アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

映画「女神の見えざる手」を見ました。

2022-07-29 15:15:43 | 映画とドラマと本と絵画

  アメリカの銃規制法案に関する裁判劇。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%B3%E7%A5%9E%E3%81%AE%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%81%96%E3%82%8B%E6%89%8B

  ヒロインは敏腕のロビイスト。彼女がかかわった案件はほぼ議会を通過します。あるとき、社長から直々に紹介された人物は、銃規制法の緩和を求める政界?の大物でした。議会で銃規制をさらに厳しくせよという趣旨の法案に反対するため、女性の側からの銃規制法緩和の世論?を作れというわけです。

  規制強化に賛成する彼女は、これを拒否します。会社での立場が微妙となってきた彼女に接近してきたのは、別のロビー会社の社長。彼は銃規制法の強化を求める側に立ち、そのためのロビー活動を展開しています。彼は彼女を説得し、自社に鞍替えする約束を取り付けます。

  結局彼女は彼女高く買っていた直属の上司まで敵に回し、同僚たちを連れて退職。規制法強化に一票を投じさせるべくロビー活動を展開します。そのやりとりがすさまじい。議員たちは自身の主張を平気で金や名誉と引き換えにします。彼らの経済状況、趣味嗜好、その他あらゆる手立てをつかって、法案成立をもくろみます。

  凄腕のキャリアウーマンの彼女ですが、友人はおらず、恋人もいません。男娼を買って性欲の処理を果たしています。敵方は彼女にあらゆる妨害工作を仕掛けてきて、とうとう彼女は罠にはまることになります。しかし最後は‥

  展開が早いので、ぼやぼやしていると筋が追えなくなり、何度か見直しました。とにかくおもしろい。脚本がよくできています。

  それにしても、描かれているロビー活動なるもの、ひどいものです。政治の退廃のきわみ。どこまでほんとか知りませんが、この映画に近いことは起きているのだろうなと思います。

 

 

  

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映画「上海ルージュ」を見ました。

2022-07-29 14:30:35 | 映画とドラマと本と絵画

  チャン・イーモウの1995年の作品。映像がいい。隙のない画面がつづきます。一枚一枚がポストカードのしたくなるほど。

  出だしは、たくさんの人ごみの中で、一人の少年が不安げに目だけがきょろきょろ動かすところから。この映像を見ただけで、どっと安心感が押し寄せました。「この映画、身を任せてみていられる」

  語り手の少年は、田舎から上海に出てきて叔父の彼の仕える唐家に連れていかれる。この唐家の建物がすごい。こんな建物、ほんとにあるのだろうか。廊下に置かれた家具はたぶん黒檀。壁はほぼ大理石。セットをつくったのだろうか。とにかくすごい。

  唐家は実は巨大やくざ。少年は唐家の主人の愛人の歌姫のおつきとなりますが、この歌姫がコンリー。ものすごく嫌な奴です。やくざ同士の抗争に巻き込まれ、叔父は死にます。その抗争は映像では描かれず、音と、すりガラス越しに映った影だけで表現。見ているのは少年。扉を開くと廊下に延々と血痕が続いているのですが、人影はなし。この時の少年の不安な気持ちが映像にそのまま描かれています。うまい。

  叔父の犠牲で唐家の主人は命拾いしますが、敵の手が迫るのを恐れて愛人と少年、わずかの手下を連れて小島に逃げます。そこで出会う母と娘。娘の美しさと明るさに少年は快活さを取り戻します。しかし、愛人の軽率な行動により、この母娘に悲劇が。

  脚本がとりたててすばらしいとはおもえませんでしたが、映像には不思議な魅力がありました。日本軍が本格的に介入する直前の上海のつかの間の光と闇。あるいは、監督は、あえて日本の影を排して中国人同士の無意味に思えるような争いを描きたかったのかもしれません。秀作です。

