住職のお経はすごくダイナミックで 色々な楽器のようなもので 伴奏のようにして 鳴らしながら唱えています。
聴いているのは オイラと母ちゃんと銭婆 それに本日メインの父ちゃんだけです。
大きな音とかもして 耳も痛かったのですが 住職が一生懸命 父ちゃんにお経を唱えていただき 嬉しく思いました。
他の葬式とかで たまに気の無い坊さんを見ますが 今回ここまでやってくれますと 感謝の気持ちが 心の中から生まれてきます。
これなら足のしびれも 我慢のしようもあるってもんです。
『 父ちゃん、良かったなぁ(*^_^*) ちゃんと聴いてる? 』 お棺を見つめてそう思いました。
長くゴージャスでダイナミックなお経が終わり しびれの回ったオイラは 立つのもやっとで
太い柱を伝って 何とか立ちましたが それでも少しの間 そこからは動けませんでした。
外で待っていた葬儀屋さんが 時間を見計らって 中に入り 「 そろそろ出棺の準備をしたいと思いますが よろしいでしょうか? 」
と、言って 準備せねばならぬと もう少し しびれていた足を 何とか動かして 父ちゃんのところに行きました。
父ちゃんの顔の周りに 飾っていた花を切って たくさん置きました 「 おー! 父ちゃん! 似合うかも^^ 」
母ちゃんが 奥から 「 これは父ちゃんが持っていた 五書と経本やけど 一緒に入れてくれんかね? 」 と葬儀屋さんにお願いします。
「 この本は厚すぎて燃え切らないかもしれませんので 開いた状態で入れましょう 」 と言いながら
御書を真ん中から開いた状態で 胸のあたりに 置きました 経本も同じ様にして 入れます。
『 そういえば 三年前、父ちゃんの胃ろうの手術の時 その前の日に 何が食べたい? って訊いたら、 寿司が食べたいって言ってたな、 」
その日を最後に 口からは何も入れる事が出来ず 声も失って 可哀そうだなと思っていましたが
今回 寿司を買って お棺の中に入れる暇もなく とても悔しくて残念に思いました。
もう、そろそろ 父ちゃんの顔も見る事も無くなると思い 切なくなってきますが 不思議に涙は出ません、
母ちゃんとオイラは 父ちゃんに喋って 最後の名残を惜しみます。
オイラは本当に最後なんだなぁという実感がまだ湧きません、
今まで ずっと 一方通行で喋ってきたから この先も ずっと喋っていてもいいような気がしたんです。
「 父ちゃん、最後に寿司を食わせてやりたかったなぁ、 でも、出来ないよ、勘弁な… 」
時間は待ってくれません、 「 そろそろまいりましょう 、 」
お寺から 霊柩車まで ほんの20mくらいでしょうか この距離を 葬儀屋さんが運ぶだけで 6万円もかかると思ったら
少しだけ 儲かったかな? とか チラっと思ったりもしました^^;
しかし、この日は台風の影響で その距離でも 全員 雨で濡れてしまいました。
母ちゃんは 父ちゃんの乗っている 霊柩車に乗って
オイラは 住職と銭婆を乗せて 霊柩車の後ろを付いて行くといった形で 出発しました。
運転中 見ると 霊柩車の後ろの窓から 母ちゃんがしきりに運転手に話しかけている姿がみえます。
顔が運転手の方に向いたまま ずっと動いていました。
住職も前の霊柩車から見える 母ちゃんの姿を見て 「 お母さん 楽しそうに喋ってますね^^ 」と言って笑ってます。
そして 「 やっぱりあの人材は うちの寺には必要な人材だ! 」 と言いながら笑っていました。
お寺から 火葬場まで 30分チョイかかりましたが その途中、 お持ちかえりの寿司屋さんを発見、
「 ああ! すし屋だ! 」 と思いましたが、 そんな事 先を走っている霊柩車は知るはずも無く どんどん進んで行きます。
仕方ないのでオイラも そのまま通り過ぎて行きました。
火葬場に着いて お棺を所定の位置に一旦安置し、住職がお経を唱えてくれます。
葬儀屋さんが 「 これで本当のお別れになります 最後にお顔を ご覧になって下さい 」 という言葉が ウワの空に聞こえます。
「 父ちゃん、とうとうお別れなんだってなぁ、 オイラ、何だか信じられないよ… 」
その後すぐに係員が お棺を 焼却場の中にいれて 内蓋を閉める時に 「 ガチャン! 」 と、大きな音がした瞬間、
オイラは始めて我に返った気がして、 本当に もう会えない! って思っちゃいました。
本当にサヨナラなんだ・・・。
夢ではないんだ・・・。
「 父ちゃん、 さようなら(T_T) / 」
この時、
「 もう、父ちゃんに 喋りかけることは出来なくなってしまった! 」
と、初めて思いました。 母ちゃんも何も言いませんが 多分オイラと同じ気持ちだったと思います。
「 アタイの縫いぐるみ どうするつもりなん? 」
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