さて、2019年も映画をたくさん観てきたので、自分なりにベスト10を発表していこうと思います。
その前に、僕が2019年に観てきた映画の一覧を発表しておきます。
1月(19本)
くるみ割り人形と秘密の王国
スマホを落としただけなのに
遊星からの物体X
津軽のカマリ
十年
ボヘミアン・ラプソディ
神の発明。悪魔の発明。
ドラゴンボール超 ブロリー
鈴木家の嘘
アストラル・アブノーマル鈴木さん
いろとりどりの親子
テルマ
来る
家へ帰ろう
恐怖の報酬
夜明け
アリー/スター誕生
ガンジスに還る
こんな夜更けにバナナかよ
2月(15本)
メアリーの総て
世界で一番ゴッホを描いた男
彼が愛したケーキ職人
チワワちゃん
そらのレストラン
葡萄畑に帰ろう
シンプルギフト はじまりの歌声
赤い雪
がっこうぐらし
あまのがわ
ヴィクトリア女王 最期の秘密
アクアマン
ファーストマン
メリーポピンズ リターンズ
YUKIGUNI
3月(16本)
未来を乗り換えた男
アリータ バトル・エンジェル
モースト・ビューティフル・アイランド
ナポリの隣人
世界でいちばん悲しいオーディション
半世界
いのちの深呼吸
凛-りん-
劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>
女王陛下のお気に入り
盆唄
たちあがる女
恋のしずく
バスキア、10代最後のとき
翔んで埼玉
ROMA ローマ
4月(29本)
顔たち、ところどころ
金子文子と朴烈
ふたりの女王 メアリーとエリザベス
まく子
バジュランギおじさんと、小さな迷子
ぼけますから、よろしくお願いします
洗骨
あなたはまだ帰ってこない
ブラック・クランズマン
スパイダーマン:スパイダーバース
フラワーショウ!
ビール・ストリートの恋人たち
レゴ® ムービー2
ウトヤ島、7月22日
キャプテン・マーベル
グリーンブック
内回りの二人(MOOSIC LAB 2018)
月極オトコトモダチ(MOOSIC LAB 2018)
いつか輝いていた彼女は(MOOSIC LAB 2018)
無限ファンデーション(MOOSIC LAB 2018)
ドキ死(MOOSIC LAB 2018)
左様なら(MOOSIC LAB 2018)
ゆかちゃんの愛した時代(MOOSIC LAB 2018)
普通は走り出す(MOOSIC LAB 2018)
岬の兄妹
空の瞳とカタツムリ
THE GUILTY ギルティ
マイ・ブックショップ
ゴッズ・オウン・カントリー
5月(22本)
移動都市/モータル・エンジン
麻雀放浪記2020
誰がために憲法はある
バクシーシ山下の社会科見学in新潟9
ある少年の告白
愛がなんだ
ドラえもん のび太の月面探査記
コンジアム
眠る村
ハンターキラー/潜航せよ
劇場版シネマ狂想曲 名古屋映画館革命
超・暴力人間
恋のクレイジーロード
シャザム!
バースデー・ワンダーランド
あの日々の話
ちいさな独裁者
オーヴァーロード
神宮希林 わたしの神様
希望の灯り
ドント・ウォーリー
映画としまえん
6月(22本)
誰がための日々(にいがた国際映画祭)
それだけが、僕の世界(にいがた国際映画祭)
パッドマン 5億人の女性を救った男(にいがた国際映画祭)
血筋(にいがた国際映画祭)
最初で最後のキス(にいがた国際映画祭)
アメリカン・アニマルズ
あまねき旋律(にいがた国際映画祭)
ラ・ヨローナ~泣く女~
ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど(にいがた国際映画祭)
主戦場
サンセット
まぼろしの市街戦(にいがた国際映画祭)
アベンジャーズ/エンドゲーム
氷上の王、ジョン・カリー
バイス
記者たち 衝撃と畏怖の真実
沈没家族
小さな恋のうた
貞子
プロメア
ウィーアーリトルゾンビーズ
地蔵とリビドー
7月(22本)
海獣の子供
ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
嵐電
パパは奮闘中!
ホットギミック ガールミーツボーイ
メン・イン・ブラック:インターナショナル
アマンダと僕
新聞記者
ビューティフル・ボーイ
パピヨン
山懐に抱かれて
ザ・バニシング ‐消失‐
カニバ パリ人肉事件38年目の真実
オドルフク
We Margiela マルジェラと私たち
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
きみと、波にのれたら
凪待ち
誰もがそれを知っている
沈黙 立ち上がる慰安婦
青の帰り道
イメージの本
8月(14本)
アラジン
マーウェン
ピッチの上の女たち
ボールを奪え、パスを出せ FCバルセロナ最強の証
蹴る
Diner ダイナー
チャイルド・プレイ
12か月の未来図
天気の子
ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス
よこがお
ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲
イソップの思うツボ
命みじかし、恋せよ乙女
9月(19本)
雪子さんの足音
さらば愛しきアウトロー
クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代
アルキメデスの大戦
トイ・ストーリー4
カーマイン・ストリート・ギター
フリーソロ
ポラロイド
アジアの純真
旅のおわり世界のはじまり
トールキン 旅のはじまり
HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ
カンパイ!日本酒に恋した女たち
いなくなれ、群青
狼煙が呼ぶ
メランコリック
台風家族
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
ある船頭の話
10月(25本)
帰れない二人
葬式の名人
パラダイス・ネクスト
岡本太郎の沖縄
工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男
アド・アストラ
アナベル 死霊博物館
アイネクライネナハトムジーク
惡の華
宮本から君へ
見えない目撃者
眠り姫(光と影を紡ぐ異彩 七里圭Ⅱ)
あなたはわたしじゃない(光と影を紡ぐ異彩 七里圭Ⅱ)
Nectie(光と影を紡ぐ異彩 七里圭Ⅱ)
風をつかまえた少年
俺は前世に恋をする(荒木&BTまんがまつり)
スケバンくノ一(荒木&BTまんがまつり)
おいしい家族
米軍が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯
ヒキタさん!ご懐妊ですよ
ブルーアワーにぶっ飛ばす
無限ファンデーション
アートのお値段
WALKING MAN
HELLO WORLD
11月(19本)
今さら言えない小さな秘密
五億円のじんせい
ドリーミング村上春樹
ロビンソンの庭
居酒屋ばあば
エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ
空の青さを知る人よ
真実
スペシャルアクターズ
光と血
7s
ジョーカー
“樹木希林”を生きる
最初の晩餐
NO SMOKING
白痴
ボーダー 二つの世界
恐怖人形
It the end
12月(22本)
IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
ひとよ
やっぱり契約破棄していいですか?
聖なる泉の少女
草間彌生∞infinity
地獄少女
ブライトバーン/恐怖の拡散者
人生をしまう時間(とき)
殺さない彼と死なない彼女
アナと雪の女王2
ユーリー・ノルシュテイン《外套》を作る
森山直太朗 人間の森をぬけて
<片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事
デイアンドナイト
埃(藤井道人ムービーセレクション)
東京(藤井道人ムービーセレクション)
寄り添う(藤井道人ムービーセレクション)
ドクター・スリープ
i-新聞記者ドキュメント-
ゾンビ 日本初公開復元版
夕陽のあと
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
ちなみに数えたら、245本も観ていてドン引きしました。
年々増えているし、さすがに観過ぎですね…来年からはちょっと考えます!
という訳で、発表していきます!
毎年カウントダウン方式でやっていきましたが、今年は普通に1位から発表していきます。
2019年映画ベスト10
第1位 ウィーアーリトルゾンビーズ
それぞれ両親を亡くした4人の中学生が出会い行動を共にしやがてバンドを結成する冒険をRPGのように描く。
8bitの音楽、キレのある台詞、スクリーンに広がる大胆なカット、トリップ感のある実験的な映像表現など見所ばかり!
