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生活保護ホットラインに届く悲痛な叫び

2018年01月15日 | 社会・経済

「生活保護ホットライン」で電話を受けてみた ~ 生活保護の当事者とは、どういう人々なのか?

Yahoo!ニュース  2018.01.14  byみわよしこ

   2017年末に発表された政府予算案に含まれた、2018年度からの生活保護基準引き下げ。

 厚労省に当事者の声を届けるため、急遽、ホットラインが開設されました。

 暮れも押し迫った時期の緊急ホットライン

  2017年12月22日、政府予算案が閣議了承されました。ここには2018年度からの生活保護基準引き下げが含まれています。

  当初案では最大で14%近い引き下げ、しかも子どものいる生活保護世帯に特に厳しい内容でした。政府の「子どもの貧困」対策には、どこにも「ただし、生活保護世帯の子どもを除く」とは書かれていないにもかかわらず。

  数多くの抗議や申し入れが考慮されたのか、引き下げ幅は最大5%とされましたが、それでも厳しすぎる内容です。

  そこで4日後の12月26日、「生活保護基準引き下げに反対します(緊急ホットライン)~私たちの声を聞いてください~」が開設されました。

  東京・さいたま・大阪の3会場合計13回線のホットラインには、生活保護で暮らす方々を中心に273名からの声が寄せられました。この他、「電話をかけつづけたけれど、つながらなかった」という方も少なからずおられると思われます。

  電話を受けたのは、全員、弁護士・司法書士・社会福祉士などのボランティアです。

 翌日には厚労省へ申し入れ

  ホットラインに寄せられた生活保護の当事者たちの声を受けて、翌2017年12月27日、厚労省への申し入れが行われました。

  ここでは、申し入れ内容のうち、私が特に重要と感じるものを紹介します。

 1. 2013年の引き下げによる影響が、まだ充分に検証されていない

  生活保護基準は、2013年にも引き下げられています(最大10%、平均6.5%)。この他にも、多人数家庭に対する締め付け(逓減率見直し)・家賃補助(住宅扶助)引き下げ・暖房費(冬季加算)引き下げなど、目立ちにくい引き下げが数多く行われており、特に複数の子どもがいる世帯に対して厳しい変化が起こり続けています。

  ホットラインに寄せられた当事者たちの声から、2013年の引き下げ後の生活実態が浮き彫りになりました。

 1. 食事が削られている(中にはおかずがなく白米に醤油をかけて食べることもあるというものも複数あった)

 2. 入浴回数が月に1回になってしまっている

 3. 耐久消費財を購入する資金を保有する余裕が全くなく耐久消費財が壊れてしまったら買い換えられない

 4. 衣服を買う余裕がなくサイズの合わない昔の服を着続けている

 5. 冬はコタツだけで暖をとって暖房を使えない、

 6.真冬に灯油が買えず肺炎になった

 7. 交際費が捻出できず一切外出しない

  保護費の月額だけに注目すると、「そんなにお金があっても足りないのは、家計管理能力の問題」という見方になりがちです。しかし生活保護の家計には、「ストックが考慮されておらずフローだけ」という特徴があります。貯蓄をすることは認められていますが、月々の保護費は、1ヶ月の「健康で文化的な最低限度の生活」の費用として計算されています。健康で文化的な生活を営む限り、原理的に貯蓄はできないのです。貯蓄ができるとすれば、どこかで「健康」と「文化的」の最低限度を割り込んだ生活になります。

  制度的にストックが考慮されない家計に独特の厳しさを、どうすれば伝えられるのか。私も試行錯誤中です。

 2. 削れるものは食しかなく、残るのは炭水化物

  ホットラインには、「万一、さらなる引き下げが行われたら、何を削るか」についての意見も集まりました。

 最も多かったのは「食費を削る」という意見です。衣服はもう購入できておらず、光熱費もギリギリの節約をしており、削れるとすれば食費ぐらいしかないわけです。また、「もう削るところがない」という意見もありました。

  そもそも、現在すでに食生活が貧困になっている方は珍しくありません。「食事はいつも3玉100円のうどん、時々、生卵をかける」という方は、保護費が引き下げられたら生卵を断念するということでした。また、「2013年の引き下げで、おかずが時々しか買えなくなった」という方もいます。