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本日、守綱寺まちかど朝市に出店します。

2022-07-26 01:41:33 | アンティマキの焼き菓子とパン

  またまた告知が遅れましたが、本日、まちかど朝市に出店します。五月以来の出店です。

   お持ちするパンは、カンパーニュと有機干し葡萄入りの全くこねないパン。このパンに入れている干し葡萄は、昔食べた葡萄の味がします。甘すぎず、ほど良い酸っぱみが食欲をそそります。

   ケーキは、ズッキーニブレッドを。名倉の三川農園の有機無農薬栽培のズッキーニをたっぷり使っています。ズッキーニの味はほとんどわかりませんが、断面はきれいな黄緑色です。

   クッキーは、穀物クッキー3種に味噌味の米粉ビスコッティ。丹丹さんの晩生のニンニクをたくさん入れたクラッカーもお持ちします。

   お寺では夏休みお楽しみ会が10時半から始まります。ファミリー合唱団の合唱もあり、フリマも開催。わたしは11時頃着くように出発します。

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テレビ番組「学校給食に革命を! ジェイミー・オリバーのスクールディナー」

2022-07-19 20:34:51 | 映画とドラマと本と絵画

  本日夜、たまたまたつけたテレビで見たドキュメンタリーがとても面白い内容だったので、紹介します。学校給食に革命を!人気シェフが子どもたちの食育問題に挑む英国ドキュメンタリー 「ジェイミー・オリヴァーのスクール・ディナー」 7月19日(火)よる7時~BS12 トゥエルビで放送 | BS無料放送ならBS12(トゥエルビ) (twellv.co.jp)

  15年以上前のドキュメンタリーのようですが、当時はイギリスの学校給食は、刑務所より低い経費で賄われていて、給食はまずい、ときまっていたらしい。途中から見たのですが、先に見ていた家人によると、子供たちは野菜嫌い。バイキング形式で好きなものを選ぶようになっているのだそうですが、彼らが選ぶのはフライドポテトにソーセージといったジャンクフードばかり。

  そんな給食を変えようと、人気のレストランを経営しているオーナーシェフが学校給食の調理現場に入り、給食を変えていくドキュメンタリー。私が見始めたのは、彼と古株の調理師長?の年配の女性が大喧嘩するシーンから。彼がこれまでのやり方を無視してことを進めるため、彼女にとっては到底承服しがたい事態になっているのです。

  この二人のやりあいがおもしろい。言いたいことをさらけ出して、皮肉もいやみもちょっとあるけれど、すがすがしいほどあけっぴろげ。彼は校長との三者協議で、古株の女性を彼のレストランに研修?に出すことに成功します。

  翌日彼は心おきなく自分の考える野菜たっぷりのメニュー、添加物を一切使わないメニューを考え、次々に調理します。調理担当者たちは、彼の作るメニューがどれもおいしくてニコニコ顔。はじめ、彼女たちは「味見して」といわれて戸惑います。これまで味見というものをしたことがなかったというのです。しかも驚くべきことに、そもそも食材にはすべて塩が入っているので、改めて調理に塩を使ってはならないと決められていたとか。

  そんな規則?を無視して彼は塩を加え、仕上げます。私が気になったのは、トマトパンの生地にバジルソースとチーズをのせて巻き、切って焼いたパン。出来上がりが見られなくて残念でした。ラザニアあり、グリーンカレーありのおいしそうな料理ばかり。

  でも、子供たちの反応はいまいち。そもそもたくさんの野菜の入っている料理は選んでもらえないのです。その日校長に呼ばれた彼は、経費がかかり過ぎ、と注意を受けます。1品につき一人分80円が上限のところを、高いもので250円もかけてしまいます。

  ここで一回目は終了。あと3回にわたって放映されるそう。次回は来週火曜日夜7時。この彼の挑戦がきっかけになって、イギリスの給食は変わるのだそうです。忘れないで、見ることにしようとおもいます。

 

