くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

狼おとこ(37)

2022-03-17 20:15:27 | 「狼おとこ」


「やめろ!」

 人垣をかき分けるようにして、一人の少年が飛び出してきた。グレイだった。
 グレイは、薪の山に突っこむと、めらめらと燃え広がっていく火を蹴散らし、燃え広がるのを食い止めようと必死だった。オモラの所で働く山子達、山頭のカッカ、町長のケントが、こぞってグレイを引き離した。グレイを慕ってついて来たアリスが、主人を助けようと懸命に戦ったが、男達の、それこそ火のような勢いを止めることはできなかった。
 火は、みるみるうちに大きさを増した。ごうごうと唸りながら、盛んに火の粉を吹き上げた。その熱さは、遠巻きにしている人々の肌さえ、焼け焦げてしまいそうだった。
 バードの着衣の裾に、生き物のような火が燃え移った。処刑場に連れてこられる前から、激しい拷問によって自白を強要されていたバードには、もはや無実を叫ぶ気力さえ残ってはいなかった。

「ぼくだ、ぼくが狼男なんだ!」

 グレイが再び飛び出してきた。その顔は、打撲による内出血でぱんぱんに膨れ上がり、唇からは太い血の筋が伸びていた。
「ばかやろう――」と、カッカがあわててグレイを止め、その場で力まかせに頬を殴った。
「ばかやろう、あいつは狼男なんだ。おまえがいくらかばったって、呪われた血はもう清めることはできやしないんだ」
「ばかやろう……」と、グレイを殴るカッカの目には、溢れそうなほどの涙が溜まっていた。
 バードの姿が、炎に包まれていった。黒煙を吐き、天まで届かんとする火柱が、バードをすっぽりと飲みこんでしまった。もう誰も、赤い火炎の奥にバードの姿を認められる者はいなかった。
 アリエナは泣いていた。もうどうなってもいいと思っていた。殴られているグレイのように、自分も殴られなければ、そう思っていた。群衆が、燃えちまえと歓声を上げていた。バンザイをしている者もいた。子供達は無邪気に騒ぎ、女達は炎に向かって石を投げつけた。アリエナは、言葉にならない獣のような叫びを上げていた。


 バードは、天に昇っていった。すべてが燃え尽きた後、小さなおき火だけが、パチパチとはぜていた。もう、西の空は茜色に染まり、冷たい夜気が辺りに漂っていた。
 あれほど騒がしく、ヒステリックだった群衆は、もう誰一人残っていなかった。しかし、まだ立ち去りがたい影が、幾筋か地面に長く延びていた。
「ばかやろう……」と、カッカは言いながら、グレイを抱き上げた。「ばかやろう、おまえが死んだって、どうなるもんでもないだろうが。――ごめんな、こうするしか、おまえを助けられなかったんだ。こうするしかな」
 カッカは、涙声になっていた。腕の中でぐったりとしているグレイは、しかしカッカの言葉を聞いていたのか、力なく微笑もうと、口元をかすかに動かした。

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よもよも

2022-03-17 06:08:37 | Weblog

やれほれ。

あれから11年。。

なんて遠い昔みたいな感じになってたけど

自然は恐いよなぁXXX

日付が変わりそうな深夜になって

ケータイに速報が入ってビビった。。

あれ、地震なんてないよなって、北海道は揺れなかったんだけど、

あわててテレビの電源入れて、

ゾッとした。。

なんか11年前の感じとそっくりでしょ。

くわえて停電も発生してるって、またぞろ胆振東部地震の後の

ブラックアウトの記憶も思い出して、

2重にビビったXXX

最近世の中おかしいわ・・・。

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