本日7月23日は、フランスの衛星国であったマインツ共和国がプロイセン王国軍に降伏して再征服された日で、国後島を測量中のロシア艦長ヴァーシリー・ゴローニンを松前奉行が捕らえて箱館に監禁された日で、薩摩の西郷隆盛・大久保利通と土佐の坂本龍馬・中岡慎太郎らが薩土盟約を締結した日で、朝鮮の漢城で興宣大院君らの煽動を受けた兵士が反乱が起こして閔妃一族や日本公使館員らを殺害した日で、パレスチナ解放人民戦線がエル・アル航空のボーイング707型機をハイジャックした日で、新左翼・日本赤軍派らが乗っ取りリビアのベンガジ空港に着陸させていた日本航空ジャンボ機が犯人の仕掛けた爆薬で爆破された日で、首都圏で280万世帯で停電が起きた(エアコン使用による電力需要激増により電力消費量が発電所の発電能力を超えたのが原因。経済損失は1兆8千億円と試算されている)日で、中華人民共和国・浙江省温州市で高速鉄道同士が衝突・脱線して35人が死亡・約200人が負傷した日です。
本日の倉敷は曇りでありましたよ。
最高気温は三十一度。最低気温は二十七度でありました。
明日は予報では倉敷は曇りとなっております。
或る夜の事。
狐は先輩と一緒に或るパブリック・ハウスのカウンター席に腰をかけて、絶えずミルクを舐めてゐた。
狐は余り口をきかなかつた。が、先輩の言葉には熱心に耳を傾けてゐた。
「君は愛嬌といふものが無いね」
先輩は頬杖をしたまま極めて無造作に私に述べた。
「可愛げといふものがない」
む。
「もっと可愛げといふものを出してみては如何?」
私も可愛げといふものを出せるものならば出したいのですよ。
「諦めてはいけません。努力するのです」
これでも努力をしているつもりなのです。しかし私が可愛げといふものを出そうとすると何故か周囲の人が怯えてしまふのです。
「ふむん?」
先輩はお喋りを止めて考え込んだ。
狐の言葉は先輩の心を知らない世界へ神々に近い世界へと解放したのかもしれない。
狐はブランデーを注文し、割賦の中でミルクと混ぜ合わせて舐めた。
先輩は言つた。
「では試しにやつてみせてください」
狐は先輩に狐が思う可愛げとやらを披露してみた。
先輩は怯えた顔をして言つた。
「分かりました。君は無理をする必要はありません」
先輩は何故かがくがくと震えてゐる。
狐は何か痛みを感じた。が、同時に又歓びも感じた。
私は自由だ。
そのパブリック・ハウスは極小さかつた。
しかしパンの神の額の下には赫い鉢に植ゑたゴムの樹が一本、肉の厚い葉をだらりと垂らしてゐた。