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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

今泉力哉監督最新作『パンとバスと2度目のハツコイ』観て来ました!

2018-03-14 02:14:36 | Weblog


3/12(月)、イオンシネマ新潟西で『パンとバスと2度目のハツコイ』を観て来ました!





予告編はこんな感じです。



色々書いていく前に、僕はこの映画の今泉力哉監督が大好きなんですよね。
2014年の『サッドティー』、2016年の『知らない、ふたり』、そして昨年観た『退屈な日々にさようならを』など、どれもシネ・ウインドで観てきたんですけど、どれも面白かったので、新作の『パンとバスと2度目のハツコイ』がイオンシネマ新潟西で上映と知った時は、「えっ、あの今泉監督の最新作がついにシネコンで!」という感動がありました。

しかも、今回の『パンとバスと2度目のハツコイ』は、乃木坂46の元メンバーの深川麻衣さんが主演、さらに共演には三代目J Soul Brothersの山下健二郎さんが出演という、注目度の高い豪華キャスト!
なんて言うか、今泉監督売れたぜ!っていう感動が観る前からありました。

じゃあ実際に観てみてどうだったかと言うと、この二人の演技、すごく良いです!
そして、物語は、今泉監督がずっと描き続けてきたことの集大成みたいな映画だったなあと思いました。



どういうことかと言うと、今まで僕が観てきた今泉監督の映画の特徴として、会話劇、群像劇の中で、人と人の繋がりやすれ違いを描いている、ということが言えると思うのです。
基本的に静かな会話劇が淡々と進むのですが、色々な人物を群像劇として描く中で、実は意外な人と意外な人が思わぬところで繋がっている、という面白さがあり、さらにその中で人間の恋愛や死別などの普遍的なテーマを、ドライなようで温かみもあるような独特のタッチで描くという。少なくとも先程タイトルを上げた3作はそういう映画だったと思います。



じゃあ、今回の『パンとバスと2度目のハツコイ』、タイトルの通り、深川麻衣さん演じるパン屋で働くふみと、山下健二郎さん演じるバスの運転手のたもつの出会いと交流を描いた映画です。
仕事帰りにバスの洗車場を見ながらパンを食べるのが日課のふみ、ある日たまたまふみのバイト先を訪れたたもつ、たもつはバスの運転手、さらに二人は実は中学校の同級生だったことが発覚する、ということが物語の冒頭に起こるわけです。

この感じです。最初は何となく日常風景の一部として遠くから見ていただけだった二人が、ある日、出会って親密になる、そして実は元同級生という。
意外なところで人間関係が繋がっている感じ、いかにも今泉監督だなあと思います。

さらに、ふみには美大に通う妹が上京し、居候を始めたりします。また、恋人からプロポーズされるが「自分がいつまでも人を好きでいられるわけはない」と断ってしまったりします。一方たもつは、別れた妻と子供がいて、今でも愛していたりします。
そういう、色々な人間関係の中でそれぞれの日常を送る登場人物たちの人生が、ある日を境にふと交わっていくというこの感じ、すごく今泉監督だなあと思います。



そして、実はたもつはふみの中学時代の初恋の相手だったりするわけです。
とは言え、それから時間が流れ、自分も相手も色々な恋愛も経験した大人になったふみは、たもつに対してどういう気持ちになればいいのか、微妙に戸惑いもあったりする感じが、静かな会話の中で絶妙に描かれます。

そんな二人に微妙な距離に変化をもたらす存在として、伊藤沙莉さん演じるもう一人の元同級生、さとみが登場します。
さとみは、中学時代に女子同士でありながらふみのことが好きだと告白していたのですが、今では普通に男性と結婚して子供もいて、さらにたもつとも連絡を取っているということから、ふみとたもつの物語にさとみが加わってきます。

この感じです。世の中の人間関係って、好き嫌いだけにバッサリ分けられるわけではないですよね。昔好きだった気持ちは今でも忘れたわけではないけど、今は今の自分の気持ちがあって、それも変化していく…という。
こういう、リアルな人間の感情の微妙な移り変わりを、静かな会話劇の中で描きながら、徐々にそれぞれが胸に秘めていた気持ちも明らかになっていく…この感じが、本当に今泉監督の魅力だなあ…って感じがするんですよね。



そんな登場人物たちの心境の変化の中で、ふみとたもつは少しずつ惹かれあっていくわけです。とは言え、あくまで片想いのままでいたいふみ。一方たもつはたもつで、やっぱり奥さんのことが忘れられなかったりするわけです。
この、分かりやすく恋人同士にならないまま微妙な距離感の中で、微妙に惹かれ合う二人。なるほど、これがタイトルの「二度目のハツコイ」の意味なのかなあ…なんて思ったりしました。

そんな中で、たもつがこんなことを言います。「ちょっとずつずれてるんだよなあ」
この台詞こそ、今泉監督が描き続けてきたものの本質のように思うのです。

ちょっとずつずれている、簡単には理解しあったり愛し合ったりすることの出来ない人間達が、ひょんなことから出会ったりすれ違ったり時折何かを分かち合ったりする。
ちょっとずつずれながら、ちょっとずつ繋がっていたりもする。人間関係ってそんなものなのかも知れないなあ、なんて思ったりします。

フィクションの中のラブストーリーなんかでは、男女にドラマティックな出来事が襲ったりしながら最終的には二人は結ばれハッピーエンドを迎えたりしますが、現実の人間関係ってそんなに分かりやすく出来てはいませんよね。
今泉監督の映画のように、何とも言えない微妙な気持ち、微妙な関係が淡々と続く日常の中で、時折ふといいことも悪いこともあったりする、そんなもんだと思うんですよね。

いわゆるハリウッド的なと言いますか、少女漫画的と言いますか、王道のラブストーリーを望んでいる人にとっては、今泉監督の描くような人間関係はもしかしたら、変化に乏しく退屈だったりするのでしょうか…?
でも、僕は今泉監督の描く恋愛を見ると、「実際人間ってこうだよなあ…」という姿を、描いていて、かえってそこに人間に対する愛を感じたりするわけです。

不器用で地味な人間たちのことを、突き放すでもなくデフォルメするでもなく、とても優しいタッチで描いている今泉監督の映画、いいんですよねえ…
『パンとバスと2度目のハツコイ』、結末までは書きませんが、ハッキリとした答えは出ないまま、それでも何となく二人はそれぞれの人生を送りながら、何となく惹かれあったりもしながら生きていくんだろうなあ…と思わせるラスト、こういう恋愛映画のラストを僕は待っていたんですよー!って感じでした。

いやー、良かったですねえー!と思ったんですけど、今思うと僕は主にこの映画の雰囲気を楽しんでいたなあ…と思うので、もっとストーリーをしっかりと楽しむためには、もう一度くらい観てみた方がいいのかも知れませんね。
でも、この映画を観たあとで「いい映画だったな…もう一度観たいな…」って思ってしまうこの余韻も含めて、この映画の魅力なんだろうなあ…と思います。
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