両親の死から始まる物語だがよくある悲しみの克服だけでは終わらず、いじめられっ子が成長し過去に復讐するだけの物語でもない。映画はさらにその先を描く、子供達は大人が考えるベタの先を行く。感情がなくても、ダサくても強く生きていく。彼らのノーフューチャーな未来へ!そして映画の未来へ…
映像、台詞、音楽…全てから、この時代に新しい映画を作る!って挑戦が感じられ、そこで描かれるのが人生に絶望しながらも世の中に挑発的な子供達ってのが最高でした。
第2位 惡の華
自分のエロに対する自己嫌悪を一生抱えて生きていくのも、自分も世界も全部が嫌で消えてしまえって思うのも、無力すぎて何もできないのも、全部まるで自分を見ているみたいに気持ちがわかってしまって、心がグサグサと刺され傷付きながらも、愛おしくてたまらない映画でした。
高男の「一生許されない」とか「僕は空っぽだ」という台詞も、どう見ても地雷の仲村に惹かれてしまうのも、仲村が何もかも嫌で汚い言葉を吐くしかできないのも、自分の故郷を呪う気持ちも、全部気持ちが分かってしまいました。
全然爽やかじゃないし何もかも歪でひねくれているのにこんな真っ直ぐな青春映画観たことないと思いました。
例えるなら、「耳をすませば」と「愛のむきだし」の二つの感動が一度に来た感じでした。
人間の変態性を描きながらまっすぐな人間愛を描く、井口昇監督の才能が爆発していました。
第3位 アストラル・アブノーマル鈴木さん
地方都市の衰退と閉塞感、YouTuberの主人公、引きこもりの弟、シングルマザーの母、メディアの傲慢、芸能界の闇という現代社会のリアルを描いた社会派映画でありながら、そのすべてを全力で挑発したパンク映画の大傑作だと思いました。
とにかく僕はダメな奴がダメな奴なりに全力でもがいたりする映画が大好きなんですが「アストラル・アブノーマル鈴木さん」はそんな気持ちをガンガン揺さぶってきて「SRサイタマノラッパー」「百円の恋」以来の衝撃で、この映画に出会うために生きてきた!と思ってしまったほどでした。
主演の松本穂香さん、「ひよっこ」で好きな女優さんだったのですが、こんなに刺激的でキュートな女優さんだったのか!と衝撃を受けました。
常にひねくれて世界を挑発している愛すべきダメ人間の鈴木ララという人物が最高すぎて、エンディングのダンスも最高すぎて彼女が自分の中に住み着いてしまった感じがしました。
第4位 レゴ® ムービー2
アニメ映画史に名を残すレベルの大傑作だった2014年の前作「LEGO® ムービー」の続編。
今作もハイテンション、ハイテンポ、パロディギャグ満載、超展開連続のジェットコースタームービーで、大興奮と爆笑の嵐の後で心の琴線に触れるようなラストに思わず涙をしてしまいました。
レゴというおもちゃで映画を作ることを遊び尽くしたようなアイデアの数々は最高に楽しかったし、数々の映画のパロディからは「映画」そのものへの愛を感じました。
ストーリーはメタギャグ満載でひねりが効いているけれど同時にストレートに胸を打つもので、レゴで子供達が仲良く遊ぶように、映画が作られることって本当に素敵なことなんだなって思ったら涙が出ました。
第5位 金子文子と朴烈
大正時代、関東大震災の直後に政府による朝鮮人の無差別大量虐殺が横行する日本で、アナーキストの朴烈(朝鮮人)とその同志であり恋人の金子文子(韓国育ちの日本人)が日本に抵抗し続けた姿を描いた実話に基づく映画。
日本政府によるマジでえげつない朝鮮人差別をこれでもかと描いた上で、捕まった朴烈と金子文子が日本政府を挑発し続ける姿がハラハラするんだけど、日本の愚劣さを暴いていくのが痛快だし権力に屈しない姿がカッコ良かった。
役者さんの熱演に本気でしびれるという体験をしました。
今の日本でも韓国人差別は横行してるけど、この映画を観ると関東大震災直後の日本人による朝鮮人の大量虐殺から100年も経っていないしマジで根深い問題なんだなと思わされ、まさに右でも左でもない普通の日本人の皆さん全員に観てほしい映画でした。
第6位 見えない目撃者
交通事故で弟と視力を失った元警察の盲目の女性が、偶然接触した車に誘拐事件を感じとり、最初は警察にも幻聴だと一蹴され立件もされなかったのを、視力以外の研ぎ澄まされた感覚と鋭い洞察力で周りを動かし事件を解決に導いていくサスペンス。
最初は立件もされない、目撃者もいるけど証言が噛み合わない、みたいな絶望的な状況から、針の穴を通すような小さな手がかりを見落とさずに、最終的には連続殺人事件に繋がっていくハラハラするストーリーはその時点で凄いのに、主人公が盲目だからこその展開も多く、まったく飽きさせませんでした。
弟を失った主人公が今度は誰も殺されたくないという気持ちから被害者を守ろうとするとか、目が見えないが故にピンチになるけど目が見えないが故の強みで戦うとか、警察時代に得たもので反撃するとか、ストーリーの勢いを加速させたまま今までの全てが収束していくクライマックスは見事でしたね。
「ブラインド」っていう2011年の韓国映画の日本版リメイクらしいので、そっちも観てみたいですね。
第7位 無限ファンデーション
大まかなあらすじ以外の細かい台詞や演技は全編即興という超斬新な手法で撮られた映画なんだけど、それ故に生じる緊張感が高校演劇を舞台にすれ違い無防備に傷付け合う少女たちのヒリヒリした青春の物語をこれ以上ないくらい鮮烈に描き出した傑作でした。
誰もが必ず一度は直面するであろう誰も悪くないのにすれ違い傷付け合ってしまう泥沼みたいな人間関係を、最も繊細な思春期の少女たちが経験する物語なので、観ていて本当に心にグサグサ刺さるけど、全編即興という手法で描くことで、闇の中を手さぐりで答えを探そうとする物語になっていたと思います。
そんなグサグサ刺さる物語の中で西山小雨さんの音楽が本当に優しくて泣いてしまいました。
思春期の高校生、かつて思春期だった大人、映画や演劇や音楽が好きな人や実際にやってる人、間違いなく心を動かす人生で大切な一本になる映画です。
全編即興という斬新さという意味でも、青春映画、音楽映画としての完成度の高さという意味でも、「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の南沙良と「はらはらなのか。」の原菜乃華とシンガーソングライターの西山小雨の奇跡の共演という意味でも、必見の一本でした。
第8位 アルキメデスの大戦
山崎貴監督って感動の押し付けみたいなマイナスイメージがあって苦手だったんだけど、本作は物語をグイグイ動かす役者の熱演、メッセージ性の強さなど、完全に山崎監督のこれまでと一線を画した傑作になっていたと思います。
冒頭、戦艦大和が沈むという歴史的な事実を映像で再現した功績は本当に大きいと思うし、ジェームズ・キャメロンがタイタニックの沈没を映画化したように、VFX作家出身の山崎監督の能力が最大限に発揮されていました。
そこから日本軍で戦艦大和の建造計画が持ち上がる場面に時間は遡り、日本軍の陰謀を暴くために天才数学者が呼ばれる、という構成の物語ですが、何が驚きって、最終的に戦艦大和は建造されて沈没するという結末はもう歴史的事実として全部分かっているのに面白いってことなんですよね。
戦艦大和が建造される理由が、戦時中から現代まで続いているであろう日本という国の体制の欠点を物凄く痛烈に皮肉っていると思ったし、そんな軍という権力の上下関係ガチガチな世界を異端者である数学者の主人公が天才的な能力によって周りを圧倒していくのが、物凄く痛快でした。
スパイ映画的なサスペンスや、敵対していたコンビが徐々に友情を築いていくバディものの魅力、さらにそこにタイムリミットサスペンス的な要素もあって、まあ盛り上がる盛り上がる、そして完全に不利な状況に耐え抜いて耐え抜いてアイディアと努力で主人公が主人公の勝利の瞬間のカタルシスは尋常じゃなかったです。
