ジーン・ウールの不思議な旅

ジーン・ウールは不思議な女性です。姿を変えて過去にも未来にも現れます。
もしかしたら貴方の友人や奥様かも知れません。

店主ご挨拶

ようこそお越し下さいました。 昨年(2010)、3ヶ月の雲水修行に行ってまいりました。 私は働き者で(自己申告)、精舎は朝は早く夜は遅く「朝瞑想」の時間は、気がつくといつも寝ておりましたが・・。 私の人生の1ページに、思いがけないご褒美を頂けたような日々を過ごさせて頂きました。・・ま、主婦でも決心ひとつで如何様な道も開けるんですね。 今も精舎に行くと「実家に帰った」ような気がします。 このブログ管理人は、最近物忘れ症候群中につき、おいで頂いた感謝を申し上げ、コメントを頂いても書いたり書かなかったり、付き合いが悪いことのご無礼をお許し下さいませ。

ウトナピシュティム 11

2006-08-10 11:30:32 | ウトナピシュティム
11.
ギルガメシュはこれを聞くと、シドゥリの住む海辺から森へと出かけた。

森にたどり着くとギルガメシュは自分の斧を取り上げた。それから大太刀を抜き、森からひこばえを伐りだした。森の中に大きく音が響きわたった。
ウルシャナビは、ギルガメシュを見出さざるを得ないだろう。

ウルシャナビは遠くに木を伐りだす音を聞いた。
「誰がやってきたのだ。誰が森で育てた俺のひこばえを伐採したのか!」
ウルシャナビは斧の音を聞いて走った。

ウルシャナビはギルガメシュをその目に捉えた。
ウルシャナビが見ると、ギルガメシュは威光に包まれていた。
「おまえは何者だ。おまえは誰の許しを得て、俺が育てた大事なひこばえを伐りだすのだ。」

ギルガメシュが答える。
「わたしは香柏の森に住むフンババを滅ぼし、山の麓でライオンどもを殺し、天から下った天牛を捕らえてこれを打ち倒したものだ。わたしはウトナピシュティムのもとへ行きたい。死と生の秘密を父ウトナピシュティムから聞きたいのだ。」

ウルシャナビは言う。
「たとえおまえが香柏の森に住むフンババを滅ぼし、山の麓でライオンどもを殺し、天から下った天牛を捕らえてこれを打ち倒したのだとしても、俺のひこばえを無断で伐りだして良いはずはなかろう。」
「おまえにウトナピシュティムへの道の案内を頼みたいのだ。」
「断る!」
「断ると言われたら、おまえの舟を力づくでも奪い取るまでだ。」

ウトナピシュティム 10

2006-08-09 06:25:37 | ウトナピシュティム
10.
ギルガメシュはシドゥリに言った。
「さあ、酌婦よ。ウトナピシュティムへの道はどこか教えてくれ。その道しるべをわたしに与えてくれ。もしその方がよいとおまえが言うならば、わたしは大洋をも渡ろう。もしよくないとおまえが言うならば、再び荒野をさまよい行こう」

酌婦はギルガメシュに言う。
「ギルガメシュよ、決してそこに入る術はない。いにしえより、誰もその海を渡らなかった。その海を渡るのは英雄シャマシュのみだ。シャマシュの他には誰も渡らなかった。渡航は困難をきわめ、そこに至る道はさらに困難だ。その間には死の水があり、その前方を遮っている。その海のどこを、ギルガメシュよ、渡りおおせると言うのです。死の水に達したら、おまえに何ができるというのです。

ただ、ギルガメシュよ、ウトナピシュティムの舟師ウルシャナビがいる。彼の傍らには<石物>があり、森の中からひこばえ(小さな香柏)を伐りだしている。さあ、行きなさい。彼がおまえに会えますように。もしウルシャナビが案内してくれるとなったならば、彼と共に渡りなさい。もしウルシャナビの案内が得られないならば引き返しなさい。それがおまえの運命なのだから。」

