荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』 松岡錠司

2007-04-27 23:25:00 | 映画
 『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』を見、松岡錠司の相変わらずのうまさに舌を巻く。ストーリーテリングはさしてスムースとは言えないが、感情の起伏を描く一挙手一投足にまったく無理がない。

 だが、松岡作品で最も評価しているのは、2003年公開の『さよなら、クロ』である。あの他愛ないペット映画での作者の冷めた視線は高く評価されねばならない。生徒たちが冒頭すぐの後夜祭で仮装行列の衣裳小道具を火にくべる行為が、ラストで用務員役の井川比佐志によって服喪として反復されるあたりは、いかにも松岡的な秀逸な部分であった。
 あの主人公の黒犬は、生徒たちにとって、おそらく青春の証人というよりその逆で、青春の臨終を看取りにくる検死官のような存在、たとえばジョゼフ・ロージー監督『夕なぎ』におけるリチャード・バートンのような存在なのではないだろうか。そういうドス黒い何かを提示しながら、あれだけ透明な作品として仕上げるあたりも流石であった。

清洲橋

2007-04-27 14:05:00 | 身辺雑記
 我ながら「中洲居士」などと文人めいたネームで気恥ずかしいばかりですが、どうかお許しいただきたい。「中洲」とは僕の居住する日本橋中洲という隅田川沿いの街にちなんでいます。このあたりはオリンピック前までは花街で、佐藤春夫の幻想小説『美しき町』、小山内薫の花柳小説『大川端』の舞台となったほか、小津安二郎『秋日和』、成瀬巳喜男『流れる』、増村保造『女経 耳を噛みたがる女』といった映画作品でもロケされているんですよ。
 
 上の写真は、近所の河岸から撮った清洲橋。今度、この橋が重文になるそうですが。

広尾「茶通」の水茶

2007-04-27 12:58:00 | 味覚
 広尾に開店したばかりの中国茶専門店「茶通」を愛用し始めた。烏龍茶中心の品揃えで、その旨さ、品物の良さは他の追随を許さない。試飲をせずには帰してくれないスタッフの熱意ゆえ、急いでいる時などは少し二の足を踏んでしまうのだが、そもそも「気のせいた奴は中国茶を専門店で買うな」というところだろう。
 
 今回初めて買ってみた茶に「水茶」というものがある。これが実に旨く、気分をほっとさせてくれる。プーアール茶をベースに、五加皮、黒豆、はと麦、小豆、陳皮をブレンドしたもの。プーアール茶のくせは、時として僕には重荷に感じられる日もあるのだが、これならいつも飲めそうだ。

 普段使っている茶葉店は、日本橋箱崎町の「古樹軒」、渋谷道玄坂の「華泰茶荘」といったところだが、いま最も愛用しているのが、広尾の「茶通」ということになる。

オサスナという愛おしいクラブ

2007-04-27 02:56:00 | サッカー
 プロフィールに採用した写真を紹介させていただきます。今年3月上旬、WOWOW『リーガ・エスパニョーラ』のロケ取材でパンプローナを訪れました。この街を訪れたのはこれでおととしに続き2度目。地元のクラブ、オサスナがバレンシアをホームに迎えた一戦を終えたあと、レイノ・デ・ナバーラ競技場内のミックスゾーンにて撮影してもらいました。僕の背後でインタビューを受けているのは、ラウール・ガルシア。「バスクのランパード」とかいろいろなあだ名をもらっている将来有望な19歳で、来季はバレンシアかアトレティコ・マドリーが獲得を狙っているそうです。

大学の新学期

2007-04-27 02:44:00 | 身辺雑記
 もうかれこれ10年間も横浜国立大学で非常勤講師を務めている。1年のうち前期のみ、週1コマ(木 曜2限)だけだから、それほど負担にも感じず今日まで続けてこられた。担当科目は、「映像論B」と いうもので、内容的には毎年マイナーアップグレードを繰り返しつつ、「役に立つ授業」ということを モットーに進めてきたつもり。同僚には、映画評論家の大先輩である梅本洋一、年下の友であり、やは り各誌で批評を書く彦江智弘がいて、けっこう楽しいのである。特に授業後の梅本さんとの「B級グル メ」散歩は恒例の楽しいフィールドワークとなっている。
 この授業もかつては、教室を暗幕で閉め切って、平気で相米慎二監督の『ラブホテル』(成人指定映 画)を最初から最後まで上映していたりした。現在では、セクシャル・ハラスメント的な側面でも、著作権保護の側面でも、このように教育目的とはいえ、鑑賞の強制はNGなんだろうね。