夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

ファミリー・ミュージック(1)

2016年09月23日 | クラフト


ハワイ音楽はファミリー・ミュージックなのだよ
お父さんがギターを弾いて歌い、お母さんが娘たちとフラを踊る、ご近所の人が集まってパーティーは続く

日本ではなかなか見かけない光景だが、彼らにとっては餅つきを楽しむくらい日常的のようだ
だから職業ミュージシャンはいなかったし、観光向けミュージックがハワイ音楽だという誤解が長く続いた

英国国王から贈られた牛が繁殖してしまい、その管理のためにテキサス、メキシコあたりのカウボーイがやってきた
彼らはギターを携えて来ていて故郷を懐かしんだという

やがてカウボーイたちは帰郷したが、ギターは置いていった
ギターを手にしたハワイの人々は緩んでしまったチューニングを思い思いの調弦で演奏する

オープン・チューニングのスラック・キー・ギター奏法はこんな経緯からハワイで生まれた
個々に開発された調弦と奏法テクニックは家伝となって他人へは教えなかった

レイ・カーネ先生が少年の頃、ビーチで弾いている老人に教えを乞うと断られたのはこういう歴史があったからだろう
レイ少年は海に潜って魚を獲って老人に渡したがそれでもダメだった、これを何回も繰り返して根負けした老人がついに教えてくれた

ギャビィ・パヒヌイのレコーディング「Hi'ilawe」を聴いて音楽の道へ向かった人は多いようだ
サニー少年は母に連れられてギャビィを訪ねる、キングストン・トリオのデーヴ・ガードも感化され後年ギャビィのインタビュー、ソロアルバムを作ることになる

スティーブ・シーグフリードによるパニニ・レコード創設に至る意気込みもすごい
米本土にてスーベニール音楽のレコーディングに駆り出されて十分なギャラも得ずプライドを傷つけられたハワイのミュージシャンの地位と名誉回復を打ち立てたのだから

ハワイにバカンスにやってきたライ・クーダー夫人はお土産にギャビィのセピア・アルバムを買う
これを聴いたライは「ぶっ飛んだ」、ライは米本土へギャビィを呼んで、聴いてまたぶっ飛んだ



The Pahinui Family & Friends1

感性という個性

2016年09月23日 | 音楽


「すべての人の心に花を」は好きな楽曲でこれまで随分演奏してきた
この曲ばかりを集めたCDアルバムがあるくらい、様々なアーチストがカバーしている

秀逸なのはハワイでレコーディングされたライクーダーが参加しているもの
以来私の中ではこれがお手本として最上位に君臨している

テレサ・ブライトのハワイ語バージョンは独特の爽やかさを持ってアレンジされ、まるで別物のような仕上がりだ
スラックキーギターで弾いていると思われるギター一本のバッキング、独特のタメで歌うハワイ語になんの違和感もない

コードの進行を見ればこれが日本サイドの常識から外れてくる
小節の半分で変えてみたりすんなり循環コードですませるわけではない

以前にも書いたが、フィリピンの少年たちがガットギターで弾いて歌ってくれた「君といつまでも」
「A C#m」が我々の常識だが、これを「A C#7」とやって平然と歌っている

いや、単純に間違えて覚えただけかもしれないが、これが実にエキゾチックなアレンジとなって聴こえた
朝日の爽やかな日光でなくて、真っ赤な夕焼けの空を思わせるような広がりがある

楽曲の捉え方が民族性によってこんなに変わるとしたらそれは魅力になる
感性の違いと片付けてはいけないと思うのだ

クロード・ルルーシュが、「歌詞とか音程とかでなくてその人の内面が出る歌」と言っていた
とかく声量や絶対音感を求める日本にあって、感性という個性は重要だ

 

Hana(花)Hawaiian Version(すべての人の心に花を)Pua Ka Ipo-Teresa Bright