公示後、選挙対策本部長を務める和歌山をはじめ20都府県以上に応援に回った世耕氏だが、事務所では「滋賀に入る予定はない。あるわけないじゃないですか」と答える。為書きも林氏はもちろん、自民党新人の小鑓(こやり)隆史氏(49)にも贈らず、中立を保っているが、小鑓氏の事務所は「終盤に向け、応援要請は出している」と話し、妻との完全決別を踏み絵のように迫っている。

 13年9月、官房副長官と野党議員の再婚は話題を呼んだ。夫妻は「仕事と家庭は別」「家で仕事の話はほとんどしない」とかわしてきた。今年1月には林氏が参院の代表質問で、アベノミクスと財政政策を批判。安倍首相は色をなして「無責任と批判されるいわれは全くない」と反論した。

 前回(10年)、31万7756票を集め、自民党候補に10万票以上の差をつけて圧勝した林氏には今回、共産党の6万票が加わる。単純計算なら負けるはずはないのだが、衆院選は12年、14年と連続して滋賀全4選挙区で自民党に敗れ、13年の参院選もダブルスコア近い票差で完敗。民進党の退潮に共産党への抵抗感が加わり、大苦戦している。

 陣営は「先行を許している。選挙への関心が低いのも痛い。世耕さんに応援に来てもらおうかな、ほんまに」とも漏らしている。

 自民党からは「(林氏は)将来、日本のトップレディーとして活躍してもらう方が、女性の活躍推進に貢献する」と、世耕氏を支える側に回るよう求める声が公然と上がる。安倍首相は公示前に入り「共産党が推す候補に負けるわけにはいかない」と声高に訴え、公示日に谷垣幹事長、その後も菅官房長官、小泉農林部会長、稲田政調会長、丸川環境相とオールキャストで追い落としにかかる。

 林氏のもとには04年初当選の同期、蓮舫氏がすでに2度入り、5日には3度目の応援が予定されている。「その声ははるな愛ちゃんかいと言われます」。声がかれた林氏と並んで選挙カーに立った蓮舫氏は「大親友です。林久美子と国会で仕事ができて良かった。本当に大切な女。林久美子に託していただきたい」と訴えている。【中嶋文明】