かおりは故郷に戻ってきた。もう何年も経っている気がする。
出てきた時と何も変わらない止まっている時間、立ち止まっていても誰ともすれ違わない昼下がり、澄んだ空、その空気の中を遠くから掴む様な視線を感じさせる春子が待っていた。
「どう?うまくいってる」
「ええ、まあ・・」
何と答えていいのか分からなかった。
「そう、それならよかったわ」
隣に並んで微笑みかけてくる彼女は、全くの別人にみえた。
「かおりちゃんのお母さんね、この頃誰とも話さなくなってね、時々あの子はどこって、あなたを探してばかりいるの」
「昔からそうなんです、わがままだから・・子供の私にお客さんを呼びに行かせるようなひとですから」
「でもとにかく会いにいきましょう」
春子に促されては、かおりは何も言う事ができなかった。
母と久々に会ってみても、特に感じるものはなかった。母も以前と全く変わらない。
「何しに帰ってきたの、東京でうまくいってないのかい?」
「そんなことないよ・・春子さんに会う用事もあったから」
「春子さん、あのひとの事はどうなっているの」
寺井を気にしている。
「別に何も、随分面倒をかけてしまってるけど」
「春子さんの言うことをちゃんと聞いているんだろうね」
「迷惑をかけたりしていないわ」
「そうかい、うまくやっていけるのかい」
「できれば、早く独立した方がいいんだけど」
「それは、春子さんが望んでいればだけどね」
「そんなこと、お母さんに関係ないでしょう」
「私は、あんたをあの方々に譲ったのだから」
「そんな言い方はやめてよ・・私にだって男の友達位いるんだから」
「東京の男かい?」
「違うわ、同じ新潟のひとよ」
「もう仲良くなったのかい」
「変な言い方しないで」
「何て名前」
「藤代さん」
「藤代・・そのひと十日町の人じゃない?」
出てきた時と何も変わらない止まっている時間、立ち止まっていても誰ともすれ違わない昼下がり、澄んだ空、その空気の中を遠くから掴む様な視線を感じさせる春子が待っていた。
「どう?うまくいってる」
「ええ、まあ・・」
何と答えていいのか分からなかった。
「そう、それならよかったわ」
隣に並んで微笑みかけてくる彼女は、全くの別人にみえた。
「かおりちゃんのお母さんね、この頃誰とも話さなくなってね、時々あの子はどこって、あなたを探してばかりいるの」
「昔からそうなんです、わがままだから・・子供の私にお客さんを呼びに行かせるようなひとですから」
「でもとにかく会いにいきましょう」
春子に促されては、かおりは何も言う事ができなかった。
母と久々に会ってみても、特に感じるものはなかった。母も以前と全く変わらない。
「何しに帰ってきたの、東京でうまくいってないのかい?」
「そんなことないよ・・春子さんに会う用事もあったから」
「春子さん、あのひとの事はどうなっているの」
寺井を気にしている。
「別に何も、随分面倒をかけてしまってるけど」
「春子さんの言うことをちゃんと聞いているんだろうね」
「迷惑をかけたりしていないわ」
「そうかい、うまくやっていけるのかい」
「できれば、早く独立した方がいいんだけど」
「それは、春子さんが望んでいればだけどね」
「そんなこと、お母さんに関係ないでしょう」
「私は、あんたをあの方々に譲ったのだから」
「そんな言い方はやめてよ・・私にだって男の友達位いるんだから」
「東京の男かい?」
「違うわ、同じ新潟のひとよ」
「もう仲良くなったのかい」
「変な言い方しないで」
「何て名前」
「藤代さん」
「藤代・・そのひと十日町の人じゃない?」
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