかにした4日後に、アメリカ南部フロリダ州のトランプ氏の自宅を訪れました。
しかしこの会談のあと、トランプ氏は「カナダはアメリカの51番目の州になるべきだ」と繰り返し発言し、トルドー首相をたびたび「知事」と呼んでやゆしています。
もともと、インフレなどで支持率が低迷していたトルドー首相は、アメリカの関税措置などへの対応をめぐって、フリーランド前副首相兼財務相が辞任するなど、党内外からの圧力がさらに強まり、ことし1月6日、首相を辞任する意向を表明しました。
後継を選ぶ与党・自由党の党首選挙で候補者たちは、トランプ大統領とわたりあうカナダの新しいリーダーには自分がふさわしいとアピールしてきました。
先月行われた候補者の討論会では、トランプ大統領について、カーニー氏は「われわれの国を奪おうとしている」、フリーランド氏は「経済戦争でわれわれを脅かしている」などと批判し、いずれもアメリカに報復関税を課すことで対抗していく姿勢を強調しました。
新しい自由党の党首は、トルドー氏に代わって次の首相に就任しますが、カナダではことし10月20日までに総選挙が行われるため、野党の保守党と政権の座を争うことになります。
公共放送CBCの世論調査では、自由党は支持率でことしはじめには保守党に24ポイント余り差を付けられていましたが、今月5日には保守党は40.3%、自由党は30.8%と10ポイントを切るところまで差が縮まっています。
一部の世論調査では自由党が保守党を逆転していて、トランプ政権への対決姿勢を国民が評価していると受け止められています。
このため自由党は新しい党首のもとで、すぐに総選挙に踏み切るのではないかという見方も出ています。
一方の保守党も「カナダ・ファースト」を掲げ、ポワリエーブル党首が今月4日にはアメリカのカナダに対する関税措置について「トランプ大統領はアメリカの親友を背中から刺した。カナダ人は短気ではなく寛容だが、挑発されたらやり返す」と述べ、対決姿勢を強めています。
トランプ政権の圧力はカナダ政治に大きく影響し、総選挙も「対アメリカ」が最大の争点になりそうです。
カナダでは愛国心とアメリカへの反発強まる
アメリカのトランプ大統領の「カナダを51番目の州に」という発言や関税措置をきっかけに、カナダでは愛国心とアメリカへの反発が強まっています。
「CANADA IS NOT FOR SALE」(カナダは売り物ではない)と刺しゅうされた帽子は、最大都市トロントがあるオンタリオ州のフォード首相がことし1月に記者会見で被って話題になり、注文が殺到しました。
カナダのもう一つの公用語であるフランス語のバージョンや、Tシャツ、パーカーなど品ぞろえも増え、販売するオンタリオ州の会社によりますとカナダ以外にもアメリカや日本など20を超える国々から注文が入っているということです。
商品を販売する会社のリアム・ムーニー社長は「いまカナダ人は強固に結束しています。ほかの国を尊重しながらも、カナダを第1に考えることが重要です」と話していました。
また、政府やそれぞれの州が「地産地消」を掲げて地元の産物を購入するよう呼びかけていて、カナダ製品の情報を提供するウェブサイトや、バーコードをスキャンして生産地を調べるためのアプリを利用する人も増えています。
カナダ国内のメーカーおよそ250社から商品を仕入れているオタワの雑貨店でも、売り上げが去年の同じ時期に比べて3割から4割程度増えていると言います。
経営者のガレス・デービスさんは「カナダとカナダメーカーを支援したいという人が増えました。強い経済を維持し、われわれの隣国からのさらなる攻撃に備えるという共通の理由があります」と話していました。
オタワに住むリッチ・グラスゴーさんとティファニー・ターズさんの夫婦は、できるだけアメリカ製品を買わないようにしていると言います。
グラスゴーさんは「トランプ大統領の『51番目の州』発言と関税措置を受けて夫婦で話し合い、意識的に購買行動を変える決断をしました」と話し、小麦粉や米、シリアルやサプリメントなどをアメリカ産からカナダ産に切り替えました。
グレープや洋梨などの果物は、アメリカ産は避けてブラジルやペルーなど南米産を選んでいるということです。
部屋の壁を塗るペンキもカナダ産の製品を選んだばかりです。