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映画「村八分」を見ました。

2022-07-12 11:07:57 | 映画とドラマと本と絵画

 1953年に作られた日本映画「村八分」村八分 (映画) - Wikipediaを見ました。この映画は、その前年、1952年に静岡県の山村で起きた選挙違反事件とその後の事件静岡県上野村村八分事件 - Wikipediaをほぼそのまま映画化したもの。主演は中原早苗。山村聡、殿山泰司、音羽信子そのほか、有名俳優がたくさん出演している社会派映画です。

  参議院議員の選挙が行われた直後、新聞社に一通の手紙が舞い込みます。それは、ある村全体で行われた大規模な選挙違反事件を告発するものでした。送り主は地元の女子高校生。彼女は母親から、隣組組長らがあらかじめ不在者の投票券を各戸から集めて、選挙当日は、村人たちが、その集めた投票用紙に区長や役場の職員から指示された候補者の名前を書き、何度も投票する様子を目撃した、という話を聞かされました。

  実は2年前、彼女が中学生だったころも衆議院選挙の折に同様のことがあり、彼女はそのことを作文(実際は学校新聞らしい)に書いて校長からほめられたのですが、しばらくあと、校長の態度が急変。生徒たち全員が持っていた作文?新聞?を学校に出すよう求められ、焼き捨てられた、という事件を経験しています。

  そのため、彼女はこの問題を学校に知らせることなく、新聞社に投書することを選びました。すぐさま支局員が村に入り取材を開始します。その新聞記者が山村聡。投書した女子高生や一家への取材、役場への取材などから彼は投書が事実であったことを確信し、新聞に掲載します。すぐに警察が動き、村人たちを連行します。村は大騒動となります。

   一方警察は彼女の思想を問題にし(赤化しているのではないかとうたがったのです)、彼女は高校の校長に呼び出されます。その時の校長の言うことが振るっています。「世の中には法よりも道徳が上にくることがある」つまり、村の中での「道徳」のほうが法律より大事だと暗にほのめかしたわけです。

   役場や有力者の言いなりになってさしたる後ろめたさもなく選挙違反に連座した村人たちは、主人公のせいでとんでもないめにあったと考え、主人公一家を村八分にします。耕作の季節なのに、いつも馬を貸してくれていた家が貸してくれなくなり、一家は鍬や備中で耕すしかなくなります。当時はほとんどの家がつけで物を買っていましたが、それもきかなくなります。結の手伝いも一切協力は仰げなくなったことでしょう。父親はやけになり、村を出ていくとまでいい出します。

   このひどい村八分の状態が、またまた新聞社によりスクープされて、全国から注目を集めます。法務局まで調べにきて、村人一人一人に話を聞きますが、なかなか真相は明らかにならない。村の有力者に飼われているごろつきのような人たちが目を光らせていることもあり、彼らは互いに罪を擦り付けあうだけで、反省することはありません。

   けれども、映画の最後は希望の光が見えたところで終わり。ただし、この終わり方は甘すぎる。当時はこれでよかったのでしょうが。

   最初と最後に映し出される映像は表現主義的。そしてかかる音楽は、ロシア民謡「仕事の歌」。「ゴジラ」の音楽を担当した伊福部昭が音楽担当なので、わたしのおもいすごしか、なんだかゴジラがでてきそうなおどろおどろしい曲になっています。

   あったことをほぼ忠実に再現した映画。監督は知らない人ですが、脚本は新藤兼人。53年といえば、サンフランシスコ講和条約が結ばれて日本が一応の独立を果たした直後のころ。アメリカでは赤狩りが盛んな時でしたが、日本の映画業界~独立プロでは、こうした民主主義的な社会派の映画が結構作られていました。

   事件が起きたのは戦争が終わって7年後。農地改革が断行され、農村は大幅に変わったはずですが、映画に登場する村の百姓たちの姿はまずしくてみすぼらしい。日々の生活に追われ、なにかあると、有力者の言いなりになるしかすべがない。そしてそれを疑問にも思わない。

