『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』を見、松岡錠司の相変わらずのうまさに舌を巻く。ストーリーテリングはさしてスムースとは言えないが、感情の起伏を描く一挙手一投足にまったく無理がない。
だが、松岡作品で最も評価しているのは、2003年公開の『さよなら、クロ』である。あの他愛ないペット映画での作者の冷めた視線は高く評価されねばならない。生徒たちが冒頭すぐの後夜祭で仮装行列の衣裳小道具を火にくべる行為が、ラストで用務員役の井川比佐志によって服喪として反復されるあたりは、いかにも松岡的な秀逸な部分であった。
あの主人公の黒犬は、生徒たちにとって、おそらく青春の証人というよりその逆で、青春の臨終を看取りにくる検死官のような存在、たとえばジョゼフ・ロージー監督『夕なぎ』におけるリチャード・バートンのような存在なのではないだろうか。そういうドス黒い何かを提示しながら、あれだけ透明な作品として仕上げるあたりも流石であった。
だが、松岡作品で最も評価しているのは、2003年公開の『さよなら、クロ』である。あの他愛ないペット映画での作者の冷めた視線は高く評価されねばならない。生徒たちが冒頭すぐの後夜祭で仮装行列の衣裳小道具を火にくべる行為が、ラストで用務員役の井川比佐志によって服喪として反復されるあたりは、いかにも松岡的な秀逸な部分であった。
あの主人公の黒犬は、生徒たちにとって、おそらく青春の証人というよりその逆で、青春の臨終を看取りにくる検死官のような存在、たとえばジョゼフ・ロージー監督『夕なぎ』におけるリチャード・バートンのような存在なのではないだろうか。そういうドス黒い何かを提示しながら、あれだけ透明な作品として仕上げるあたりも流石であった。