しかし最終的にそれでも戦艦大和は建造されてしまう、その秘密が明かされた時の衝撃からの最後の台詞に込められた戦争や日本という国への痛切な視点、日本映画史に残って欲しいと本気で思いました。
第9位 チワワちゃん
東京で遊びまくっていた男女の中の一人、チワワちゃんと呼ばれていた女の子がある日突然殺害され、主人公が昔の友人たちと再会したりしながら死んだチワワちゃんのことを回想していくという青春映画。
彼らの遊び方がマジでえげつなくて、今まで青春映画って若き日々のキラキラしたイメージだったけど、「チワワちゃん」では青春をいずれ終わりゆく限りある人生の全力の無駄遣いとして描いていて、でも確かに青春ってそうだよなあって思いました。刹那的でお行儀が悪くてでもそれ故の儚い輝きもあるという。
回想シーンに登場する彼らの若き頃の描写がギラギラしたMVみたいなのに対し、チワワちゃん死後の現代の彼らには当時の幻想が崩れていく感じの生々しさがあって、夜から朝になっていくエンディングも彼らの青春の終わりみたいですごく良かった。終わって振り返って気付くのが青春なのかなと思いました。
「チワワちゃん」に出てくるようなパリピ的な青春とは程遠い僕も映画を観てる間は「この気持ち分かるなあ」と共感したりもしたので映画って面白いなって思います。例えば昔はしょっちゅう遊んだけど今はもうまったく会わなくなった友人とか僕もいるわけで、ある意味普遍的な青春映画なのかも知れません。
第10位 WALKING MAN
工業地帯の母子家庭で暮らす乞音の少年が、特殊清掃のバイト中に偶然ラップに出会い、どん底の生活を送りながらも少しずつ自分の言葉を持っていく物語。日本のリアルな貧困も地方都市のアンダーグラウンドも主人公の成長もラップの魅力も90分に詰め込んだ傑作だと思います。
母親が突然入院して保険料の滞納が発覚した時の嫌味な医者(なんとほっしゃん。!)から言われる「自己責任」、明らかに今の世の中への抵抗がこの映画にあると思ったし、それってそのままラップという文化の存在意義だよなあなんて思ったりしました。音楽以前に思想的な部分でヒップホップだなという。
家賃や光熱費の滞納、スマホが買えない女子高生の妹の万引きや風俗でのバイト、借金まみれの職場の先輩、貧困生活と地続きにあるアンダーグラウンド、とにかく地方都市と貧困の描写が生々しくて刺さったし、そんな日々の中でラップという希望を胸に必死に生き抜く主人公を応援してしまいました。
以上、僕が選ぶ2019年映画ベスト10でした!
せっかくなので、20位まで発表してみようと思います!
第11位 マーウェン
模型の街とフィギュアでナチスと戦う美女の戦士たちの物語を作り続ける主人公。彼は暴行事件の被害に遭い記憶障害やPTSDに苦しんでいた…
主人公の物語と、彼の作る物語を交互に描き、表現をせざるを得ない者の複雑な気持ちを描ききった傑作だと思います。
主人公は裁判があったり、片想いをしたり、人生に色々なことが起きると、その度に彼のフィギュアたちの物語は動き出します。同時に彼の妄想と物語の境界線も徐々に曖昧になっていきます。
表現行為をせざるを得ない人間は周囲からは奇異な目で見られがちだけど、そんな人間の姿を全力で肯定した優しい映画だなと思いました。
創作と生きることは地続きだと思える映画という意味で、大人向けのレゴ・ムービーみたいだと思いました。
それにしても美少女戦士たちがナチスをぶっ殺しまくるなんて、主人公の趣味が全開で最高でしたね。あと、ロバートゼメキス監督によるバック・トゥ・ザ・フューチャーへのセルフオマージュも。
しかもこれ実話だったというのも驚きでした。
第12位 小さな恋のうた
MONGOL800の名曲から生まれた、沖縄のバンド高校生たちの青春映画なんだけど、描いてるテーマが想像以上に広く深くて驚かされました。
基本的には高校生の葛藤と成長を描いた直球の青春映画なんだけど、沖縄の米軍基地の問題もガッツリ描いていて、それでもちゃんと爽やかな青春映画になってたのが凄いと思いました。
米軍基地に対するデモも登場するんだけど、米軍家族の居住地を囲むフェンス越しにアメリカと日本の若者が片耳ずつイヤホンで同じ音楽を聞くように、国を越えて分かり合える可能性も示していたのが凄いと思いました。
日本とアメリカ、親と子、生と死など、離れ離れの人と人が音楽で繋がる可能性を示した、本当に感動的な映画だったと思います。
「小さな恋のうた」というラブソングが表現している色んな意味での「愛」、凄い歌なんだなとあらためて思いました。「すぐそばにいるの」ですからね。
第13位 世界でいちばん悲しいオーディション
アイドル芸能事務所WACKのオーディションに参加する女の子たちを追ったドキュメンタリーなんだけど、あまりに過酷な内容に参加者たちが苦しむ姿が壮絶すぎて、これを面白いって言っちゃっていいのか分からないんですが、凄まじく心を揺さぶられてしまったことは間違いないです。
過酷なオーディションの中でもがく者、逃げ出す者、それを取りまとめる大人達など、あらゆる人間臭さが残酷なくらい全開になっていく様子が強烈でした。
アイドルもドキュメンタリーも、人間がもがけばもがくほど面白いエンターテインメントになってしまう、という残酷な現実をこちらに突き付けてくるような映画で、WACKという事務所、そしてこの映画そのものが、この映画に体当たりで挑んだんだなあと思いました。
悪趣味、と一言で片付けてしまうのは簡単ですが、自分はこの映画の出演者や作り手たちのように精一杯生きているだろうか…なんてことさえ考えさせられてしまうくらい、心を動かされる映画でした。
第14位 ブラック・クランズマン
1979年、アメリカ初の黒人警察官がユダヤ人の警察官とコンビを組んでKKKに潜入捜査という凄すぎるストーリー。最後まで緊張感が途切れないスリリングなサスペンス。白人、黒人、そして警察の関係の複雑さや、差別の残酷さを浮き彫りにした傑作だと思います。
サスペンスとしての面白さはもちろん、黒人差別の複雑な現状も描いていて、例えば警察内部でも黒人差別があるんだけど、主人公の行動がその現状を少しずつ変えていく様子は凄いなと思いました。白人と黒人が争うのではなく、知性と勇気で争いを防ごうとするというストーリーが本当に良かったです。
劇中、KKKが「アメリカファースト」とトランプ大統領と同じ台詞を言っていて怖かったですね。そしてハッピーエンドかと思いきや最後に今のアメリカで実際に行われているヘイトスピーチの映像が流れ、映画の中だけではない現実の問題を突き付けられ、「NO PLACE FOR HATE」という言葉が胸に残りました。
第15位 青の帰り道
2008年に高校生だった男女7人の10年間を描いた群像劇で、地方と東京、夢と現実、親と子などの青春映画の王道のテーマを扱いつつも、それを7人の個性とともに、さらにあの時代の雰囲気とともに一つの作品に織り上げていく手腕が本当に見事でした。
きっとどこかにこんな人達がいるんだろうなとしか思えない存在感のある登場人物ばかりで、彼らの生きた時代と年齢が自分とほぼ同じなので共感してしまったし(あとで分かったんだけど監督と同い年でした)、彼らの幸せを願ってしまう自分がいました。
ストーリー以外でも、2008年~2018年までの時代の雰囲気がよく出ていたので、10年後、20年後に観返したくなるであろう映画だと思います。
第16位 岬の兄妹
足に障害があり仕事を失った兄が、精神障害のある妹の二人暮らしの中で、行き場のない貧困から妹に売春させるという衝撃作。