   いかにも古い昔の話のようなのですが、こちらに来て、日本の農村には、いまだにこの70年前のような古い習慣というか遺制があるなと思われる場面に、何度か遭遇しました。

   ある老人は私に向かって、「田舎の法律と村の法律は違う」とうそぶきました。別の中年男性は、「郷に入れば郷に従え、だ」と強い口調でいいました。どちらも、こちらが「どういうことですか?」と聞き返したら黙ってしまいました。私には理解しがたい、かたくなな気持ちがあるらしいことが伺われました。

  この映画、かなり地味だし、古いので録音も悪いのか聞き取れない箇所もあるのですが、ぜひとも子供たちには見てほしい。この映画で描かれたような村の雰囲気が、何十年もたった今でも、はっきり拭い去られているとは思えないからです。もしかしたら、色濃く残っているのは農村だけではないかもしれません。

 

 

 

 

 

 

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エトセ工房の石窯パン講座を受講しました。

2022-07-10 16:48:56 | アンティマキの焼き菓子とパン

  先月末、岡崎市額田地区にある木工と石窯の工房・エトセ工房で毎月開かれている石窯パン講習に参加しました。

   くらがり渓谷の近くにある工房は、森の中にあります。かわいい建物が数軒あって、どれもエトセ工房のもの。クルミの木の下にあるこちらが、石窯のある小屋です。建物も石窯も、すべて工房主の磯貝安道さん作。

   さて、こちらの講習会は、天然酵母で仕込むのに一次発酵から始めてほぼ一日で焼成までこぎつけます。どうやったら、そんな短時間でできるのだろうと不思議に思っていたら、レーズン酵母を元にして発酵させた小麦酵母をあらかじめ作っておいて、その小麦酵母を粉と混ぜて一次発酵開始、という順番なのでした。

   粉を混ぜてこねると、こんなふうに。石臼で自家製のあらびき粉を挽いて混ぜてあります。

   発酵器に入れて2~3時間待ちます。その間にお昼ご飯。

   磯貝さんの奥様お手製の昼食付。紅茶豚と新鮮な野菜のサラダ。グリーンカレーに豆のマリネ、野菜のマリネにジャム各種。すべて自家製です。

   稲武の石窯で遊ぶ会のスタッフといっしょにこの日は参加。ほかに、さくら村のスタッフも同席し、ほかに、常滑から年配のご夫婦も参加。彼らは近々、磯貝さんにご自宅の庭に石窯を作ってもらおうと計画中だそう。

   静かな森の中で、香ばしいパンにおいしいおかずをいただきながらの、終わるところを知らない、石窯やパン、食べ物談議。楽しいひとときでした。

  一次発酵を終えた生地を包みなおしてベンチタイム。そのあとすぐに発酵籠に。

   ベンチタイムを終えた後、再度成型し直して二次発酵、というのが普通の順番なのですが、磯貝さんのおっしゃるには、「二度手間になるだけで大した違いはないから、省略している」とのこと。そうか。籠や型の中に入れるのだったら、おんなじことかも。私も今度やめてみようかな。

   再度発酵器に入れて二次発酵開始。生地量580g、だいたい1時間くらいで大きくなりました。

   窯の大きさは、ハウスポニーより小さいのですが、形はよく似ています。中で火を焚き、壁や天井に蓄熱してその熱で焼く、という窯。

   薪は井桁に組んで中央に置き、点火して燃え方が安定したら、奥に移動。この時、薪を組む前に最初に段ボールを敷くのがポイント。そうしておくと、ずずっとずらせば移動が簡単にできます。これ、稲武の石窯でも真似するとよさそう。

  窯の大きさに応じて、いくつも井桁を作っては必要な場所に置くと、窯全体が短時間に温まる仕組みです。窯を直接温める方式は、パンを焼くときに燠を取り出さないといけない面倒がありますが、効率はいい。

   磯貝さんが適当と思う温度になったらクープを入れて、パンを投入。ほぼ20分で焼き上がりとなるそうなので、温度はそこそこ高そう。でもこの日はちょっと低めだったらしく、焼き上がりは白っぽいパンとなりました。

