荻野洋一 映画等覚書ブログ

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ロストロポーヴィッチの死

2007-04-28 17:37:00 | 音楽・音響

 すでに報道されているように、ムスチスラフ・ロストロポーヴィッチが27日、モスクワ市内の病院で死んだ。享年80歳だから悲しみというよりも、淋しさが強い。
 ロストロポーヴィッチといえば莫大な作品群の中で、やはりバッハの無伴奏チェロがまず挙げられるだろうが、ブレジネフ政権下に亡命する以前のソ連での活動を纏めた13枚組BOX『the russian years 1950-1974』の気迫に満ちた数々のトラックが捨てがたい。

『NANA』 大谷健太郎

2007-04-28 02:24:00 | 映画
 『NANA』に対しては、やや冷淡な評価を下すことしかできない。少女2人の関係性に絞った点はよいが、だからといって何かが描けているとはいえない。ライブシーンも魅力に乏しく、学芸会のような演技合戦が延々と続き、エキストラの様子も烏合の衆と化している。40億稼いだからといって、ムードに流されることなく凡作であると断じるべきである。大谷健太郎の作品は『アベック・モン・マリ』以降は一応全部見ているが、徐々に悪くなっている。即席ラーメンかファーストフードみたいな味になってきた。大谷健太郎には相当の奮起が必要である。

 ただ、唯一いいと思った点は、「ハチ」を演じた宮崎あおいのナレーション。回想的に「ねえナナ、覚えてる? あなたはあの時○○だったよね」と反復していく。このナレーションがいったい何年後の未来時制から語りかけているのかは不明だが、おそらくこのナレーションの時点では、もうこの少女たちは現在ほど幸福ではなくなっているのだろう、と想像させる。
 これは、大島渚『儀式』における河原崎健三のナレーション「律子さん、覚えていますか? あの時ぼくは…」と繰り返す形式に似ている。河原崎健三が演じた『儀式』の主人公・満洲男は、「非凡」を代表しつつ滑稽かつ荘厳な死を遂げた従兄の輝道(中村敦夫)に対して、『NANA』のハチ同様、「凡愚」を自ら引き受けることで、「総括者」の名誉を保留したのだ。

『ボルベール〈帰郷〉』 ペドロ・アルモドバル

2007-04-28 00:06:00 | 映画
 先月、バルセロナにロケで訪れた折、百貨店「エル・コルテ・イングレス」のCD売場でペドロ・アルモドバルの新作『ボルベール』のサントラを購入した。表題の"Volver"といえば、アストル・ピアソラと並ぶアルゼンチン・タンゴの巨匠カルロス・ガルデルの名曲だが、本作ではモントジータの最高のギターにエストレーリャ・モレンテの最高のボーカルが渋く聴かせる。再来月の日本公開が楽しみだ。

『ボルベール<帰郷>』6月30日TOHOシネマズ六本木ヒルズ他でロードショー
http://volver.gyao.jp/