水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <45>  暑い

2019年01月14日 00時00分00秒 | #小説

 冬に近づけば、寒い・・となるが、当然、夏に近づけば、暑い・・となる。これが四季の移ろいのいいところであり、悪いところでもある。[常夏(とこなつ)の地]と聞けば、快適なハワイのオアフ島とかフィージー諸島のいい気候を連想するが、正確には[常に過ごしやすい快適な気候の地]なのだ。暑いっ暑いっ!! と額(ひたい)の汗を拭(ふ)き、暑いを強調する人々が萎(な)える我が国の猛暑とは雲泥(うんでい)の差なのである。
 暑い・・という言葉を分析すれば、その感じ方にも人によって温度差があることが分かる。この場合の温度差は程度の違いを意味する言葉であり、「ニホンゴ ハ ムズカシイデスッ!」と外国の方々が困惑(こんわく)される気持も分かるような気がする。^^
 とある喫茶店である。クリスマスの夕方、クリボッチ[現代用語で、一人で寂(さび)しくクリスマスを過ごす人]がクリボッチを楽しんでいる。クリボッチの年数が続けば、羨(うらや)ましくなくなり、それはそれで楽しくなる・・というのが分析結果である。^^ 
 店内は暖房が利(き)いていないのか、冷えるほど低い。
「寒いなぁ~! ちょっと暖房、強くしてもらえませんかっ!!」
 店内にいる別の客が、思い余って、ひと声、店員にかけた。クリボッチにすれば、いい頃合いの温度だったから、少し不満が募(つの)ったが、彼は、言うでなく思うに留(とど)めた。
 しばらくすると、店内は暑くなってきた。暑い…と益々(ますます)、クリボッチの不満は募っていった。そのときだった。
「お待ちどうさまっ!!」
 顔馴染(かおなじみ)の女店員が、クリスマス限定サービスのケーキを運んで現れた。クリボッチは毎年のことでそのサービスを分かっていたから、ニッコリ微笑(ほほえ)み、軽く会釈(えしゃく)した。そして、
「もう一杯、いただけますかっ!」
 クリボッチはコーヒーを、おかわりした。
「はい…」
 女店員はトレイへ空(から)になったコーヒーカップを乗せ、微笑みながら去った。クリボッチは、いつの間にか、暖房が強まった暑さの不満を、女店員の微笑で忘れていた。
 分析の結果、暑い・・と思う気分は、小さないいこと・・があれば忘れ去られることが窺(うかが)える。^^

                                


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