明らかに人として間違ったことをしているのに、じゃあどうすれば良かった?って考えても答えが出ないというあたりが本当にしんどい話なんですよね。二人とも責められない、責められないのに二人とも不幸になっていく、それがつらすぎるんですよね。
それなのに、ストーリーも役者さんたちの演技もとにかく見応えが凄くて、最後までまったく目が離せずにグイグイ引き込まれてしまって、90分くらいの上映時間があっという間に終わってしまうすごい映画でした。心にグサグサ刺さるけどすごく面白かった。
第17位 天気の子
新海誠監督の映画は、世界という大きなものと、個人の気持ちという小さなものとの対比が素晴らしいと思ってます。
そんな新海監督が、主人公が彼女を想う気持ちをほとんど暴力的と言っていいほど全力で描いてしまったことに驚きました。しかも驚異的に美しい映像とともに。ここまでやるとは…という衝撃がありました。
常識や正しさでは測れない人間の強い感情や言動も真っ直ぐに感動的に描けてしまう、これこそ映画の力だと思いました。新海監督から「お前の思うままに真っ直ぐ生きろ」と言われた気がして感動してしまいました。
「君の名は。」の東京が田舎の人が憧れるインスタ映え的な都会だったのに対し、「天気の子」では汚い路地裏など都会の孤独や影の部分を描いていて印象的でした。そんな都会のはぐれ者な男女が惹かれあうストーリーにも感情移入できました。
また本作は気候が物語の鍵になっていることもあり、新海監督の得意な風景描写を丁寧に描くことで登場人物たちの気持ちが行間を読むようにじっくり伝わってくる感じが何とも良かった。
ところで僕の周りはわりと「君の名は。」の記録的ヒットの時に「俺達オタクの味方だった新海監督がリア充に媚を売る商業監督になりやがった」的な意見を見たんだけど、「天気の子」で確信したのは、新海監督はオタクとかリア充とかもはやそういう次元にいないぶっ飛んだ愛すべき変態映画監督ってことです。ほぼカルト映画だよ!アニメ映画の新しい可能性に挑戦し続ける新海監督を応援したいと思います。
第18位 翔んで埼玉
強烈なバイオレンス映画が時として人間の本質を浮き彫りにしちゃうことがあるけど、関東の地域格差という地味だけどそこに暮らす人々にとってはわりと深刻な題材にここまで力を入れて遊び倒してしまったこの映画、実は日本の本質をうっかり突いた名作になっているのではないかと思います。
一見埼玉ディスの差別的な内容に思えるかも知れないけど実際は真逆で、地域格差という現実に全力で向き合うことで現実を浮き彫りにした挑戦的な映画で完成度の高いコメディだと思いました。タブー視される問題もコメディにすることでネタに出来るのは、映画の持つ強い力だと思います。
でも実際やっているのは予告編でも言っている通り「茶番劇」で、そのために一流の俳優を揃え、漫画をさらにカリカチュアさせたような強烈なキャラクターに、豪華絢爛な衣装と舞台美術に、あれだけ大人数のエキストラを集めて都庁周辺を封鎖して大規模なロケを行う…日本のコメディはここまで出来るんだって感動しました。
そもそも埼玉ディスって言うけど少なくとも僕は埼玉愛しか感じなかったし、だからこそ感動もしたし、でも最後まで見ると果たしてそれだけが正解なのか?っていう視点もちゃんと入れてきてただのお気楽なハッピーエンドにはしないぞってあたりも抜かりがないと思いました。時代を越えて語られて欲しい映画です。
第19位 スパイダーマン:スパイダーバース
スパイダーマンの映画はたくさんありますが、今回はアニメ、しかも情報量が多くてちょっとクラクラしました。でも「親愛なる隣人」という愛称の通り普通の少年がヒーローとして頑張る身近さや全体的にノリのいい作風などやっぱり魅力的なヒーローだと思いました。
スパイダーマンはたまたま特殊能力を身に付けてしまった普通の少年が人間としてもヒーローとしても成長していく姿が魅力ですが、今回はスパイダーマンがすでに活躍している世界で新たな少年がスパイダーマンを継承していく物語で、今まで描かれてきたスパイダーマン達へのリスペクトを感じました。
色んな世界の色んなスパイダーマンが大集合しちゃうSF的展開、画風もバラバラでまさにアニメでしか出来ない表現で、あれは漫画のキャラだよっていうメタなギャグであり、アベンジャーズ的なものへのオマージュであると同時に、色んな世界を知ることで人は大人になるって意味もあるのかなと思いました。
そんな感じでめちゃくちゃ楽しんだ映画なんですけど、最後の最後に亡くなったマーベルコミックの原作者、スタン・リー氏からのメッセージが出てきて泣いてしまいましたな。そうだよな、ヒーローって、強さってそういうことだよなっていう真っ直ぐな言葉で、これからもその意志とともにスパイダーマンや様々なヒーローが愛されてほしいと思いました。
第20位 ホットギミック ガールミーツボーイ
最近流行りの少女漫画原作の青春恋愛映画みたいな顔して、いやいや普通の青春映画そんなことしないだろ!?っていう強烈な表現を連発しまくる挑発的な映画でした。山戸結希監督の個性が前作「溺れるナイフ」以上に全開で嬉しくなりました。
優柔不断な女子高生の主人公が、幼馴染のカリスマモデルと、上から目線でドSな秀才、タイプの違う二人のイケメンに翻弄される…って聞くとベタな少女漫画設定なんだけど、彼らのカッコ良さだけでなく弱さや醜さまでもデフォルメして全面に出すという描き方に、ただの青春映画じゃないぞ!って挑戦的なものを感じました。
二人に翻弄されていたはずの優柔不断で無防備な主人公が、いつしか二人を翻弄してしまっているという展開がなかなか痛快でした。恋愛をすることは人間の一番弱い部分を見せる行為だったり傷付けあう行為なんだけど、でもその先に人は進めるんだなって、最後は驚くほどポジティブな気持ちになりました。
以上、20位まででした!
最後に、2019年の特別賞を発表したいと思います!
特別賞 アジアの純真
2009年の映画の特別上映なので、2019年のランキングからは外しましたが、10年も前にこんなにすごい映画が作られていたのかという衝撃を受けたので、特別賞です。
在日韓国人の少女が殺され、その双子の妹と、事件現場を目撃するも何も出来なかった日本人の少年が、毒ガスで復讐を図って逃走するという衝撃作。
例えば「太陽を盗んだ男」みたいに、社会問題と人間の暴力性を全力で描いた上でエンターテインメントに昇華している映画は本当に最高だと思っていて、韓国映画によくあるけど日本にもこういう力強い映画があったんですね。考えさせられる部分もあったし青春映画としての魅力もありました。
毒ガステロを図り逃走する彼らは明らかに犯罪者なんだけど、でも彼らに共感したり青春映画としての魅力的を見出してしまう。こういう正しい正しくないでは図れない人間を描けるのは本当に映画の力だなと思いました。個人的に「天気の子」に通じる感動がありました。
拉致問題と北朝鮮や韓国へのヘイトが起こった2009年に作られた映画なんだけど、再び韓国ヘイトが問題になった今こそ上映しようと脚本家の井上淳一さんとシネ・ウインドの皆さんの協力で2週間の準備期間で新潟上映を成し遂げたそうです。その話だけでもう感動的だし勇気がもらえました。
上映後には脚本家の井上淳一さん、ヒロインの韓英恵さん、映画の中でまさかの毒ガスを投げ付けられる役を演じている蓮池透さんのトークもあり、この三人が揃うこと自体が凄いなあと思いました。個人的に日本と韓国のハーフの韓英恵さんの「韓国の人は日本の人を信じます」という言葉に泣きそうになりました。
ちなみに、去年のようにワースト1位も発表しようと思ったんですけど、「ワースト」の名に相応しい「これはダメだー!」って笑えるくらいの駄作に出会えなかったので、2019年は「該当作品なし」でお願いします!
僕の2019年の映画ベスト10ならぬベスト20はこんな感じでした!