  いったん出してから再度窯に入れて焼成完了。

   窯の中での位置、クープの入れ方によって膨れ方はまちまち。それも勉強になりました。

   磯貝さんは、全国あちこちからの依頼を受けて、石窯を製作しておられます。彼の活動は、こちらをご覧ください。http://etc-ishigama.net/etc.html

 

   

 

 

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映画「マーシャル法廷を変えた男」

2022-07-10 11:20:49 | 映画とドラマと本と絵画

   1941年、実際にあった話を元に作られた映画。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB_%E6%B3%95%E5%BB%B7%E3%82%92%E5%A4%89%E3%81%88%E3%81%9F%E7%94%B7富裕層の家に雇われていた黒人男性が、その家の夫人をレイプし、川に投げ込んだという事件が起き、全米黒人地位向上協会の弁護士マーシャルがその地に派遣されるというところから話が始まります。

   彼は当地の白人弁護士と組んで法廷に臨むのですが、他州から来た弁護士は法廷で発言できないという法律を縦にとって裁判長は彼の弁論を拒否。そこで、彼は保険会計の民事裁判しか経験のない白人弁護士を半ばケンカ腰で教育。弱腰だった白人弁護士は、ユダヤ人。ドイツによるユダヤ人排斥の報を聞くにつれ、次第に黒人差別が他人事でなくなっていきます。

   被告そのものの虚偽証言もあって、裁判は難航。でも、最後は勝訴します。実在の人物マーシャルは、黒人としては初めて最高裁の判事にまでのぼったひとだそう。

   映画は地味だけれど、証人、被告、原告、弁護士、検察側、陪審員、裁判長それぞれの描き方が単純でややこしいところがなく、見ていてすっきりしました。疲れていたのですが、元気が出ました。

   かったるいところもあるのですが、筋の通った弁論が勝利する様子を見るのは気持ちいい。主人公の弁護士が、弁論の技術だけでなく、陪審員の小さな素振りやなんでもない言葉から読み取るすべも心得ていて、卓越していた人だったのだなと想像できました。

   

  

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芳香蒸留水~ハーブウォーター~の採取を学びに行きました。

2022-07-04 17:42:29 | アンティマキ風自然的生活

  ずっと前から、精油や蒸留水を作る手軽な装置を買おうかどうしようか、迷っていました。大きいのはとても高い。でも小さいのならさほどの値段ではないので買ってもいいなとは思うのですが、それでも使わなかったら邪魔なだけ。持っている友人に聞いたら、蒸留水ですらできるのはほんの少しだけ、とのことなので、なおのこと、一歩踏み出せないでいました。

   ところが最近ときたまお会いする機会のある方が、幡豆の工房で蒸留水の講座を開いているとお聞きし、さっそく友人たちとお訪ねしました。

   彼女は小久保亮子さん。ハーブをこよなく愛し、海の見える小高い丘にあるご自宅兼工房の庭で何種類ものハーブを育てていて、そのハーブで種々の蒸留水を作っています。養蜂も手掛けているので、みつろうを使ってクリームなども手作り。工房の中はかぐわしい香りに満ちていました。

   彼女のモットーは、身近にある道具で手軽にハーブを利用すること。私の希望にピッタリです。

   蒸留に使ったのは、ステンレスの蒸し器。耐熱ガラスかステンレスが蒸留にはふさわしいそうです。

   この日は、同行した友人が山で採取したクロモジとタムシバ、それにコアジサイの花を使って、蒸留水の作り方を教えていただきました。真ん中に匂いのつきにくい陶器や耐熱ガラスの器を置き、刻んだ材料を周りに入れます。

   クロモジとタムシバはどちらも大好きな香り。少し量がすくなめなので、お庭のレモングラスも足します。

   蒸し器の上にふたをします。この蓋が大事。ひっくり返して蒸し器の中の容器に水滴がしたたり落ちやすいように、なるべく円錐形のものをえらびます。そうすると漏斗状の蓋を伝って水滴が中央の容器に落ちる、というわけです。

