水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <46>  味(あじ)

2019年01月15日 00時00分00秒 | #小説

 囲碁のテレビ解説を観ていると、「あっ! そう出ますとホニャララですから、味(あじ)がなくなりますよねっ!」などと解説者が、さも全(すべ)てを知っているかのような口調(くちょう)で語っておられるが、[失礼! ^^]この味という言葉も、分析してみれば、味わい深いことが分かってくる。^^ 例えば、料理の味だと、「…なかなか深みがある、いい味ですなっ!」となる。芸能方面だと、「あの俳優さん、なかなか渋いいい味を出すねぇ~!」である。他にも、「女足軽のSF時代劇ですが、なかなか味わい深い、見応(みごた)えある作品に仕上がってますなっ!」などとなる。^^ 孰(いず)れにしろ、味わい深いことに変わりはないのだが…。^^
 とあるテレビ局の料理番組の収録中である。有名な早口の女性料理家が料理を作っている。裏方のマネージャーが料理家に合図を送るものだから料理家は作りにくくって仕方がない。だが、そうとも言えず、マネージャーのせいにするだけで、多くは語らないようだ。
「ど、どう!?」
 女性料理家は味見(あじみ)用の小皿(こざら)に鍋(なべ)の汁(しる)を少量入れ、忙(せわ)しなく女性アナウンサーの前へ差し出す。
「美味(おい)しいですねっ!」
 アシスタント・ディレクターが『あと、2分。急いで!』と書かれたカンペ[カンニング・ペーパーの略で、台本内容や構成を出演者に掲示する紙(主にスケッチブック)]を、見て下さいっ! と言わんばかりに、女性料理家の前へ突き出す。
「わ、分かってるわよっ!」
 笑いながら、女性料理家は呟(つぶや)く。
「えっ?」
 女性アナウンサーが怪訝(けげん)な顔で女性料理家を見る。
「いいえっ! いいお味でしょ!?」
 女性料理家は味で話を暈(ぼか)す。
「あっ、ああ! はい…」
 キツネに抓(つま)まれたように、女性アナウンサーは返す。
 分析の結果、味は、味よくいろいろな場面で使われている言葉だと分かる。^^

                                


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