  炭水化物中心の「健康」とは言えない食生活、おかずを自分で作らず買ってくる生活には、「そんなふうだから生活保護になる」という非難もあるでしょう。

  しかし生活保護で暮らす方々の多くは、充分な教育を受けていません。全国的な調査はされていませんが、一つの都市の一類型(例:母子世帯)を対象としたいくつかの調査を総合すると、「働ける」とされる年齢層(20~65歳)では少なくとも40%が高校中退または中卒です。高齢者を含めると、70~80%は高校中退・中卒・戦前の小学校卒などです。中には、通学歴のない方もいます。

  充分な教育を受けられなかった背景には、しばしば生育環境の問題があります。自炊を含め、生活スキルを身につけるどころではない生育歴は、しばしば生活保護の方々から語られます。

  現在のご本人たちの暮らし方や状況は、幼少時から積み重なった機会その他の「剥奪」の結果として捉えられるべきものです。人間から剥奪されるべきではないものを剥奪してしまった社会のすべきことは、剥奪してしまったものを今からでも取り戻していただくことではないでしょうか。

 3. 引き下げが奪う最大のものは、生きる意欲

  しかし現在、政府が検討しているのは、生活保護基準の単なる引き下げです。

   ホットラインには、本年度の引き下げが実施されたら、その後について「想像できない」という声も寄せられました。

  「生活保護で最低限度だけど健康で文化的な生活を送っていける」と思えたら、その中で生活を少しずつ改善させていこうとしたり、社会参加の意欲を抱いたり、その先には就労を考えたりすることもあるでしょう。2013年の引き下げ以前、生活保護の方々の中には、実際にそういう方が少なからずおられました。しかし2013年の引き下げは、そのような「最低限度だけど希望を持って」という余裕を奪ってしまったようです。本年、さらなる引き下げが行われたら、いったいどうなってしまうのでしょうか。

  ホットラインには「死んでくれと言われているようだ」「死ぬしかない」という意見も寄せられました。また、引き下げを「弱いものイジメ」とする意見も寄せられました。もはや「経済的虐待」と捉えるべきなのかもしれません。

  生活保護で暮らす方々の精神の健康状態は、2013年以前も良好とは言えませんでした。2009年・2010年・2011年の3年間については、厚労省が自殺者数を公表しています(厚労省資料)。生活保護の方々の自殺率は、一般の概ね2倍です。もともと精神疾患を有している方が多いことを考慮して試算してみたこともありますが、どういう計算をしても1.5倍以下にはなりませんでした。「生活保護」あるいは「相対的貧困」という状況が、精神の健康状態が良好でないことと強く関係しているのは間違いないと思われます。

  引き下げを行えば、さらに生活保護の方々の精神の健康は損なわれてしまうでしょう。生きる意欲が奪われれば、自殺者も増えるかもしれません。自殺に至らないまでも、「まだ死んでないけど?」と自嘲するような状況で暮らすしかない方々が増えるかもしれません。

  自殺する方、あるいは自殺リスクの高い方が増える可能性が、未だ「かもしれない」可能性である間に、逆の可能性を追求してほしいものです。すなわち、引き下げの見送りであり、引き上げです。

 はじめてホットラインで電話を受けてみて

 「一対一じゃない」という心強さ

  私も微力ながら、電話を受ける側に2時間ほど参加しました。初めてで、消耗の程度が読めないので時間を短めにしておいたのですが、「次回は4時間でも大丈夫かな」と感じました。

  電話の向こうの方は、しばしば、TV報道で生活保護引き下げホットラインの存在を知り、「生活保護で暮らす自分の現在の困りごとを相談できるかもしれない」と期待して何回も電話をかけ続け、やっとつながったので、とりあえず複雑に絡み合った複数の問題を話し始めることが多いのです。

  状況が良くわからない中で、電話の向こうの方が語り始める言葉に耳を傾けながら、情報を整理し、不足している情報をいただくために質問を繰り出したりしているうちに、私は「あれ? 私、なんで、こんなに落ち着いてられるんだ?」と感じました。いつもなら、そういう話を5分も聞いているうちに心の余裕を失い、当たり障りなく「話し相手」をしながら、エネルギーが削ぎ取られていくのを感じているはずです。でも、何人かの中で同じようにホットラインの電話を受けていると、そんなことはありませんでした。

  「なぜかなあ?」と不思議に思いながら電話応対を続けていて、ハッと気づきました。電話の向こうの方と私は回線を挟んで一対一ですが、私は実際には一人ではなく、状況と場面を共有している何人もの方々と一緒にいます。

  自分が「チーム」の一員でいることに与えられる心強さと余裕は、電話の向こうの方とのコミュニケーションを円滑にし、「電話してよかったです、ありがとうございました」という終わり方につながります。意外な発見でした。

 担当ケースワーカーは「相談相手」じゃない?