2020年も色々な映画を楽しめたらいいなと思います!
その前に、僕が2019年に観てきた映画の一覧を発表しておきます。
1月(19本)
くるみ割り人形と秘密の王国
スマホを落としただけなのに
遊星からの物体X
津軽のカマリ
十年
ボヘミアン・ラプソディ
神の発明。悪魔の発明。
ドラゴンボール超 ブロリー
鈴木家の嘘
アストラル・アブノーマル鈴木さん
いろとりどりの親子
テルマ
来る
家へ帰ろう
恐怖の報酬
夜明け
アリー/スター誕生
ガンジスに還る
こんな夜更けにバナナかよ
2月(15本)
メアリーの総て
世界で一番ゴッホを描いた男
彼が愛したケーキ職人
チワワちゃん
そらのレストラン
葡萄畑に帰ろう
シンプルギフト はじまりの歌声
赤い雪
がっこうぐらし
あまのがわ
ヴィクトリア女王 最期の秘密
アクアマン
ファーストマン
メリーポピンズ リターンズ
YUKIGUNI
3月(16本)
未来を乗り換えた男
アリータ バトル・エンジェル
モースト・ビューティフル・アイランド
ナポリの隣人
世界でいちばん悲しいオーディション
半世界
いのちの深呼吸
凛-りん-
劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>
女王陛下のお気に入り
盆唄
たちあがる女
恋のしずく
バスキア、10代最後のとき
翔んで埼玉
ROMA ローマ
4月(29本)
顔たち、ところどころ
金子文子と朴烈
ふたりの女王 メアリーとエリザベス
まく子
バジュランギおじさんと、小さな迷子
ぼけますから、よろしくお願いします
洗骨
あなたはまだ帰ってこない
ブラック・クランズマン
スパイダーマン:スパイダーバース
フラワーショウ!
ビール・ストリートの恋人たち
レゴ® ムービー2
ウトヤ島、7月22日
キャプテン・マーベル
グリーンブック
内回りの二人(MOOSIC LAB 2018)
月極オトコトモダチ(MOOSIC LAB 2018)
いつか輝いていた彼女は(MOOSIC LAB 2018)
無限ファンデーション(MOOSIC LAB 2018)
ドキ死(MOOSIC LAB 2018)
左様なら(MOOSIC LAB 2018)
ゆかちゃんの愛した時代(MOOSIC LAB 2018)
普通は走り出す(MOOSIC LAB 2018)
岬の兄妹
空の瞳とカタツムリ
THE GUILTY ギルティ
マイ・ブックショップ
ゴッズ・オウン・カントリー
5月(22本)
移動都市/モータル・エンジン
麻雀放浪記2020
誰がために憲法はある
バクシーシ山下の社会科見学in新潟9
ある少年の告白
愛がなんだ
ドラえもん のび太の月面探査記
コンジアム
眠る村
ハンターキラー/潜航せよ
劇場版シネマ狂想曲 名古屋映画館革命
超・暴力人間
恋のクレイジーロード
シャザム!
バースデー・ワンダーランド
あの日々の話
ちいさな独裁者
オーヴァーロード
神宮希林 わたしの神様
希望の灯り
ドント・ウォーリー
映画としまえん
6月(22本)
誰がための日々(にいがた国際映画祭)
それだけが、僕の世界(にいがた国際映画祭)
パッドマン 5億人の女性を救った男(にいがた国際映画祭)
血筋(にいがた国際映画祭)
最初で最後のキス(にいがた国際映画祭)
アメリカン・アニマルズ
あまねき旋律(にいがた国際映画祭)
ラ・ヨローナ~泣く女~
ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど(にいがた国際映画祭)
主戦場
サンセット
まぼろしの市街戦(にいがた国際映画祭)
アベンジャーズ/エンドゲーム
氷上の王、ジョン・カリー
バイス
記者たち 衝撃と畏怖の真実
沈没家族
小さな恋のうた
貞子
プロメア
ウィーアーリトルゾンビーズ
地蔵とリビドー
7月(22本)
海獣の子供
ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
嵐電
パパは奮闘中!
ホットギミック ガールミーツボーイ
メン・イン・ブラック:インターナショナル
アマンダと僕
新聞記者
ビューティフル・ボーイ
パピヨン
山懐に抱かれて
ザ・バニシング ‐消失‐
カニバ パリ人肉事件38年目の真実
オドルフク
We Margiela マルジェラと私たち
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
きみと、波にのれたら
凪待ち
誰もがそれを知っている
沈黙 立ち上がる慰安婦
青の帰り道
イメージの本
8月(14本)
アラジン
マーウェン
ピッチの上の女たち
ボールを奪え、パスを出せ FCバルセロナ最強の証
蹴る
Diner ダイナー
チャイルド・プレイ
12か月の未来図
天気の子
ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス
よこがお
ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲
イソップの思うツボ
命みじかし、恋せよ乙女
9月(19本)
雪子さんの足音
さらば愛しきアウトロー
クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代
アルキメデスの大戦
トイ・ストーリー4
カーマイン・ストリート・ギター
フリーソロ
ポラロイド
アジアの純真
旅のおわり世界のはじまり
トールキン 旅のはじまり
HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ
カンパイ!日本酒に恋した女たち
いなくなれ、群青
狼煙が呼ぶ
メランコリック
台風家族
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
ある船頭の話
10月(25本)
帰れない二人
葬式の名人
パラダイス・ネクスト
岡本太郎の沖縄
工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男
アド・アストラ
アナベル 死霊博物館
アイネクライネナハトムジーク
惡の華
宮本から君へ
見えない目撃者
眠り姫(光と影を紡ぐ異彩 七里圭Ⅱ)
あなたはわたしじゃない(光と影を紡ぐ異彩 七里圭Ⅱ)
Nectie(光と影を紡ぐ異彩 七里圭Ⅱ)
風をつかまえた少年
俺は前世に恋をする(荒木&BTまんがまつり)
スケバンくノ一(荒木&BTまんがまつり)
おいしい家族
米軍が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯
ヒキタさん!ご懐妊ですよ
ブルーアワーにぶっ飛ばす
無限ファンデーション
アートのお値段
WALKING MAN
HELLO WORLD
11月(19本)
今さら言えない小さな秘密
五億円のじんせい
ドリーミング村上春樹
ロビンソンの庭
居酒屋ばあば
エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ
空の青さを知る人よ
真実
スペシャルアクターズ
光と血
7s
ジョーカー
“樹木希林”を生きる
最初の晩餐
NO SMOKING
白痴
ボーダー 二つの世界
恐怖人形
It the end
12月(22本)
IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
ひとよ
やっぱり契約破棄していいですか?
聖なる泉の少女
草間彌生∞infinity
地獄少女
ブライトバーン/恐怖の拡散者
人生をしまう時間(とき)
殺さない彼と死なない彼女
アナと雪の女王2
ユーリー・ノルシュテイン《外套》を作る
森山直太朗 人間の森をぬけて
<片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事
デイアンドナイト
埃(藤井道人ムービーセレクション)
東京(藤井道人ムービーセレクション)
寄り添う(藤井道人ムービーセレクション)
ドクター・スリープ
i-新聞記者ドキュメント-
ゾンビ 日本初公開復元版
夕陽のあと
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
ちなみに数えたら、245本も観ていてドン引きしました。
年々増えているし、さすがに観過ぎですね…来年からはちょっと考えます!
という訳で、発表していきます!
毎年カウントダウン方式でやっていきましたが、今年は普通に1位から発表していきます。
2019年映画ベスト10
第1位 ウィーアーリトルゾンビーズ
それぞれ両親を亡くした4人の中学生が出会い行動を共にしやがてバンドを結成する冒険をRPGのように描く。
8bitの音楽、キレのある台詞、スクリーンに広がる大胆なカット、トリップ感のある実験的な映像表現など見所ばかり!