最近は、あらかじめカナダにどんなメーカーがあるのかスマートフォンやパソコンで調べていて、そのための検索エンジンもアメリカのグーグルから切り替える予定だということです。
3人の子どもたちが楽しみにしていたハワイ旅行も、取りやめることにしました。
カナダに対するアメリカの一連の行動が理由だと説明しています。
ターズさんは「自分たちではコントロールできないことがありすぎて、一日中、不安でたまりません。カナダは隣国アメリカの存在を当たり前だと思わず、自分たちの国にもっと誇りを持つべきです」と話していました。
今月3日に公表されたインターネット上の調査では、アメリカのトランプ大統領に好感をもっていると答えた人が12%だったのに対し、78%の人が好感をもっていないと答えています。
また、アメリカ製品の購入を減らしたと回答したのは店舗で67%、オンラインで63%にのぼり、70%がカナダ製品の購入を増やしたということです。
首都オタワの街なかで市民に尋ねると「アメリカ産のレタスより2ドル高いカナダ産のレタスを買いました。小さなことですが、みんなで行うと効果が出ると思います」とか、「アメリカ産ではなく、カナダかほかの国のものだと確認して買い物しています。アメリカのフロリダ州に行く予定でしたが、いまや問題外です」などと、程度の差はあるものの、ほとんどの人がアメリカ製品を買わないようにしていると答えました。
9年余りにわたってカナダを率いてきたトルドー首相の後継を選ぶ与党・自由党の党首選挙は9日、開票が行われます。選挙では、関税措置などでカナダに圧力をかけるアメリカのトランプ政権にどう向き合うかが大きな争点となっています。
カナダで2015年から政権を率いてきたトルドー首相は、インフレへの対応などをめぐって支持率が低迷する中、1月はじめ、首相と、与党・自由党の党首を辞任する意向を表明しました。
トルドー氏の後継を選ぶ自由党の党首選挙には
▽カーニー元カナダ銀行総裁や
▽トルドー氏に反発して辞任したフリーランド前副首相兼財務相など4人が立候補しています。
カナダに対しては、アメリカのトランプ大統領が「51番目の州になるべきだ」と繰り返し発言しているほか、薬物の流入などを理由にメキシコとともに25%の関税を課すとするなど、強硬的な姿勢をとり続け、カナダ国民の間には「反トランプ・反アメリカ」の感情が広がっています。
党首選挙でも各候補者は報復関税などの対抗措置や、アメリカへの依存を減らすための新たな市場の開拓などを掲げて支持を訴え、アメリカのトランプ政権にどう向き合うかが大きな争点となっています。
事前に登録した党員によるオンラインの投票は9日の午後、日本時間の10日午前4時に締め切られたあと即日、開票され、新たに選ばれた党首はトルドー氏が正式に辞任したあと、次の首相に就任します。
トランプ政権の圧力がカナダ政治に大きく影響
トルドー首相は去年11月、トランプ氏がカナダへの関税措置を明らかにした4日後に、アメリカ南部フロリダ州のトランプ氏の自宅を訪れました。
しかしこの会談のあと、トランプ氏は「カナダはアメリカの51番目の州になるべきだ」と繰り返し発言し、トルドー首相をたびたび「知事」と呼んでやゆしています。
もともと、インフレなどで支持率が低迷していたトルドー首相は、アメリカの関税措置などへの対応をめぐって、フリーランド前副首相兼財務相が辞任するなど、党内外からの圧力がさらに強まり、ことし1月6日、首相を辞任する意向を表明しました。
後継を選ぶ与党・自由党の党首選挙で候補者たちは、トランプ大統領とわたりあうカナダの新しいリーダーには自分がふさわしいとアピールしてきました。
先月行われた候補者の討論会では、トランプ大統領について、カーニー氏は「われわれの国を奪おうとしている」、フリーランド氏は「経済戦争でわれわれを脅かしている」などと批判し、いずれもアメリカに報復関税を課すことで対抗していく姿勢を強調しました。
新しい自由党の党首は、トルドー氏に代わって次の首相に就任しますが、カナダではことし10月20日までに総選挙が行われるため、野党の保守党と政権の座を争うことになります。
公共放送CBCの世論調査では、自由党は支持率でことしはじめには保守党に24ポイント余り差を付けられていましたが、今月5日には保守党は40.3%、自由党は30.8%と10ポイントを切るところまで差が縮まっています。
