中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

半巾帯連作「ちいさい秋みつけた I、II、III」

2024年01月05日 | 紬の上質半幅帯
謹賀新年
本年も宜しくお願いいたします。

健康に留意して善き仕事をしたいと思います。

能登半島地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、
被災されたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。

東京でも長く続く大きな横揺れに驚きました。
いつものように元旦はお屠蘇とお節で新しい年を迎えましたが、お重は輪島の角好司さんの作品「更紗」に盛り付けました。以前のブログでもご紹介しましたが、いつ見ても愛らしく、また技術も素晴らしく感心して家人とも話していました。
輪島塗の職人さんたちもどれほど力を落とされていることか、察するにあまりあります。

甚大な被害で直ぐの復興は見込めないと思いますが、国は支援の手を早く差し伸べて欲しいです。

さて、昨年仕上げた半巾帯の連作は間もなく仕立て上がってきますが、半分に折らない布のままで、少しご紹介します。

前回は「早春」をイメージしましたが、今回は「初秋の移ろい」のイメージで作ろうと思っていました。
タイトルは「ちいさい秋みつけた」です。

童謡『ちいさい秋みつけた』は、作詞:サトウハチロー、作曲:中田喜直(1955年発表)による曲で知らない人はいないと思います。
サトウハチローの繊細な観察で、かすかな秋の気配を発見し、詩にしています。

身近な草木で染めた糸を見ていると、強い鮮やかさはないけれど、自然界の少し翳りを含んだような微かな色、季節の間の色。何色と色名が付けられないような深みのある色がほとんどです。

普段慣れている人工的な色から少し離れて、この帯の中から”ちいさい秋”を発見し、ふっと自然と出会ってもらえたなら嬉しいのです。

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「ちいさい秋みつけた I」




お手持ちの着物は2点とも凝った内容の大島とお召しの素敵なもので、柄には色も使われていましたので、帯は静かに着物を引き立てるべく、それでいてさっぱりしすぎて軽くならないように考えました。
地色に近い2色のオフホワイト系を使い、縞を通しました。この2色を選ぶのに時間を掛けました。

「ちいさい秋みつけた II」



こちらの方は、私がいいと思うように織ってくださいということでしたが、「少し重めに」という一言もあり、よくお似合いであろうベージュ系、紫グレー、青磁色を配しました。たて縞が凝ってますので、よこは喧嘩しないような段にしました。どんな着物に合わせてくださるのでしょう・・。

「ちいさい秋みつけた III」



こちらも[I]と似た感じですが、たての縞を通すように地に近い段を配しました。
幅の広い段は同じ繰り返しではなく、幅を場所によって変えてあります。
結びによってちょっと変化が出ます。
ご本人はピンク系の肌ですが、合わせる紬が赤味の茶なので、被りすぎないように地色はあえて黄色系の白茶にしました。そして段にはピンク系白茶で浮き立つようにしました。

画像では微妙すぎて伝えられないのですが、三本とも地色は色も糸質も違うものを混ぜて織りました。トップの画像の耳を見ると混ぜているのが分かります。

次回は仕立てあがったものをアップします。




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