くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

狼おとこ(24)

2022-03-04 21:39:30 | 「狼おとこ」

 父が言ったとは思えない言葉に、アリエナは顔色を失っていた。涙が流れ出すままに、ぐっと拳を握っていた。
「アリエナ、食べないのなら片づけてしまいますよ」
 エレナの落ち着き払った言葉に、アリエナは踵を返すと、自室に向かって行った。


 アリエナの受難は、それ以後も続いた。一日一日と生活が積み重なって行くたび、やはりひとつひとつ、悲しみが増えていった。町中の人々が祝福した結婚式。家族の中で、一人だけ借り物の衣装を身につけながら、他人事のように誓いの儀式を眺めていた。父のケントは、まったくエレナのなすがままだった。アリエナが生まれる前から働いていた給仕を、いとも簡単に首にしてしまったのも、彼女の差し金だった。アリエナは、だんだんとひとりぼっちになっていくのを感じていた。大切なものが、それこそ垢のようにこそげ落ちていく。最後に残った心の繋がりまでも、糸のように細く、今にも断ち切れてしまいそうなほど、頼りなげだった。
 ダイアナは、気落ちしているアリエナの唯一の心の支えだった。二人は以前よりも頻繁に行き来するようになっていた。
「大丈夫よ、心配しなさんなって。アリスはきっと生きてるわ」
「そう思う?」と、目に涙をためたアリエナが訊いた。
「だって、外に放り出されただけでしょ。なら、今でもその辺にいるはずじゃない」
「でもね、ダイアナ。アリスはね、どこにもいなかったのよ……」
 アリエナは途切れ途切れに言うと、溢れ出す涙をこらえきれずに嗚咽を洩らした。
「だから言ったじゃない。きっと、犬が好きな人が連れて行ったんだって。もし帰ってこなかったとしても、その人の家で、大事にしてもらってるわよ」
「そう思う?」
「もちろん」
 ダイアナはにっこり笑うと、アリエナに「元気を出して」と言った。
「うん」と、アリエナはこくりとうなずいた。
「じゃ、あたしこれで帰る。勉強しなきゃ学校に入れないわ」
「えっ、ダイアナ、本当にロンドンへ行くつもりなの」
「もちろんよ。あたし、鍛冶屋をやらされるのは嫌なの。それにこんな田舎、もう飽きちゃったわ。学校を出て、華々しい社交界にデビューするの。そして、紳士と結婚して、夢のようなお屋敷に住むのよ――」
 ダイアナは宙を仰ぎ、うっとりと、未来の自分を思い浮かべた。
「もしそうなったら、いいわね」
「なるわ。あたし、絶対になってみせる」
 ダイアナは言うと、アリエナの手を取りながら、
「向こうへ行ったら、アリエナとはしばらく会えなくなるわ。けど、絶対に呼んであげる。そうしたら、わたしのお屋敷で、一緒にお茶を飲みましょう。それから、二人でロンドン中を見て回るの。もちろん買い物もね」

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よもよも

2022-03-04 06:06:44 | Weblog
やれほれ。

自分達もサイバー攻撃受けてるかも、

なんて話を書いたけど、

会社から注意喚起のメールが入って、

どうもあながち思い違いとは言い切れないみたい・・・。

ニュース見てるとあれもこれも制限するとかって連日状況が変わってるけど、

あんだけ制限されたら、国の機能凍りついちゃうんじゃないの??

開き直って暴れ出しちゃうんじゃないかって、ヒヤヒヤする部分もあんだけど、

どう考えてんのかね??

はてさて、大雪のシーズンも3月に入れば溶けて楽になるさ、

思って頑張ってたけど、思いのほか寒い日が続いてて、

最盛期ほどじゃないけど、もう毎朝除雪から始まるのは勘弁してほしいわ。

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