一部の世論調査では自由党が保守党を逆転していて、トランプ政権への対決姿勢を国民が評価していると受け止められています。
このため自由党は新しい党首のもとで、すぐに総選挙に踏み切るのではないかという見方も出ています。
一方の保守党も「カナダ・ファースト」を掲げ、ポワリエーブル党首が今月4日にはアメリカのカナダに対する関税措置について「トランプ大統領はアメリカの親友を背中から刺した。カナダ人は短気ではなく寛容だが、挑発されたらやり返す」と述べ、対決姿勢を強めています。
トランプ政権の圧力はカナダ政治に大きく影響し、総選挙も「対アメリカ」が最大の争点になりそうです。
カナダでは愛国心とアメリカへの反発強まる
アメリカのトランプ大統領の「カナダを51番目の州に」という発言や関税措置をきっかけに、カナダでは愛国心とアメリカへの反発が強まっています。
「CANADA IS NOT FOR SALE」(カナダは売り物ではない)と刺しゅうされた帽子は、最大都市トロントがあるオンタリオ州のフォード首相がことし1月に記者会見で被って話題になり、注文が殺到しました。
カナダのもう一つの公用語であるフランス語のバージョンや、Tシャツ、パーカーなど品ぞろえも増え、販売するオンタリオ州の会社によりますとカナダ以外にもアメリカや日本など20を超える国々から注文が入っているということです。
商品を販売する会社のリアム・ムーニー社長は「いまカナダ人は強固に結束しています。ほかの国を尊重しながらも、カナダを第1に考えることが重要です」と話していました。
また、政府やそれぞれの州が「地産地消」を掲げて地元の産物を購入するよう呼びかけていて、カナダ製品の情報を提供するウェブサイトや、バーコードをスキャンして生産地を調べるためのアプリを利用する人も増えています。
カナダ国内のメーカーおよそ250社から商品を仕入れているオタワの雑貨店でも、売り上げが去年の同じ時期に比べて3割から4割程度増えていると言います。
経営者のガレス・デービスさんは「カナダとカナダメーカーを支援したいという人が増えました。強い経済を維持し、われわれの隣国からのさらなる攻撃に備えるという共通の理由があります」と話していました。
オタワに住むリッチ・グラスゴーさんとティファニー・ターズさんの夫婦は、できるだけアメリカ製品を買わないようにしていると言います。
グラスゴーさんは「トランプ大統領の『51番目の州』発言と関税措置を受けて夫婦で話し合い、意識的に購買行動を変える決断をしました」と話し、小麦粉や米、シリアルやサプリメントなどをアメリカ産からカナダ産に切り替えました。
グレープや洋梨などの果物は、アメリカ産は避けてブラジルやペルーなど南米産を選んでいるということです。
部屋の壁を塗るペンキもカナダ産の製品を選んだばかりです。
最近は、あらかじめカナダにどんなメーカーがあるのかスマートフォンやパソコンで調べていて、そのための検索エンジンもアメリカのグーグルから切り替える予定だということです。
3人の子どもたちが楽しみにしていたハワイ旅行も、取りやめることにしました。
カナダに対するアメリカの一連の行動が理由だと説明しています。
ターズさんは「自分たちではコントロールできないことがありすぎて、一日中、不安でたまりません。カナダは隣国アメリカの存在を当たり前だと思わず、自分たちの国にもっと誇りを持つべきです」と話していました。
今月3日に公表されたインターネット上の調査では、アメリカのトランプ大統領に好感をもっていると答えた人が12%だったのに対し、78%の人が好感をもっていないと答えています。
また、アメリカ製品の購入を減らしたと回答したのは店舗で67%、オンラインで63%にのぼり、70%がカナダ製品の購入を増やしたということです。
首都オタワの街なかで市民に尋ねると「アメリカ産のレタスより2ドル高いカナダ産のレタスを買いました。小さなことですが、みんなで行うと効果が出ると思います」とか、「アメリカ産ではなく、カナダかほかの国のものだと確認して買い物しています。アメリカのフロリダ州に行く予定でしたが、いまや問題外です」などと、程度の差はあるものの、ほとんどの人がアメリカ製品を買わないようにしていると答えました。