   蓋が大きくても、蒸し器とぴったり重なるものを選びます。下の鍋に水を入れて点火。蓋の上に用意しておいた氷と湧き水か浄水を入れ、加熱し続けます。どんどん氷を入れると、蒸留が早いのだそうです。

   思ったより早めに、植物の匂いがしてきます。植物によって量が採れるものと採れないものがあるそうで、レモングラスは別名「香水ガヤ」といわれるほど、水が採れるけれど、ミントや花は少なめだそう。

   加熱の具合は草それぞれ。ある程度の蒸留水が採れたら、植物の様子を見て続行するかどうか決めたらいいのだそうです。

   ほぼ20~30分ほどでこれだけ採れました。意外に多い。レモングラスの匂いの中に、クロモジやタムシバの匂いが混ざり、いつまでも嗅いでいたいいい香りになりました。

   コアジサイは、鼻を近づけるとほんのり独特の優しい香りがする花です。アジサイは本来毒なのだそうですが、コアジサイは毒のないアジサイ。このコアジサイの花も試しに蒸留水にしてみました。

   花の量が少ないこともあって、レモングラス・クロモジ・タムシバのミックス水より少なめの量しかできませんでしたが、香りはしっかり残っていました。

   亮子さんの作った、ティートゥリーとラベンダー&ローズマリーの蒸留水も含めて、この4本がお土産。

   蒸留水は、本来エッセンシャルオイル(精油)を採るときにできる副産物。精油は古くから自然療法に使われていますが、蒸留水も精油とは異なる効果がたくさんあるのだそうです。

   「精油を作るのはたいへん。でも、ハーブウォーターは誰にでも作れます。ということは、植物のいいところを利用した薬も、誰にでも作れる、と私は考えています」と亮子さん。

   たとえば、彼女は以前目薬を手放せないほどいつも目が痛かったのだそうですが、目をつぶったまま目の前辺りでハーブウォーターの霧を作り、目を開いて開けたりとじたりを繰り返す、ということをしばしば行っているうちに、目の痛みがすっかりなくなったとか。今は市販の目薬を一切使っていないそうです。

   コモンセージやクラリーセージの蒸留水をマウスウォッシュとして使うと、のどの痛みが消えることもしばしば体験済み。蒸し器の下の鍋に残った湯は、足湯や風呂に使うといいそうです。

   「植物はいくつかの機能を持っています。一つだけではない。だから、いくつかの植物を合わせて使うことで、足りないものを補ってくれるので、より多機能の効果を手に入れることができます」

   蒸し器がない場合は、普通の鍋でも代用できるというので、実演してもらいました。

  鍋の中央に容器を置いて、周りに植物を敷き詰めるところは一緒。そのあと、鍋肌から深さ3センチほど水をそっと入れます。蒸し器の場合は最初は強火がいいのですが、こちらは最初から中弱火か弱火で。蒸し器の場合よりしばしば様子を見ないといけないけれど、ほぼ同じように蒸留水ができるそうです。

    化粧水やリンスやシャンプーそのほかいろいろ利用できそうな蒸留水。家にある鍋で結構な量ができると知って、わくわくしました。

   帰宅後さっそく、亮子さんおすすめの本を一冊注文。ハーブウォーターのからだに対する作用~鎮静効果とか消炎効果とかが詳しく書かれていて、42種類のハーブとハーブウォーターについて、とても詳しく書かれています。辞典のような本なので、いざというとき役に立ちそうです。

  近々、試みる予定なのは、ローズマリー。若返りのハーブといわれる植物だそうで、日々の生活にふんだんに使えたらいいなとおもっています。いずれ、近くに住む友人の庭で咲いていたエキナセアも試してみたい。手ごろの蒸し器が家にないので、しばらくは深めのステンレスの鍋で代用するつもりです。

 

 

 

 

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