両親の死から始まる物語だがよくある悲しみの克服だけでは終わらず、いじめられっ子が成長し過去に復讐するだけの物語でもない。映画はさらにその先を描く、子供達は大人が考えるベタの先を行く。感情がなくても、ダサくても強く生きていく。彼らのノーフューチャーな未来へ!そして映画の未来へ…
映像、台詞、音楽…全てから、この時代に新しい映画を作る!って挑戦が感じられ、そこで描かれるのが人生に絶望しながらも世の中に挑発的な子供達ってのが最高でした。
第2位 惡の華
自分のエロに対する自己嫌悪を一生抱えて生きていくのも、自分も世界も全部が嫌で消えてしまえって思うのも、無力すぎて何もできないのも、全部まるで自分を見ているみたいに気持ちがわかってしまって、心がグサグサと刺され傷付きながらも、愛おしくてたまらない映画でした。
高男の「一生許されない」とか「僕は空っぽだ」という台詞も、どう見ても地雷の仲村に惹かれてしまうのも、仲村が何もかも嫌で汚い言葉を吐くしかできないのも、自分の故郷を呪う気持ちも、全部気持ちが分かってしまいました。
全然爽やかじゃないし何もかも歪でひねくれているのにこんな真っ直ぐな青春映画観たことないと思いました。
例えるなら、「耳をすませば」と「愛のむきだし」の二つの感動が一度に来た感じでした。
人間の変態性を描きながらまっすぐな人間愛を描く、井口昇監督の才能が爆発していました。
第3位 アストラル・アブノーマル鈴木さん
地方都市の衰退と閉塞感、YouTuberの主人公、引きこもりの弟、シングルマザーの母、メディアの傲慢、芸能界の闇という現代社会のリアルを描いた社会派映画でありながら、そのすべてを全力で挑発したパンク映画の大傑作だと思いました。
とにかく僕はダメな奴がダメな奴なりに全力でもがいたりする映画が大好きなんですが「アストラル・アブノーマル鈴木さん」はそんな気持ちをガンガン揺さぶってきて「SRサイタマノラッパー」「百円の恋」以来の衝撃で、この映画に出会うために生きてきた!と思ってしまったほどでした。
主演の松本穂香さん、「ひよっこ」で好きな女優さんだったのですが、こんなに刺激的でキュートな女優さんだったのか!と衝撃を受けました。
常にひねくれて世界を挑発している愛すべきダメ人間の鈴木ララという人物が最高すぎて、エンディングのダンスも最高すぎて彼女が自分の中に住み着いてしまった感じがしました。
第4位 レゴ® ムービー2
アニメ映画史に名を残すレベルの大傑作だった2014年の前作「LEGO® ムービー」の続編。
今作もハイテンション、ハイテンポ、パロディギャグ満載、超展開連続のジェットコースタームービーで、大興奮と爆笑の嵐の後で心の琴線に触れるようなラストに思わず涙をしてしまいました。
レゴというおもちゃで映画を作ることを遊び尽くしたようなアイデアの数々は最高に楽しかったし、数々の映画のパロディからは「映画」そのものへの愛を感じました。
ストーリーはメタギャグ満載でひねりが効いているけれど同時にストレートに胸を打つもので、レゴで子供達が仲良く遊ぶように、映画が作られることって本当に素敵なことなんだなって思ったら涙が出ました。
第5位 金子文子と朴烈
大正時代、関東大震災の直後に政府による朝鮮人の無差別大量虐殺が横行する日本で、アナーキストの朴烈(朝鮮人)とその同志であり恋人の金子文子(韓国育ちの日本人)が日本に抵抗し続けた姿を描いた実話に基づく映画。
日本政府によるマジでえげつない朝鮮人差別をこれでもかと描いた上で、捕まった朴烈と金子文子が日本政府を挑発し続ける姿がハラハラするんだけど、日本の愚劣さを暴いていくのが痛快だし権力に屈しない姿がカッコ良かった。
役者さんの熱演に本気でしびれるという体験をしました。
今の日本でも韓国人差別は横行してるけど、この映画を観ると関東大震災直後の日本人による朝鮮人の大量虐殺から100年も経っていないしマジで根深い問題なんだなと思わされ、まさに右でも左でもない普通の日本人の皆さん全員に観てほしい映画でした。
第6位 見えない目撃者
交通事故で弟と視力を失った元警察の盲目の女性が、偶然接触した車に誘拐事件を感じとり、最初は警察にも幻聴だと一蹴され立件もされなかったのを、視力以外の研ぎ澄まされた感覚と鋭い洞察力で周りを動かし事件を解決に導いていくサスペンス。
最初は立件もされない、目撃者もいるけど証言が噛み合わない、みたいな絶望的な状況から、針の穴を通すような小さな手がかりを見落とさずに、最終的には連続殺人事件に繋がっていくハラハラするストーリーはその時点で凄いのに、主人公が盲目だからこその展開も多く、まったく飽きさせませんでした。
弟を失った主人公が今度は誰も殺されたくないという気持ちから被害者を守ろうとするとか、目が見えないが故にピンチになるけど目が見えないが故の強みで戦うとか、警察時代に得たもので反撃するとか、ストーリーの勢いを加速させたまま今までの全てが収束していくクライマックスは見事でしたね。
「ブラインド」っていう2011年の韓国映画の日本版リメイクらしいので、そっちも観てみたいですね。
第7位 無限ファンデーション
大まかなあらすじ以外の細かい台詞や演技は全編即興という超斬新な手法で撮られた映画なんだけど、それ故に生じる緊張感が高校演劇を舞台にすれ違い無防備に傷付け合う少女たちのヒリヒリした青春の物語をこれ以上ないくらい鮮烈に描き出した傑作でした。
誰もが必ず一度は直面するであろう誰も悪くないのにすれ違い傷付け合ってしまう泥沼みたいな人間関係を、最も繊細な思春期の少女たちが経験する物語なので、観ていて本当に心にグサグサ刺さるけど、全編即興という手法で描くことで、闇の中を手さぐりで答えを探そうとする物語になっていたと思います。
そんなグサグサ刺さる物語の中で西山小雨さんの音楽が本当に優しくて泣いてしまいました。
思春期の高校生、かつて思春期だった大人、映画や演劇や音楽が好きな人や実際にやってる人、間違いなく心を動かす人生で大切な一本になる映画です。
全編即興という斬新さという意味でも、青春映画、音楽映画としての完成度の高さという意味でも、「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の南沙良と「はらはらなのか。」の原菜乃華とシンガーソングライターの西山小雨の奇跡の共演という意味でも、必見の一本でした。
第8位 アルキメデスの大戦
山崎貴監督って感動の押し付けみたいなマイナスイメージがあって苦手だったんだけど、本作は物語をグイグイ動かす役者の熱演、メッセージ性の強さなど、完全に山崎監督のこれまでと一線を画した傑作になっていたと思います。
冒頭、戦艦大和が沈むという歴史的な事実を映像で再現した功績は本当に大きいと思うし、ジェームズ・キャメロンがタイタニックの沈没を映画化したように、VFX作家出身の山崎監督の能力が最大限に発揮されていました。
そこから日本軍で戦艦大和の建造計画が持ち上がる場面に時間は遡り、日本軍の陰謀を暴くために天才数学者が呼ばれる、という構成の物語ですが、何が驚きって、最終的に戦艦大和は建造されて沈没するという結末はもう歴史的事実として全部分かっているのに面白いってことなんですよね。
戦艦大和が建造される理由が、戦時中から現代まで続いているであろう日本という国の体制の欠点を物凄く痛烈に皮肉っていると思ったし、そんな軍という権力の上下関係ガチガチな世界を異端者である数学者の主人公が天才的な能力によって周りを圧倒していくのが、物凄く痛快でした。
スパイ映画的なサスペンスや、敵対していたコンビが徐々に友情を築いていくバディものの魅力、さらにそこにタイムリミットサスペンス的な要素もあって、まあ盛り上がる盛り上がる、そして完全に不利な状況に耐え抜いて耐え抜いてアイディアと努力で主人公が主人公の勝利の瞬間のカタルシスは尋常じゃなかったです。