ウトナピシュティム 9

2006-08-08 12:16:36 | ウトナピシュティム
9.
ギルガメシュは酌婦シドゥリに向かって言う。
「わたしは香柏の森でフンババを打ち倒し、山でライオンどもを殺したものだ」

酌婦はギルガメシュに言う。
「おまえはあの名に聞こえたギルガメシュか。ならばギルガメシュよ、もしおまえが香柏の森に住むフンババを滅ぼし、山の麓でライオンどもを殺し、天から下った天牛を捕らえてこれを打ち倒したのなら、なぜ、おまえの頬はやせこけ、顔は落ち込んでいるのです。なぜ、おまえの心は憔悴し、消沈しているのです。悲嘆がおまえの胸に押し寄せ、おまえは遠い道のりを行く者のようです。おまえの顔は暑さと寒さで焼けついている。なぜ、おまえはライオンの毛皮をまとって荒野をさまようのか。」

ギルガメシュは酌婦シドゥリに語った。
「わたしの頬がやせこけ、顔が落ち込まずにいれようか。わたしの心が憔悴し、悲嘆がわたしの胸に押し寄せずにいれようか。わたしの顔が遠い道を行く者のようでなくいられようか。わたしの顔が暑さ寒さで焼けつかずにおられようか。ライオンの毛皮をまとって荒野を彷徨わずにいられようか。わたしの友エンキドゥは狩られた野生騾馬、山の驢馬、荒野の豹、わたしたちは力を合わせて山に登った。天牛を捕らえて、これを撃ちたおした。香柏の森に住むフンババを滅ぼし、山の麓でライオンどもを殺した。わたしが愛し、労苦を共にした友、わたしが愛し、労苦を共にしたエンキドゥ、彼を人間の運命が襲ったのだ。六日、七晩と、わたしは彼のために泣いた。蛆虫が彼の鼻からぽろぽろ落ちこぼれた。
エンキドゥの言葉は、わたしに重くのしかかり、わたしは遠い道を旅した。わたしはライオンの毛皮をまとって荒野をさまよった。わたしはどうして黙し、沈黙を保てようか。わたしが愛した友は粘土になってしまった。わたしも彼のように死の床に横たわるのであろうか。わたしも永遠に起きあがらないのだろうか」
ギルガメシュはいまも、心の闇をさまよう旅人のようだった。

ウトナピシュティム 8

2006-08-07 06:34:59 | ウトナピシュティム
8.
12ベールに達したとき、明るさがもたらされた。
刺草や棘藪や茨のある草原が見えるようになると、それらは紅玉随の実をつけ太陽の光を浴びて輝いていた。葡萄の房はたわわに実り、葉といったらラピス・ラズリで出来ていた。激しく吹き荒れていた北風は、柔らかい風となり心地よく草原をわたった。

やがて海辺に出た。海は穏やかにうねり輝き、波間に魚が飛び跳ねた。
ギルガメシュが海辺を歩いていたとき、酒場の女主人シドゥリと出会う。
彼女は眼を上げて、遠くの彼を眺めた。彼はライオンの毛皮をまとい、神の身体を有していたが、その胸には悲嘆があった。顔は遠い道のりを行く者のようだった。酌婦は遠くに彼を認めて心に思いめぐらした。
「この者は、あるいは殺人者かもしれない。どこからやって来て、どこに行こうとしているのか」
シドゥリは、ギルガメシュを見て門を閉ざした。門を閉ざし閂をかけた。
ギルガメシュは酌婦に注意を向け、顎を上げて彼女に呼びかけた。
「酌婦よ、あなたは何を見てあなたの門を閉ざすのです。返答なくば、私は門を打ち壊し、閂を砕きましょうぞ」
酌婦シドゥリはギルガメシュに言います。「わたしの門に近づいてはなりません。あなたはライオンの毛皮をまとい、その顔は暗く嘆きに満ちています。あなたの荒々しい波動が場を汚すのです」

