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年金繰下げ受給、増額の落とし穴

2018年01月23日 | 社会・経済

年金繰下げ受給、増額の落とし穴

モーニングスター - 2018年1月22日

 ■年金の繰下げ受給

 老後の寿命が延びており喜ばしいことですが、一方で長生きのリスクも意識されるようになってきました。老後資金を確保する一つの手段として年金の繰下げ受給があります。年金の繰下げ受給とは年金を65歳から受け取らずに66歳から70歳までの間で申し出た時から年金を繰下げて請求できる制度です。66歳以降1ヶ月単位で繰下げることができ、「65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数×0.7%」の増額率で年金が増額されます。繰下げ時点に応じて8.4%から42.0%年金が増額されその増額率は一生変わりません。繰下げには老齢基礎年金の繰下げと老齢厚生年金の繰下げがあり、どちらか一方の繰下げまたは両方の繰下げができます。また、両方繰下げる場合老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々の希望月で繰下げできます。

■税金等の負担に注意

 年金の繰下げ受給をした場合増額された年金が一定の金額を超えてくると所得税、住民税、国民健康保険料などの負担が発生してきます。老齢基礎年金や老齢厚生年金は公的年金等に係る雑所得になりますので収入金額から公的年金等控除額を引いた金額が所得金額になります。65歳以上の場合公的年金等の収入金額が330万円未満の場合公的年金等控除額は120万円になります。つまり年金が120万円を超えてくると所得金額が生じてくることになります。この所得金額から所得控除の金額を引いた金額に対して税金がかかってきます。

 所得税の場合誰にでも適用がある所得控除として基礎控除38万円があります。年金収入のみで他に所得控除がない場合には年金収入が158万円を超えてくると所得税がかかってきます。たとえば年金収入が180万円で所得控除が基礎控除だけとすると、所得金額は180万円-120万円=60万円で、ここから基礎控除38万円を引いて60万円-38万円=22万円に対して5%の所得税1.1万円がかかります。

 住民税では控除対象配偶者や扶養親族がいない場合所得金額が35万円以下であれば所得割は非課税になります。均等割は地域によって異なりますが所得金額が28万円~35万円程度以下であれば非課税になります。年金収入のみで他に所得控除がない場合には年金収入が155万円を超えてくると所得割が、148万円~155万円程度を超えてくると均等割がかかります。所得割は所得金額から住民税の基礎控除33万円を引いた額に対して基本的に税率10%をかけた金額になります。(実際には調整控除により若干少ない金額になります。)均等割は地域によって異なる場合がありますが、基本的には5,000円です。

 さらに一定の所得金額を超えた場合国民健康保険料や介護保険料の負担が増えることにもなります。年金の繰下げ受給をした場合その金額によってはこれらの税金等の負担が新たに発生したり、増えたりして増額率を掛けた金額がそのまま手取り額として増えることにはならない場合がありますので注意が必要です。

■夫婦の世帯の繰下げ受給

 夫婦の世帯で一部の年金の繰下げ受給を検討する場合にその選択によっては世帯の手取り収入が変わってきます。たとえば、老齢基礎年金75万円、老齢厚生年金135万円の夫と老齢基礎年金75万円、老齢厚生年金10万円の妻の世帯でどちらかの老齢基礎年金を5年繰下げて受給するとします。年金額は75万円×42.0%=31.5万円増えます。夫が繰下げ受給した場合夫の年金収入は75万円+31.5万円+135万円=241.5万円となり公的年金等控除額120万円を引いた所得金額は121.5万円となります。増えた年金額31.5万円がそのまま所得金額の増加になります。一方、妻が繰下げ受給した場合妻の年金収入は75万円+31.5万円+10万円=116.5万円となり公的年金等控除額120万円より少ないので所得金額は0のまま増えません。夫の場合所得金額が増えることにより税金等の負担が増え手取り額の増加は31.5万円より少なくなります。一方、妻の場合所得金額は増えないため税金等の負担は発生せず手取り額が31.5万円増えることになります。

 夫婦の年金額、繰下げ受給によって増加する年金額、年金以外の所得、所得控除の額などによって手取り額への影響は変わってきます。夫婦の世帯で繰下げ受給を検討する際は世帯の手取り額のシミュレーションをすることをお勧めします。

犬山 忠宏【いぬやま ただひろ】

1959年生まれ。神奈川県藤沢市出身。犬山忠宏税理士事務所/FPオフィスp.1代表。機械メーカーを早期退職後税理士・FPとして独立。税務だけでなく企業の経理から個人の家計管理、資産運用まで幅広くトータルなアドバイスを行っている。

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