しかし最終的にそれでも戦艦大和は建造されてしまう、その秘密が明かされた時の衝撃からの最後の台詞に込められた戦争や日本という国への痛切な視点、日本映画史に残って欲しいと本気で思いました。
第9位 チワワちゃん
東京で遊びまくっていた男女の中の一人、チワワちゃんと呼ばれていた女の子がある日突然殺害され、主人公が昔の友人たちと再会したりしながら死んだチワワちゃんのことを回想していくという青春映画。
彼らの遊び方がマジでえげつなくて、今まで青春映画って若き日々のキラキラしたイメージだったけど、「チワワちゃん」では青春をいずれ終わりゆく限りある人生の全力の無駄遣いとして描いていて、でも確かに青春ってそうだよなあって思いました。刹那的でお行儀が悪くてでもそれ故の儚い輝きもあるという。
回想シーンに登場する彼らの若き頃の描写がギラギラしたMVみたいなのに対し、チワワちゃん死後の現代の彼らには当時の幻想が崩れていく感じの生々しさがあって、夜から朝になっていくエンディングも彼らの青春の終わりみたいですごく良かった。終わって振り返って気付くのが青春なのかなと思いました。
「チワワちゃん」に出てくるようなパリピ的な青春とは程遠い僕も映画を観てる間は「この気持ち分かるなあ」と共感したりもしたので映画って面白いなって思います。例えば昔はしょっちゅう遊んだけど今はもうまったく会わなくなった友人とか僕もいるわけで、ある意味普遍的な青春映画なのかも知れません。
第10位 WALKING MAN
工業地帯の母子家庭で暮らす乞音の少年が、特殊清掃のバイト中に偶然ラップに出会い、どん底の生活を送りながらも少しずつ自分の言葉を持っていく物語。日本のリアルな貧困も地方都市のアンダーグラウンドも主人公の成長もラップの魅力も90分に詰め込んだ傑作だと思います。
母親が突然入院して保険料の滞納が発覚した時の嫌味な医者(なんとほっしゃん。!)から言われる「自己責任」、明らかに今の世の中への抵抗がこの映画にあると思ったし、それってそのままラップという文化の存在意義だよなあなんて思ったりしました。音楽以前に思想的な部分でヒップホップだなという。
家賃や光熱費の滞納、スマホが買えない女子高生の妹の万引きや風俗でのバイト、借金まみれの職場の先輩、貧困生活と地続きにあるアンダーグラウンド、とにかく地方都市と貧困の描写が生々しくて刺さったし、そんな日々の中でラップという希望を胸に必死に生き抜く主人公を応援してしまいました。
以上、僕が選ぶ2019年映画ベスト10でした!
せっかくなので、20位まで発表してみようと思います!
第11位 マーウェン
模型の街とフィギュアでナチスと戦う美女の戦士たちの物語を作り続ける主人公。彼は暴行事件の被害に遭い記憶障害やPTSDに苦しんでいた…
主人公の物語と、彼の作る物語を交互に描き、表現をせざるを得ない者の複雑な気持ちを描ききった傑作だと思います。
主人公は裁判があったり、片想いをしたり、人生に色々なことが起きると、その度に彼のフィギュアたちの物語は動き出します。同時に彼の妄想と物語の境界線も徐々に曖昧になっていきます。
表現行為をせざるを得ない人間は周囲からは奇異な目で見られがちだけど、そんな人間の姿を全力で肯定した優しい映画だなと思いました。
創作と生きることは地続きだと思える映画という意味で、大人向けのレゴ・ムービーみたいだと思いました。
それにしても美少女戦士たちがナチスをぶっ殺しまくるなんて、主人公の趣味が全開で最高でしたね。あと、ロバートゼメキス監督によるバック・トゥ・ザ・フューチャーへのセルフオマージュも。
しかもこれ実話だったというのも驚きでした。
第12位 小さな恋のうた
MONGOL800の名曲から生まれた、沖縄のバンド高校生たちの青春映画なんだけど、描いてるテーマが想像以上に広く深くて驚かされました。
基本的には高校生の葛藤と成長を描いた直球の青春映画なんだけど、沖縄の米軍基地の問題もガッツリ描いていて、それでもちゃんと爽やかな青春映画になってたのが凄いと思いました。
米軍基地に対するデモも登場するんだけど、米軍家族の居住地を囲むフェンス越しにアメリカと日本の若者が片耳ずつイヤホンで同じ音楽を聞くように、国を越えて分かり合える可能性も示していたのが凄いと思いました。
日本とアメリカ、親と子、生と死など、離れ離れの人と人が音楽で繋がる可能性を示した、本当に感動的な映画だったと思います。
「小さな恋のうた」というラブソングが表現している色んな意味での「愛」、凄い歌なんだなとあらためて思いました。「すぐそばにいるの」ですからね。
第13位 世界でいちばん悲しいオーディション
アイドル芸能事務所WACKのオーディションに参加する女の子たちを追ったドキュメンタリーなんだけど、あまりに過酷な内容に参加者たちが苦しむ姿が壮絶すぎて、これを面白いって言っちゃっていいのか分からないんですが、凄まじく心を揺さぶられてしまったことは間違いないです。
過酷なオーディションの中でもがく者、逃げ出す者、それを取りまとめる大人達など、あらゆる人間臭さが残酷なくらい全開になっていく様子が強烈でした。
アイドルもドキュメンタリーも、人間がもがけばもがくほど面白いエンターテインメントになってしまう、という残酷な現実をこちらに突き付けてくるような映画で、WACKという事務所、そしてこの映画そのものが、この映画に体当たりで挑んだんだなあと思いました。
悪趣味、と一言で片付けてしまうのは簡単ですが、自分はこの映画の出演者や作り手たちのように精一杯生きているだろうか…なんてことさえ考えさせられてしまうくらい、心を動かされる映画でした。
第14位 ブラック・クランズマン
1979年、アメリカ初の黒人警察官がユダヤ人の警察官とコンビを組んでKKKに潜入捜査という凄すぎるストーリー。最後まで緊張感が途切れないスリリングなサスペンス。白人、黒人、そして警察の関係の複雑さや、差別の残酷さを浮き彫りにした傑作だと思います。
サスペンスとしての面白さはもちろん、黒人差別の複雑な現状も描いていて、例えば警察内部でも黒人差別があるんだけど、主人公の行動がその現状を少しずつ変えていく様子は凄いなと思いました。白人と黒人が争うのではなく、知性と勇気で争いを防ごうとするというストーリーが本当に良かったです。
劇中、KKKが「アメリカファースト」とトランプ大統領と同じ台詞を言っていて怖かったですね。そしてハッピーエンドかと思いきや最後に今のアメリカで実際に行われているヘイトスピーチの映像が流れ、映画の中だけではない現実の問題を突き付けられ、「NO PLACE FOR HATE」という言葉が胸に残りました。
第15位 青の帰り道
2008年に高校生だった男女7人の10年間を描いた群像劇で、地方と東京、夢と現実、親と子などの青春映画の王道のテーマを扱いつつも、それを7人の個性とともに、さらにあの時代の雰囲気とともに一つの作品に織り上げていく手腕が本当に見事でした。
きっとどこかにこんな人達がいるんだろうなとしか思えない存在感のある登場人物ばかりで、彼らの生きた時代と年齢が自分とほぼ同じなので共感してしまったし(あとで分かったんだけど監督と同い年でした)、彼らの幸せを願ってしまう自分がいました。
ストーリー以外でも、2008年~2018年までの時代の雰囲気がよく出ていたので、10年後、20年後に観返したくなるであろう映画だと思います。
第16位 岬の兄妹
足に障害があり仕事を失った兄が、精神障害のある妹の二人暮らしの中で、行き場のない貧困から妹に売春させるという衝撃作。
明らかに人として間違ったことをしているのに、じゃあどうすれば良かった?って考えても答えが出ないというあたりが本当にしんどい話なんですよね。二人とも責められない、責められないのに二人とも不幸になっていく、それがつらすぎるんですよね。