ウトナピシュティム 7

2006-08-06 23:03:16 | ウトナピシュティム
7.
1ベールに達したとき「シャマシュよ、光を与えたまえ!」彼は叫んだ。
暗黒が厚くたちこめ、光はなかった。彼に前も後ろも見ることを許さなかった。
2ベールに達したとき「シャマシュよ、光を与えたまえ!」彼は叫んだ。
暗黒が厚くたちこめ、光はなかった。彼に前も後ろも見ることを許さなかった。 
3ベールに達したとき「シャマシュよ、光を与えたまえ!」彼は叫んだ。
暗黒が厚くたちこめ、光はなかった。彼に前も後ろも見ることを許さなかった。
4ベールに達したとき「シャマシュよ、光を与えたまえ!」彼は叫んだ。
暗黒が厚くたちこめ、光はなかった。彼に前も後ろも見ることを許さなかった。
5ベールに達したとき「シャマシュよ、光を与えたまえ!」彼は叫んだ。
暗黒が厚くたちこめ、光はなかった。彼に前も後ろも見ることを許さなかった。
6ベールに達したとき「シャマシュよ、光を与えたまえ!」彼は叫んだ。
暗黒が厚くたちこめ、光はなかった。彼に前も後ろも見ることを許さなかった。
7ベールに達したとき「シャマシュよ、光を与えたまえ!」彼は叫んだ。
暗黒が厚くたちこめ、光はなかった。彼に前も後ろも見ることを許さなかった。
8ベールに達したとき「シャマシュよ、光を与えたまえ!」彼は叫んだ。
暗黒が厚くたちこめ、光はなかった。彼に前も後ろも見ることを許さなかった。

9ベールに達したとき、北風が起こり彼の前を吹き荒れた。
暗黒が厚くたちこめ光はなかった。彼に前も後ろも見ることを許さなかった。
11ベールに達したとき、彼は太陽神シャマシュの前に出た。
シャマシュは空の高いところから、声の主の姿を見た。

ウトナピシュティム 6

2006-08-06 23:03:05 | ウトナピシュティム
6.
蠍人間はギルガメシュに言った。
「ギルガメシュよ、彼のもとに行く道はない。この山を行こうとしても誰も通り抜けられないのだ。そのなかは12ベールも闇が続く。暗黒は厚くたちこめ光はない。マーシュの山を越えたのは太陽神シャマシュただ一人だ。しかし今はシャマシュとてこの山を越えることは出来まい。日の出と日の入りには、我々が太陽を見張っているからだ。お前は暗闇の中で、どうどう巡りをただ繰り返すばかりだ。」

ギルガメシュは何度も嘆願し、蠍人間は何度も首を振った。
しかし、熱意はいつか岩をも動かすものだ。何が蠍人間の心に響いたのだろう。

「行きなさい。ギルガメシュ、マーシュの山に」
蠍人間が重い口を開いて語り、シャマシュの進んだ道の秘密を明かしてくれた。

ギルガメシュは蠍人間の語った言葉に従い、シャマシュの道を進んだ。

ウトナピシュティム 5

2006-08-05 06:51:51 | ウトナピシュティム
5.
ギルガメシュは蠍人間に語った。
「わたしの頬がやせこけ、顔が落ち込まずにいれようか。わたしの心が憔悴し、悲嘆がわたしの胸に押し寄せずにいれようか。
わたしの顔が遠い道を行く者のようでなくいれようか。わたしの顔が暑さ寒さで焼けつかずにおれようか。ライオンの毛皮をまとって荒野を彷徨わずにいれようか

わたしの友エンキドゥは狩られた野生騾馬、山の驢馬、荒野の豹だった。わたしたちは力を合わせて山に登った。天牛を捕らえて、これを撃ちたおした。香柏の森に住むフンババを滅ぼし、山の麓でライオンどもを殺した。
わたしが愛し、労苦を共にした友、わたしが愛し、労苦を共にしたエンキドゥ、彼を人間の運命が襲ったのだ。六日、七晩と、わたしは彼のために泣いた。蛆虫が彼の鼻からぽろぽろ落ちこぼれた。
エンキドゥの言葉は、わたしに重くのしかかり、わたしは遠い道を旅した。わたしはライオンの毛皮をまとって荒野をさまよった。

