中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

武蔵野美術大学特別講義――「紬きもの塾」移動教室⑤

2014年06月13日 | 「紬きもの塾」移動教室



ことしも武蔵野美術大学特別講義へ今年も行ってきました。
学生たちの感想が送られてきました。
感想に添えられた似顔絵、ボサボサ頭と鼻眼鏡、よく特徴を掴んでますね。

今年は時期を少し早めて、6月5日に行いました。
昨年の感想の中に、もっと早くこの講義を聴きたかったという学生の声もありましたので、秋に向かっての制作に役立ててもらえたらと早めました。

今年の学生はおとなしい(反応がイマイチ静か・・・!)というような噂も聞いていましたので、作戦を立てて行きました。

いつものように前半は糸や紬織りとは何か・・の話と糸取りの実習も進めていきました。
休憩をはさんだ後半は、染め、織り、デザイン、着物の取合せ文化などの話、最後に私の私物の紬をきてもらう・・というのがいつものパターンでしたが、今回は後半の始めのほうで先に私の紬を着てもらい、半幅帯も私のものを使って締めてもらいました。

「着物を着たい人、2名いませんか?」「はい!」「はい!」「はい!」「はい!」「はい!」おとなしい人たちのはずでしたが、、、5人が真っ先に手を挙げました。ジャンケンで2人を決めてもらい、さらにはピンク系の梅染の着物と黄色系のコデマリ染のどちらを着たいかも、やはりジャンケンになりました。

着始めると、周りで見守るクラスメートたちから「可愛いい!」「似合うよ~」「綺麗!」と声がかかり、パシャパシャとシャッター音も鳴り、盛り上がりは絶頂に!
着物をほとんど着たこともない人ばかりでしたが、纏った本人たちも喜びの表情でいっぱいでした。
寄せられた感想の中にも、「植物の自然な色は誰でも似合う色だ」というのもありました。
半幅帯の文庫結びも自分でやってもらいました。「わ~意外に簡単!」とも言ってました。

テキスタイル科の学生ですから、布染めや織りも実習がありますので、半幅帯ぐらいは自作してみてくださいと、長さや幅、寸法のことなども教えました。

着物には全く無関心そうな人たちでしたが、やはり風合いの良い布や自然な無理のない色合いは、先入観がないだけに直に触れてみると素直に受け入れられるように思いました。

今回は感想の中から特に着物について書かれたいくつかご紹介しましょう。

「親から子へ受け継ぎ、何十年も使える。人の手で織り自然の色を纏う、とても温かくて素敵だと思いました。」

「繭から1本の糸をつむぐこともすごく繊細な作業で、それを体験したあとに実際の糸(染められた)や着物を見ると、どれだけの時間がかかっているのか、すごく大切にする気持ちがわかる。
日本の文化や、物を大切にすることは着物だけでなく生活のいたるところにあって、今の日本でも忘れてはいけない・・・というより忘れたくない大切な文化だと実感。自分でも大切な一着を普段着として着られるようになりたい」

「この講義を受ける前まで着物のイメージは上品で高貴な方が着るもので、あまり自分が着るイメージはありませんでした。でも着物の着方、たたみ方など経験したことのないことができ良かったです。長く着続けることの着物に魅力を感じた講義でした」

「先生が着ていらっしゃったお着物もとても綺麗で、実際に触らせてもらって手触りが優しく、うつくしいなと思い、とても興味を持つことができました」

「草木染の方法と、着物の着付けは前から本当に知りたかったことなので嬉しかったです。先生もおっしゃっていましたが、着物は周りの人々を幸せにしてくれる力があるなあと改めて感じました。
成人式で着た振袖は母から受け継いだ絞りの素敵な着物です。早く私の娘にも着せたいなぁと思いました。着物に魅了された3時間でした。幸せな気持ちになりました」

「私は留学生として、韓国には日本の着物文化のようなものが有りませんので、すごくうらやましいです。今日は着物の美しさを再び感じました」

そしてさらには私がこの日着ていた着物や半幅帯、自作の銀の帯留めも「先生可愛い!」と好評で、学生との記念写真も一緒にと、撮られました。これは今回初めての経験でした。でも楽しかったです。


このあとの講義はみなさん真剣な表情で聴いてくれました。
作戦、成功!でした。

早いうちに質の高いものと出会えるように、大学側も、ものをいきなり作らせるのではなく、良いものをジャンルを問わずたくさん観たり触れたりする機会を学生にあたえてほしいと思います。

様々な素材や特性、技法、そして人々のあいだでどんなふうにものが作られ使われてきたのかなど、工芸の根本をもっと深く知ってもらうことが大切と思います。

これから現代の工芸が生き残れるのかは若い世代にかかっています。
質の高い手仕事を権威付け、ただ眺めさせるだけではなく、生きたかたちで市中の人々に知ってもらうことが何より大切です。

絶滅危惧種の「工芸」ですが、なくしてはいけないと思います。
それは人の仕事の原点だからです。


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