18.
ギルガメシュは、ウトナピシュティムに語った。
「わたしはマーシュの山を登り、死の川を渡って、人々が語り伝える遙かなウトナピシュティムに会いたく思いました。
すべての国々を歩き回り、困難な山々を越え、すべての海を渡り、わたしはよき眠りに満たされることはなかったのです。
わたしは眠れぬまま、不安を抱き、悲嘆がわが身をさいなみました。長い放浪生活で、酌婦のもとにたどり着く前に、衣服は破れはてました。
わたしは熊、ハイエナ、ライオン、豹、虎、大鹿、野生山羊など、荒野の動物たちを殺し、それらの肉を食べ、それらの破れた毛皮を着ています。
悲嘆の門はアスファルトと瀝青をもって閉ざされたらいいのに、悲嘆はわたしを弄ぶ。」
「ギルガメシュよ、あなたはいつまで悲嘆にくれているのだ。あなたは神々と人間との肉をもって造られた。
あなたの父と母のように、神々はあなたを造ったのだ。それなのに、いつそんな愚か者になったのだ。
あなたは眠らずに自分を疲れさせ、自らの身体を悲嘆で満たしている。そして、愚かにもあなたの死という遠い日を近づけている。
人間の名前は葦原の葦のようにへし折られる。美しい若者も美しい娘も等しく死にへし折られるのだ。
誰も死を見ることは出来ない。
誰も死の声を聞くことは出来ない。
死は怒りのなかで人間をへし折るのだ。
いつかはわれわれは家を建て、巣造りをする。
いつかは兄弟たちがそれを分配してしまう。
いつかは憎しみが生じ、いつかは川が氾濫し、洪水をもたらす。
蜻蛉たちも川に流される。この葦を手にとっても、たちまち風が奪い去っていくのだ。
顔は太陽を見つめて生きようとしても、すぐさま何もかも消え失せてしまう。
眠る者と死ぬ者は等しい。人々は死の姿を心に描けないのだ。