わたしはどうして黙し、沈黙を保てようか。わたしが愛した友は粘土になってしまった。わたしも彼のように死の床に横たわるのだろうか。わたしも永遠に起きあがらないのだろうか」

ギルガメシュはまるで、心の闇をさまよう旅人のようだった。

ウトナピシュティム 4

2006-08-04 11:29:50 | ウトナピシュティム
4.
一人の蠍人間が彼の妻に叫んだ。「おい、こちらにやってくる者がいるぞ。あの身体は神々の肉体だ」。
蠍人間の妻は応えた。「ええ、その3分の2は神で、その3分の1は人間の身体です。」
蠍人間の男は叫んだ。「おーい、お前は、遠い道をなぜやってきたのだ。この山は通り抜けることは難しいぞ。誰も通ることは出来ないのだ。何の目的でやってきたのか、わしは知りたいものだ。」

ギルガメシュが答える。
「われらが父ウトナピシュティムのもとに私は行きたい。彼は神々の集会に立ち、不死の生命を見出した方だ。私は死と生の秘密を彼から聞きたいのだ。」

蠍人間は彼に言った。
「なぜ、お前の頬はやせこけ、顔は落ち込んでいるのか。なぜ、お前の心は憔悴し、消沈しているのか。お前はまだ若いのに、悲嘆がお前の胸に押し寄せ、お前は遠い道のりを行く者のようだ。お前の顔はまるで土人のように暑さと寒さで焼けついている。なぜ、お前はライオンの毛皮をまとって、荒野をさまようのだ。」

ウトナピシュティム 3

2006-08-03 06:50:03 | ウトナピシュティム
3.
荒野の旅は、危険に満ちていた。夜には、ライオンを見て怖れた。ギルガメシュは頭を上げシン(月の神)に祈った。「わが旅を安全ならしめたまえ」と。彼は横たわり、朝には生きていることを喜んだ。
(ギルガメシュはとても心細げだが、サーカスの綱渡りや手品で最初にわざと失敗し、いかに大変な仕業かを観客に見せ、実際は苦もなくやりとげ喝采を浴びる手法で、古代のシュメール人は物語を語り始めている。)


 ギルガメシュは、それからそびえ立つ山にたどり着いた。山の名前はマーシュ。マーシュの頂は天に、すそ野は冥界に達していた。山には門があり、蠍人間達がその門を見張っていた。彼らの怖ろしさといったら身の毛がよだつほどで、その形相は死そのものだった。彼らの発する畏怖の輝きが山をとりまいていた。
蠍人間達は、日の出と日の入りの太陽を見張っていた。ギルガメシュはこれを見ると、怖れとおののきで顔が青ざめた。だが彼は意を決して、彼らの前で会釈した。

ウトナピシュティム 2

2006-08-02 06:17:35 | ウトナピシュティム
2.
 1872年大英博物館の一職員ジョージ・スミスは、アッシリアのニネヴェから出土した粘土板の楔形文字の補修の仕事を10年にわたって続け、ある日その粘土板の破片が、旧約聖書の創世記に出てくる洪水伝説と、同じ事柄が記されていることに気がついた。

「ニネヴェをはじめとする古代メソポタミアの諸都市の廃墟から、おそらく聖書にまつわる数々の秘密を解き明かすような楔形文字板がつぎつぎと発見されるだろう」と、ロンドンの「聖書考古学協会」で、スミスは語っている。

やがてアメリカで、大洪水伝説がシュメールに起源を持つことが文献によって立証されることになる。1914年ペンシルヴァニア大学博物館のニップル調査団が発掘した蒐集品を研究していたアルノ・ペーベルは、6つに分かれた楔形文字板の一番下の部分が、バビロニア、ヘブライ両伝説の前身となるものであることをつきとめた。
その文字板から大洪水や方舟、そしてシュメールのノアとも言うべきジウスドラ王(ウトナピシュティム)に関する記述を読みとることができた。

 さて、ウトナピシュティムが永遠の生命を得て、冥界の死の川の河口に住むことになったいきさつを、見に行ってこようではありませんか。