「放してよ!」と、アリエナは手足をばたつかせてもがいた。「知らなかった、知らなかったって。あんた達も分からず屋の大人と一緒よ。知らなかったで人を殺しておいて、それで許されるわけがないじゃない」
「――だって、バードを犯人に仕立てなければ、おれ達に火がつくって。だから、だからおれ、あいつが狼男だって、トムと一緒にたくらんで密告したんだよ」
ごめん、と言いながら、嗚咽を漏らすトーマスの腕が、突然「いてぇ」という叫びとともに緩んだ。
アリエナは、その機を逃さず、さっと腕をすり抜けた。トーマスは、転げのたうち回って、苦悶の声を上げていた。その腕には、いつ戻って来たのか、アリスがしっかりと食らいついていた。どこに行っていたのか、アリスの首から、リードが消えていた。
「放せよぉ」と、トーマスが耳をつんざくような声で叫んだ。しかしアリスは、たとえめったやたらに殴られても、幾度となく地面に叩きつけられても、咥えた腕を決して放そうとしなかった。逆に糸を引いてしたたり落ちる血が、さらにいっそう深く噛みついていることを示していた。
黙って眺めていたトムも、あわててトーマスに走り寄ってきた。そして、アリス目がけてナイフを振り下ろそうと、頭上高く持ち上げた。すると、アリスはいともやすやすと噛みついていた腕を放し、暗闇に沈む林の中へ入っていた。
あっけにとられたトムが、アリスが消えた林に目を転じると、そこに光る一対の鬼火を見た。
次から次へと血が流れ出す腕を抱えて、トーマスは転げ回っていた。仲間の三人が駆けつけたが、あたふたと、お互いの青くなった表情を見比べるばかりだった。青くなっていたのは、アリエナも同様だった。腰が抜けたように座ったまま、後ろに手を突いて、呆けたようにトーマスを見ていた。
「なんだよ、おまえは――」と、トムが人の輪郭を持った鬼火に言った。
トムの殺気をはらんだ声を聞いて、その場に居合わせた全員の目が、トムへと注がれた。
祭りの最後を飾った花火は、既に終わりを遂げていた。先ほどまで色鮮やかに燃えていた空も、今では無数に瞬く星の世界に戻っていた。墓標のない墓場は、ひときわ大きく光る満月の明かりによって、緑色の舞台のように浮かび上がって見えた。
のっそりと、それほど大きくはない背丈の人影が、草を踏むカサカサという音をさせながら、近づいてきた。月光の丸い光の輪に照らし出されたのは、グレイだった。
「こいつ、見てやがったのか」と、吐き捨てるように叫んだトムは、素早く駆け寄ると、グレイの心臓にナイフを突き立てた。
アリエナの甲高い悲鳴が、静寂な山々に響き渡った。見守っていた三人とアリエナは、動けないトーマスを置いて、次々と蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
後に残ったのは、トムとグレイだけだった。
グレイは、ナイフを突き立てたトムの腕をつかんだまま、じっとその場に立ちつくしていた。
「やっぱりおまえだったんだな、トム――」と、野太い、腹の奥に響くような声で、グレイが言った。
やれほれ。
去年も思ったけど、
自然の力は偉大だよね。。
先週末じんわり雨が降ったと思ったら、
あっという間に地面が表に出てきて、
あんだけ積もってた雪が見る影もないくらい
溶けて痩せちまった・・・。
こうなると春支度も進まなきゃって
着る物やら準備する物やらでなんとなく気がせいてくるんだけど、
これも去年と同じで、なんにも手につかない。。
でも、さすがに春は寝付きがいいんだよね。
短い睡眠時間だけどさ、
年中通してこんな寝心地がいいんなら、
年間通して高いパフォーマンス維持できんだけどなぁ。