  しかしながら驚いたのは、「いかに担当ケースワーカーがアテにされていないか」ということです。

  もちろん、担当ケースワーカーを「自分の援助者、頼れる相談相手」と認識している方も、若干はいました。しかしそういう方の居住地は、もともと血の通ったまっとうな生活保護行政で知られる地域や、そういう指導をする管理職が現職の地域ばかりです。そうではない地域の方が、面積でいえば日本の大多数なのでしょうか。

  「医療券をもらいにいく時の担当者(=ケースワーカー)に、自分の生活面での困り事を相談していいんだ」ということをご存じない方もおられました。そういう方には、まずはケースワーカーに相談してみることをお勧めしつつ、万一ラチがあかない場合の相談窓口をご案内します。

 生活保護への不満も。しかし、話を聞くと?

  比率としては少ないのですが、「生活保護の方々も大事でしょうけど、働いているのに(働いてきたのに)生活保護より苦しい人々はどうでもいいんですか?」という怒りや不満の電話もありました。電話の主は、いわゆる「ワーキング・プア」、あるいは低年金の方です。

  いずれにしても、ご本人が「生活保護の方がマシ」という状況なら、生活保護そのもの、あるいは生活困窮者向けの制度が利用できる可能性が高いです。しかし状況を聞き取っているうちに、「福祉事務所に行ってみたけれど、対象にならないと言われた」と語られたりします。なぜ対象にならないと言われたのか尋ねてみると、どうも典型的な「水際作戦」に遭い、生活保護を申請させないためのあの手この手を使われたようす。だから、「生活保護の方がマシ」という状況にありながら生活保護は利用できず、ホットラインに憤懣の電話をかけて来られるわけです。

  そういう方には、生活保護を申請できる可能性について説明し、申請するにあたっての相談や支援の窓口をご案内します。

 「毎日ホットラインがあれば」という切実な希望

   ネット環境にない方は、「ネットで生活保護の相談窓口を探して電話すればいい」というわけにはいきません。また、生活保護で暮らす方々の困りごとは毎日発生しているわけです。具体的な相談なら法律家等の相談窓口がありますが、思いや気持ちを受け止めてほしい時に利用するのは、通常はためらわれることでしょう。私が電話を受けた方々からも、その他の方々からも、「このホットラインがいつもあればいいのに」という声が聞かれました。

  しかしボランタリーな活動である以上、「いつも」は無理です。人件費その他の経費が確保できれば、可能かもしれませんが。

  もしも、「国民の人権を守ることは公共の役割」と理解されていたら、政府方針とは異なるけれども人権を守るこのような活動にも公的資金が投入され、あるいは半ば強制的に寄付が集められて投入されるかもしれません。「政府方針と異なるからこそ、社会の健全性のために意味がある」と認識されている国々では、実際にそのようになっています。トランプ政権以後、かなり危なっかしくなってきてはいますが、米国もそのような国々の一つです。

  しかし、そのような仕組みがない以上、時々のホットラインを時々のボランティアで実現するのが、今の日本の中での精一杯です。

  なお、ホットラインに寄せられた切れば血の出るような声の数々は、ダイヤモンド・オンラインの拙記事

 「世間に見捨てられて辛い!」生活保護ホットラインに届く悲痛な叫び

 でも紹介しています。

 

 みわよしこ

フリーランスライター(科学・技術・社会保障・福祉・高等教育)

   1963年福岡市生まれ。大学院修士課程(物理)修了後、半導体シミュレーションの企業内研究者を経て、2000年よりフリーランスに。当初は科学・技術を中心に活動。2005年に運動障害が発生したことから、社会保障に関心を向けはじめた(2007年に障害者手帳取得)。2014年4月より立命館大学先端総合学術研究科一貫制博士課程に編入し、生活保護制度の研究を行う。なお現在も、仕事の40%程度は科学・技術関連。榎木英介氏らと共に、科学コミュニケーション活動も継続。日本外国特派員協会アソシエイト会員、調査報道記者編集者協会(IRE)・日本科学技術ジャーナリスト会議・米国サイエンスライター協会会員。


弱い者いじめが際立ちます。
大企業の内部留保はますます膨らむ一方、非正規の雇止めが横行しています。

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強い寒気も一休みかな?
今朝の最低気温―14.2℃、昼からはプラスの気温となり小雨模様となりました。