カモシカのユリです。
ユリには左前脚がありません。
カモシカが3本脚で過ごすと、
擦れたり、身体に負担がかかるので、
服を着て過ごしているのです。
4年前、
ユリは左前足骨折の状態で保護されました。
野生動物にとって、脚の骨折は大ごとです…
脚は壊死して、生死にかかわることもあります。
動物園のスタッフは、
やむ得なく手術で脚を切断することしました。
ユリは3本脚で、
須坂動物園で暮らすこととなったのです。
実は…
ユリには、もうひとつ、こんな話もあります…
2月の寒い冬に、
怪我をしたユリが動物園に保護されました。
しばらくして、切断手術も終わり、
ゆりは順調に回復しました。
食欲も戻り、体重も増え、飼育員さんたちも、ひと安心です。
しかし、
6月のある日、
ユリに異変が起こりました。
「どうしたんだろう」
近づいてみると…
そこには、
小さなカモシカの赤ちゃんがいました…
身籠もったまま、大けがをし、
人間に保護され、大手術を受けたユリは、
ひっそりと出産したのです。
スタッフも、ユリの治療に懸命だったため、
保護された時には妊娠した状態であったことに
気づきませんでした…
赤ん坊はひどく弱っていたため、
すぐに人工ほ育に切り替えました。
残念ながら、
懸命な世話も甲斐なく、
小さな命は、天国へ旅だってしまったのです…
ユリの受けたストレスや切断手術の影響なども考えると、
動物園スタッフも、どれほど心を痛めたでしょうか…
いまでも、
ユリはこの動物園で静かに暮らしています。
カンガルーのハッチで有名になった須坂市動物園。
カモシカのユリのいる動物園でもあるのです。