それなのに、ストーリーも役者さんたちの演技もとにかく見応えが凄くて、最後までまったく目が離せずにグイグイ引き込まれてしまって、90分くらいの上映時間があっという間に終わってしまうすごい映画でした。心にグサグサ刺さるけどすごく面白かった。
第17位 天気の子
新海誠監督の映画は、世界という大きなものと、個人の気持ちという小さなものとの対比が素晴らしいと思ってます。
そんな新海監督が、主人公が彼女を想う気持ちをほとんど暴力的と言っていいほど全力で描いてしまったことに驚きました。しかも驚異的に美しい映像とともに。ここまでやるとは…という衝撃がありました。
常識や正しさでは測れない人間の強い感情や言動も真っ直ぐに感動的に描けてしまう、これこそ映画の力だと思いました。新海監督から「お前の思うままに真っ直ぐ生きろ」と言われた気がして感動してしまいました。
「君の名は。」の東京が田舎の人が憧れるインスタ映え的な都会だったのに対し、「天気の子」では汚い路地裏など都会の孤独や影の部分を描いていて印象的でした。そんな都会のはぐれ者な男女が惹かれあうストーリーにも感情移入できました。
また本作は気候が物語の鍵になっていることもあり、新海監督の得意な風景描写を丁寧に描くことで登場人物たちの気持ちが行間を読むようにじっくり伝わってくる感じが何とも良かった。
ところで僕の周りはわりと「君の名は。」の記録的ヒットの時に「俺達オタクの味方だった新海監督がリア充に媚を売る商業監督になりやがった」的な意見を見たんだけど、「天気の子」で確信したのは、新海監督はオタクとかリア充とかもはやそういう次元にいないぶっ飛んだ愛すべき変態映画監督ってことです。ほぼカルト映画だよ!アニメ映画の新しい可能性に挑戦し続ける新海監督を応援したいと思います。
第18位 翔んで埼玉
強烈なバイオレンス映画が時として人間の本質を浮き彫りにしちゃうことがあるけど、関東の地域格差という地味だけどそこに暮らす人々にとってはわりと深刻な題材にここまで力を入れて遊び倒してしまったこの映画、実は日本の本質をうっかり突いた名作になっているのではないかと思います。
一見埼玉ディスの差別的な内容に思えるかも知れないけど実際は真逆で、地域格差という現実に全力で向き合うことで現実を浮き彫りにした挑戦的な映画で完成度の高いコメディだと思いました。タブー視される問題もコメディにすることでネタに出来るのは、映画の持つ強い力だと思います。
でも実際やっているのは予告編でも言っている通り「茶番劇」で、そのために一流の俳優を揃え、漫画をさらにカリカチュアさせたような強烈なキャラクターに、豪華絢爛な衣装と舞台美術に、あれだけ大人数のエキストラを集めて都庁周辺を封鎖して大規模なロケを行う…日本のコメディはここまで出来るんだって感動しました。
そもそも埼玉ディスって言うけど少なくとも僕は埼玉愛しか感じなかったし、だからこそ感動もしたし、でも最後まで見ると果たしてそれだけが正解なのか?っていう視点もちゃんと入れてきてただのお気楽なハッピーエンドにはしないぞってあたりも抜かりがないと思いました。時代を越えて語られて欲しい映画です。
第19位 スパイダーマン:スパイダーバース
スパイダーマンの映画はたくさんありますが、今回はアニメ、しかも情報量が多くてちょっとクラクラしました。でも「親愛なる隣人」という愛称の通り普通の少年がヒーローとして頑張る身近さや全体的にノリのいい作風などやっぱり魅力的なヒーローだと思いました。
スパイダーマンはたまたま特殊能力を身に付けてしまった普通の少年が人間としてもヒーローとしても成長していく姿が魅力ですが、今回はスパイダーマンがすでに活躍している世界で新たな少年がスパイダーマンを継承していく物語で、今まで描かれてきたスパイダーマン達へのリスペクトを感じました。
色んな世界の色んなスパイダーマンが大集合しちゃうSF的展開、画風もバラバラでまさにアニメでしか出来ない表現で、あれは漫画のキャラだよっていうメタなギャグであり、アベンジャーズ的なものへのオマージュであると同時に、色んな世界を知ることで人は大人になるって意味もあるのかなと思いました。
そんな感じでめちゃくちゃ楽しんだ映画なんですけど、最後の最後に亡くなったマーベルコミックの原作者、スタン・リー氏からのメッセージが出てきて泣いてしまいましたな。そうだよな、ヒーローって、強さってそういうことだよなっていう真っ直ぐな言葉で、これからもその意志とともにスパイダーマンや様々なヒーローが愛されてほしいと思いました。
第20位 ホットギミック ガールミーツボーイ
最近流行りの少女漫画原作の青春恋愛映画みたいな顔して、いやいや普通の青春映画そんなことしないだろ!?っていう強烈な表現を連発しまくる挑発的な映画でした。山戸結希監督の個性が前作「溺れるナイフ」以上に全開で嬉しくなりました。
優柔不断な女子高生の主人公が、幼馴染のカリスマモデルと、上から目線でドSな秀才、タイプの違う二人のイケメンに翻弄される…って聞くとベタな少女漫画設定なんだけど、彼らのカッコ良さだけでなく弱さや醜さまでもデフォルメして全面に出すという描き方に、ただの青春映画じゃないぞ!って挑戦的なものを感じました。
二人に翻弄されていたはずの優柔不断で無防備な主人公が、いつしか二人を翻弄してしまっているという展開がなかなか痛快でした。恋愛をすることは人間の一番弱い部分を見せる行為だったり傷付けあう行為なんだけど、でもその先に人は進めるんだなって、最後は驚くほどポジティブな気持ちになりました。
以上、20位まででした!
最後に、2019年の特別賞を発表したいと思います!
特別賞 アジアの純真
2009年の映画の特別上映なので、2019年のランキングからは外しましたが、10年も前にこんなにすごい映画が作られていたのかという衝撃を受けたので、特別賞です。
在日韓国人の少女が殺され、その双子の妹と、事件現場を目撃するも何も出来なかった日本人の少年が、毒ガスで復讐を図って逃走するという衝撃作。
例えば「太陽を盗んだ男」みたいに、社会問題と人間の暴力性を全力で描いた上でエンターテインメントに昇華している映画は本当に最高だと思っていて、韓国映画によくあるけど日本にもこういう力強い映画があったんですね。考えさせられる部分もあったし青春映画としての魅力もありました。
毒ガステロを図り逃走する彼らは明らかに犯罪者なんだけど、でも彼らに共感したり青春映画としての魅力的を見出してしまう。こういう正しい正しくないでは図れない人間を描けるのは本当に映画の力だなと思いました。個人的に「天気の子」に通じる感動がありました。
拉致問題と北朝鮮や韓国へのヘイトが起こった2009年に作られた映画なんだけど、再び韓国ヘイトが問題になった今こそ上映しようと脚本家の井上淳一さんとシネ・ウインドの皆さんの協力で2週間の準備期間で新潟上映を成し遂げたそうです。その話だけでもう感動的だし勇気がもらえました。
上映後には脚本家の井上淳一さん、ヒロインの韓英恵さん、映画の中でまさかの毒ガスを投げ付けられる役を演じている蓮池透さんのトークもあり、この三人が揃うこと自体が凄いなあと思いました。個人的に日本と韓国のハーフの韓英恵さんの「韓国の人は日本の人を信じます」という言葉に泣きそうになりました。
ちなみに、去年のようにワースト1位も発表しようと思ったんですけど、「ワースト」の名に相応しい「これはダメだー!」って笑えるくらいの駄作に出会えなかったので、2019年は「該当作品なし」でお願いします!
僕の2019年の映画ベスト10ならぬベスト20はこんな感じでした!
2020年も色々な映画を楽しめたらいいなと思います!